【甲州】特徴から食事との組み合わせや生産地について紹介~ワインのブドウ品種シリーズ Vol.8~

こんにちは!松木リエです。

こちらの記事ではワインに使われる代表的な品種について、基本的なことから実際にお店で役に立つ料理とのマリアージュまでわかりやすくご紹介します。

「ワインのこと全然わからない」という方にこそぜひ読んでいただきたいです!

ワインはブドウだけを原料として生まれる醸造酒です。ワインの香りや味わいは原料のブドウの影響を大きく受けます。世界には何千ものブドウ品種がありますが、ワインとなり広く流通している品種は限られています。特に国際品種と呼ばれる世界中で栽培されている品種なら十数種、そして各国を代表する固有品種を合わせても三十数種程度です。

「ワインって難しい」と思っている方にこそ、品種の特徴を知ることが選びたいワインにたどり着く近道となります。ここでは魅力的な飲食店メニューに役立つ、「これさえ知っておけば大丈夫!」という品種の特徴、代表的な生産地や料理とのマリアージュを合わせてご紹介していきます。

今回ご紹介するブドウ品種は、日本のワイン用品種で一番栽培されている白ブドウの「甲州」。国際的に有名品種とまではいきませんが、日本固有の品種として世界に認知されつつあります。
個性があまりないと言われていた甲州種は、シュール・リー製法で旨味をつけたスタイルが主流でしたが、近年は醸造法のバリエーションが増え、さまざまなスタイルのワインが生まれています。特に今の世界のトレンドである「フードフレンドリーな辛口ワイン」として、もっと注目されていくことに期待したいです。

甲州とは

甲州種は日本で一番栽培されている品種です。日本全体でつくられているワイン用ブドウのうち16%に及ぶ3,416トンが甲州種というデータが、管轄する国税庁から発表されています。その96%に相当する3,293トンが山梨で栽培されており、昨今さまざまなスタイルの甲州ワインが山梨から登場しています。2010年にOIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)に品種登録されました。これによりEU諸国へ輸出・販売する際にラベルに品種名を乗せることが可能になりました。

山梨原産(?)の白ブドウ品種

甲州種の由来は多説ありますが、奈良時代に高僧・行基が薬師如来に授けられたという説や、平安末期に勝沼に住んでいた雨宮勘解由が野生の甲州種を発見し栽培したという2説が有名です。いずれにせよ、千年近く山梨の気候風土に適応して育ってきました。
2013年、酒類総合研究所のDNA解析調査によってそのルーツが科学的に明らかとなりました。甲州種は遥かコーカサス地方からシルクロードを通り、中国を経由して日本に伝わったのです。コーカサス地方はヨーロッパ系ブドウ品種(学名:ヴィティス・ヴィニフェラ)の故郷と言われており、中国を通る途中に、中国南部に生息する東アジア系野生種(学名:ヴィティス・ダヴィディ)と自然交配したブドウが、さらにヴィニフェラと交配してできた、クォーターの交雑種になります。

赤ブドウ品種の特徴(?)を持つ

「グリ系」と呼ばれ果皮が厚く薄い藤紫色で、一般的な白ブドウ品種より果皮に多くのポリフェノールが含まれており、渋味が感じられます。果皮が厚いためカビ病にも強く(ただし、ベト病には弱いです)、高温多湿の日本では育てやすい品種です。収量が多い品種なのでブドウの原料コストを抑えることができ、リーズナブルなワインにつながりますが、ブドウの糖分がなかなか上がらないことが難点となります。

「和」を感じる味わい

際立った特徴があまりない、ニュートラルな個性の品種とよく言われますが、和柑橘や和梨のような香りと、じわりと旨苦味を感じるすっきりした上品な味わいのワインが主流です。このニュートラルさが、繊細な味の構成で成り立つ和食と合わせても、決してワインが料理の邪魔をすることなく、染み渡るような旨味同士の親和性を楽しめます。

甲州ワインのスタイル

甲州種からは多様なスタイルのワインが造られています。製法から好みの甲州ワインを選ぶのも良いでしょう。

シュール・リー

シュール・リー(Sur Lie)とは、フランス語で「オリの上」という意味です。日本では数年の試行錯誤を経て1983年に、メルシャンが甲州種のワインづくりで成功しました。
発酵終了後に役目を終えた酵母はタンクの底に沈み「オリ」となります。通常、上澄のワインを別のタンクに移し替え、ワインとオリを切り離すのですが、これを春まで行わずオリと共に数ヵ月貯蔵する製法です。オリ(酵母)の自己分解によりアミノ酸がワインに溶け込むので、ワインは旨味のあるまろやかな味わいとなります。また、オリが溜まっているところには発酵中に生まれた二酸化炭素が残っているので、ワインをフレッシュなままの状態で保つことができます。この製法を使うと、甲州種の果皮からくる特有の苦味が少なくなり、飲みごたえのある辛口甲州になります。

樽熟成

ブドウ自体に強い個性がないことは、逆に醸造によって加わる樽の個性を溶け込ませるのには最適といえます。樽はオーク樫から作られており、新しい樽の場合ははっきりとしたバニラや丁子のような風味がワインに移ります。また、樽を作る際に内側を焦がすので、この焦がす強さによってはコーヒーや燻製のような風味が移ります。近年、この樽の心地よい風味が持ち味のウイスキーがブームになっていること、キャンプ人気も相まって燻製風味のものが流行っていることもあり、ワインの樽風味も人気が高くなりました。甲州種は元々の個性が強くないので、一層この樽の風味が感じやすいです。

オレンジワイン

甲州種を使ったワインにも、今トレンドの、オレンジワインスタイルがいくつか登場しています。オレンジワインとは白ブドウの果皮を長く漬け込みながら発酵させたワインのことで、オレンジ(アンバー)色が付くのみならず、果皮にふんだんに隠されている香りの成分や渋味がワインに溶け込んでいます。
甲州種は果皮に藤紫色の色素をもっているので、一般的な白ブドウよりも渋味の成分(タンニン)を多く含みます。今まではこの苦味は余計なものという認識で、よりクリアな味わいが主流でしたが、甲州種特有の苦味を個性と捉えたオレンジワインは、ワイン愛好家の注目の的です。果皮を漬け込んだ醸造のおかげで、フルーティーさの中にコクや旨味があります。

オレンジワインについてはこちらの記事もぜひご覧ください!
8種類のオレンジワインを飲み比べ!飲んだ感想やそれぞれの特徴をご紹介

甲州の生産量と代表的な生産地

甲州はワイン用品種として日本一の生産量で、生産は山梨に集中しています。

山梨県の中でも産地で個性が違ってきますので、ぜひ、以前私が書いたこちらのコラムも参考にしてください。

記事を読む:「国際的にも評価急上昇!日本ワインの代表的産地の特徴とトレンドを徹底解説〔前編〕」

甲州のおすすめマリアージュは?

強い個性がなく、軽めのボディになるワインなので、料理のクセもあまり強くないものがいいでしょう。また、元々甲州種は魚介と一緒に飲んでも臭みを強調させない特性を持っていますが、シュール・リーをすることでさらに魚臭さが出にくくなるというレポートも発表されています。まさにこのスタイルのワインは、お寿司に合わせても違和感なく楽しめます。

和食の繊細さを壊さない

低温発酵でフルーティーかつクリアな果実味を表現したスタイルや、シュール・リー製法のワインは、出汁のきいたメニューや刺身・寿司・天ぷらなど、素材の繊細な味わいを活かした料理との組み合わせがおすすめです。
また、樽熟成スタイルなら揚げ物やローストしたお料理、西京焼のように香ばしい味噌の風味と相性が良く楽しめます。

優しい味わいの中華・イタリアン・フレンチにも

甲州ワインにしては個性が前面に出ていて立体感のある味わいのオレンジワインスタイルは、幅広い料理と合わせることが可能です。例えば蒸し鶏の香味ソースのような中華料理や、山菜の天ぷらのように野菜の旨味、苦味、さらに衣の香ばしさがオレンジワインと調和するのでおすすめです。

自分のお店の料理にはどうやってワインを合わせたら良いのかわからない!そんな時にはぜひこちらの記事もご覧ください。

記事を読む:単価を上げる!リピーターを増やす!今日から使えるWin-Winのワインペアリング理論

まとめ

日本を代表する白ワイン品種「甲州」がOIVに品種登録されてから12年。まだまだ世界的には無名に近い品種ですが、日本の気候風土に合った代表品種で、日本の食文化にも馴染むワインです。私たち日本人が親しみをもって飲むことで、和食を好む世界の消費者たちにも広まるのではないかと思っています。また、甲州ワインをおすすめすることは、地産地消、サステナブルにつながります。社会貢献の一役にもなるので、ぜひ誇りを持って日本の甲州ワインにはさまざまなスタイルがあること、いろいろな楽しみ方があることを、お店を通して発信していただければと思います。

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この記事を書いた人

松木 リエ

  • WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
  • A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
  • J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
  • WSET Level 3 Certified(2016年合格)
  • IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
  • 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
  • 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
  • 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
  • 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
  • 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
  • 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞

2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。

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