飲食店における2023年の総括と2024年の展望

外食ライターのさとう木誉です。今年も2023年のまとめ&2024年のヒントについて執筆させていただきました。今年はコロナ規制が撤廃されて客数が増え、さらにインバウンド需要も好調で、ようやく前向きになれた一年だったのではないでしょうか。

日本フードサービス協会が発表する外食産業市場動向調査を見ても、最新の2023年10月度はコロナ禍前の2019年同月比で116%とコロナ禍前を上回る成績です。気になるパブ・居酒屋業態は19年比で71.4%という数字でしたが、店舗数も19年比68.0%と激減しているので、1店舗当たりの業績は回復しています。上記の数字は大手外食企業のデータを元にしており、大手チェーンの撤退が中小の居酒屋企業にとって出店のチャンスとなっている状況です。

今回の記事作成にあたり、カクヤス営業スタッフを対象に「2023年に流行ったと思う商品は?」というアンケートを実施しました。日々、たくさんの飲食店と商談を行っている現場からの体感値だけに、他のネット情報でもなかなか手に入らないトレンドの変化を感じさせてくれます。それでは2024年ヒットを予感させる商品を中心にお届けしたいと思います。

【はじめに】アンケート結果の概要

2023年に流行ったと思う商品は?※対象:カクヤス営業スタッフ※カクヤス編集部調べ

2023年に流行ったと思う商品は?

※対象:カクヤス営業スタッフ
※カクヤス編集部調べ

まずはカテゴリ別に全体像を見てみたいと思います。「ジン」「プレミアムテキーラ」「国産ウイスキー」とトップ3をハードリカーが独占。この3ジャンルで実に全体の47%を占めるという結果になりました。商品ごとに見るとジンが22%、プレミアムテキーラ14%、ウイスキー10%という内訳です。
過去10〜15年の間にはプレミアムビール、ハイボール、ワイン、日本酒、クラフトビール、レモンサワーとブームの移り変わりがありましたが、いよいよハードリカーにも火が付きそうな予感です。また増え続けているインバウンド客も、欧米人を中心にハードリカーを好む層があり、それも人気に拍車をかけそうです。

その他では居酒屋業態であればサワー&ハイボール、ナイト業態であればシャンパンなどといった具合に業態ごとのトレンドを感じさせる項目が挙がっていました。

【1位】「ジン」新しいソーダ割りの定番なるか!?

首位のジンには異なる二つのトレンドが重なった経緯があります。ひとつがサントリー社の「翠」のヒット。「翠」を挙げた営業マンはジンと回答した人の8割を占めています。同社は2020年ごろから家庭用・業務用の両チャンネルからプロモーションを強化して、21年の国内販売量で前年比236%をマーク。ハイボール、レモンサワーに続く第3のソーダ割りアイテムとして、いよいよ成長フェーズに入ってきたと見てよいでしょう。

出典:サントリーホールディングス株式会社|サントリースピリッツ(株)国産ジンの2022年戦略について

二つ目が世界的に広がる「クラフトジン」のムーブメント。たとえばイギリスでは2018年にジンの市場規模がウイスキーを上回るまでに成長。世界全体を見ても、この10年ほどで市場規模を30%伸ばしています。その成長を牽引しているのが小規模事業者が造る個性的な「クラフトジン」。日本でも近年クラフトジンのブランドが増えており、インバウンド客も日本でしか飲めないクラフトジンへのニーズが高まっています。カクヤスでもクラフトジンの販売品目を拡充しています。ぜひ担当営業にご相談ください。

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【2位】「プレミアムテキーラ」世界的に急成長!セレブも注目

バー・ホテル業態を中心に注目が高まっています。とりわけ「アネホ」と呼ばれるオーク樽で12ヵ月以上熟成させたタイプに人気が集まっています。個別銘柄では創業200年以上の伝統を誇るテキーラのトップブランド「ホセ・クエルボ」社の「クエルボ 1800 アネホ」に集中していました。もともとプレミアムテキーラには熱心なファンが付いていて希少価値も高かったのですが、そこにインバウンド客からのニーズが上積みされたことが大きな要因といえます。「インポーター各社がこぞってプレミアムテキーラを勧めてくる(商品販促担当)」。というのも、世界のテキーラ生産量はこの10年で約2.5倍、価格も10倍以上に跳ね上がっています。また近年、米国のプロバスケットボール選手や米国の大人気シンガーソングライターといったセレブたちがこぞって自身のテキーラブランドを立ち上げるといったニュースが、テキーラ人気の拡大に寄与しているようです。

出典:独立行政法人日本貿易振興機構

一方で、普及型のテキーラ商品にも人気が波及する可能性も高まっています。スタンダード商品の「クエルボ エスペシャル」などを一銘柄だけでも扱っておくと思わぬ反響を得られるかもしれません。

【3位】「国産ウイスキー」インバウンド客から高需要

「ジャパンメイド(国産)」の酒類は、インバウンド客にとってもっとも魅力のあるキーワードです。日本酒に限らずクラフトビールからクラフトジンに至るまでジャンルを問わず人気ですが、ひときわ引き合いが多いのが国産ウイスキー。日本は「五大ウイスキー」のひとつとして世界でも認知されていますから、それだけにニーズが高い。銘柄別では「富士」「桜尾」「陸」「竹鶴」「角」が上がっていました。「角」はハイボール普及の火付け役として知られていますが、今や中国・韓国でも大ブレイクを果たしていて、インバウンド客の中には量販店でごっそり買っていく人もいるほど。私たちの「当たり前」が、インバウンド客にとっての「プレミアム」という好事例といえるでしょう。

他方、「桜尾」などウイスキー業界にも「クラフト・ブーム」の波が広がっています。それとともに、日本のライトユーザー層にも「いろんなウイスキーを楽しみたい」という機運が高まっています。特筆すべきは消費者の関心が「陸」のようなカジュアルなものから「竹鶴」などのプレミアム・ウイスキーまで幅広い価格帯にわたっていること。バーのような専門店のみならず、居酒屋や食事業態でも銘柄の選び方で個性を打ち出せるようになってきそうです。

上位をハードリカーが占める結果からしても、インバウンド客が2023年の外食に与えた影響の大きさを実感できます。ここから派生してサワーやハイボールといった「ソーダ割り」商品のプレミアム化が進むのではという声がありました。

続いては複数票あったアイテムのうち、飲食店様のドリンクメニューのヒントになりそうなものをピックアップしました。

【注目1】「シャンパン」ナイト業態中心に堅調

好調続くナイト業態関連では、やはりシャンパンの問い合わせが中心に多くありました。その中でも引き合いが多かった商品は「エンジェルシャンパン」です。天使の羽根を模したアイコンが煌びやかなボトルデザイン。カラーバリエーション豊富なオリジナルラッピングもラグジュアリー感たっぷり。品質面についてもクリーミーでなめらかな泡、複雑な香りと味わいで、独自の世界観が高い支持の理由です。

【注目2】「タコハイ」&「ポン酢サワー」シンプルかつ強力なサワーの新顔

居酒屋業態では「タコハイ」の問い合わせも目立ちました。2023年3月に家庭用で認知が高まった頃、業務用として「こだわり酒場のタコハイの素 1.8Lペット」が23年10月10日に発売されたので、居酒屋業界に導入が広がりました。「飲食店様の問い合わせの数に加えて量販店の陳列状況も確認して、タコハイの勢いを実感しました(神奈川・県央エリア担当)」。年輩の読者は「懐かしい」と思われるかもしれませんね。そう、タコハイとは1980年代の酎ハイ・サワーブームの火付け役ともなった「味わい系プレーンサワー」のこと。昨今の昭和レトロ、平成レトロ・ブームの流れから、リバイバル商品のヒットが目立ちますが本品も500万ケース(家庭用)を突破する実績です。ユニークな商品名が若い世代にもウケる要因になっているようです。

出典:日経クロストレンド|サントリー「タコハイ」が爆売れ あえて説明しないCMが起爆剤

その他では、「ミツカンぽん酢サワー」がジワジワと導入店が増えているとの声も。「下町エリアの焼きとん屋や大衆酒場で採用が増えています(東京・赤羽担当)」。ポン酢サワーとりんご酢サワーをセットで売るケースが多いとのことです。

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【注目3】「チャミスル」韓国グルメブームが牽引

韓国焼酎の「チャミスル」はSNSや韓国ドラマなどネットメディアをプロモーションに活用して若者世代の認知度を高めています。また韓国グルメブームはもはや東京・新大久保などのコリアンタウンだけのものではなくなりつつあります。大手外食企業も韓国料理酒場の新業態を展開することが増え、いよいよ普及フェーズに入ってきたと言ってよいでしょう。

また22年に発売された日本限定商品「チャミスル トクトク」は、アルコール度数が5%と低く、サワー感覚で飲みやすいソーダ割りタイプ。ソーダなどで割って飲む日本人独特の飲酒文化に合わせた商品づくりで幅広い客層に支持を得ています。

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【注目4】「ノンアルコール」外食シーンに着実に浸透中

レストランなど食事業態に限らず、居酒屋、ナイト業態に至るまでジャンルを問わずノンアルコール、低アルコール商品の問い合わせを受けるようになったことも2023年の大きな変化といえます。「商談や問い合わせだけでなくプライベートな飲み会でもノンアルコール・低アルコールの需要を感じる機会が増えました(神奈川・関内エリア担当)」。とりわけナイト業態についてはお客様側だけでなくスタッフ側にとってもニーズがあるとのこと。「飲めない」だけではなく「ふだんは飲むけど今日は飲まない」というシチュエーションもあるようです。ノンアルビール、ノンアルカクテルといったカジュアルなアイテムにばかり目が向きがちですが、ノンアルコールのシャンパンなど高価格帯商品にも広がりつつある点が注目されます。

最後に「番外編」として、外食業界全体について上がってきた声もピックアップしたいと思います。2024年を乗り切るヒントになれば幸いです。

【番外編1】「値上げ」&「品不足」食の外部化を味方に付ける

ドリンク関連以外で営業マンの声が多かったのは「値上げ」「品不足」でした。「コロナ前は当たり前にあったものが、当たり前でなくなっている。しばらく続くと思う(全国チェーン担当)」。仕入担当の方は常に「代替品」探しをしながら原価と供給体制を検討しなければならない状況が続くでしょう。また、日常の営業で忙しくしていると有益な情報を入手するのも難しくなります。そこは納入業者にも積極的に相談を持ちかけるのも手です。大手企業から個人店まで幅広く飲食店と取り引きがあるカクヤスの対応力が力になると思います。現場レベルでは、原価率を下げる工夫が求められますが、それについては当サイトでも記事もございますので、併せてご覧ください。

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値上げで苦しむのはお客様も。物価高(インフレ)の影響ですが、日銀が23年11月に発表した物価の刈り込み平均値によると前年比3.4%の上昇。反面そうした物価上昇なども考慮した実質賃金はマイナス2.3%で19ヵ月連続で減少。ざっくり手取り30万円の給与はそのままでも約7千円マイナスの負担感です。

出典:日本経済新聞|続く日本のインフレ、株安リスクに要注意
  :日本経済新聞|10月の実質賃金2.3%減 19カ月連続でマイナス

ただ、進む「食の外部化」は後戻りしないだろうと考えます。夫婦共働き世帯が全体の7割を占めるまでになり、ひとり暮らし世帯も幅広い年代で増えているからです。屋号に「食堂」と付けた大衆酒場の隆盛なども一例ですが、ファミリーレストランと同じくらいの価格で提供できるセットメニューなど、日常の昼食・夕食ニーズを取り込んでいく様々な工夫が大きなカギを握るでしょう。

出典:三菱UFJニコス株式会社|共働き夫婦の世帯割合は?メリット・デメリットをあわせて解説

【番外編2】「物流の2024年問題」仕入れ業者を巻き込んで仕入れ力強化を

新聞の報道で目にしたことがある方もいるかと思いますが、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働規制が強化されるというもの。実施されれば現状の運搬時間の3割以上が規制対象となり、相当な物資が運べない事態になってしまいます。「これまで注文した翌日届いた商品が、数日かかってしまう」というケースが増えていくことになりかねません。飲食店様としても、納入業者の物流体制の確認や、発注タイミングの調整を検討しておくことをお勧めします。

カクヤスは都内各所に配達拠点を配置して年中無休で配達できる体制を整えています。しかも配送業務を自社従業員でまかなっているため、これまでの配送体制を維持できます。さらにアルコールだけでなく、調味料や油、米といった食材も取り扱っています。「小回りが利く」というカクヤスの長所が、時代の変化の中でより価値の高い利便性になりそうです。

【番外編3】「宴会復活の動向は!?」一次会盛況も二次会以降に課題

東京商工リサーチが2023年12月に実施した忘・新年会の開催に関するアンケートで、実施すると回答した企業は4,905社中の約56%に当たる2,743社。意外なことにコロナ禍前の19年と比較して微増という結果で、消費者の宴会意欲は強いことがわかります。これまで3年間自粛を強いられてきた反動で、宴会の価値が再認識されたようです。

飲食店への取材でも一次会の宴会予約については予想以上の手応えがあったという店が多かった印象です。一方で、21時以降の二次会集客には苦戦しているという声も。東京都が提供する「繁華街の滞在人口(21時)の推移」の12月のデータを見ても11月比では10ポイント以上増えているものの、コロナ禍前(2020年1月基準)の人出に戻っているのは新宿(歌舞伎町)のみ。六本木は-13%、銀座は-21%という数字で、夜早く帰ってしまう生活様式の変化がデータにも現れています。 こうした社会的な変化に対応した宴会対策で売上げ伸張を図りたいところです。例えば一次会の時間制を2時間から3時間に延ばすことや、一次会も二次会も同じ店で飲んでいただくオプションプランを提案するといった具合です。ぜひとも「課題はチャンス」の姿勢で、新しいアイデアを生み出してほしいところです。

業務用酒販店であるなんでも酒やカクヤスでは、飲食店様に向けてトレンド商品のご案内だけでなく、期間限定のキャンペーン情報も多くご用意しております。
流行りの商品をお探しの飲食店様は、ぜひ一度お問合せください。

この記事を書いた人

さとう木誉(きよし)

外食ライター
都内在住。繁盛店取材だけでなく経営マネジメントに関する取材活動を中心とする。
「月刊食堂」「外食レストラン新聞」「外食図鑑」といった専門媒体の他、食品商社や外食コンサルタント等の宣伝企画にも携わる。
好きな酒は熱燗。好きなツマミはガリ〆さば。

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