国際的にも評価急上昇!日本ワインの代表的産地の特徴とトレンドを徹底解説〔後編〕
国際的にも高い評価を受けている日本ワイン。その日本ワインの都道府県別生産量上位5県(山梨県、長野県、北海道、山形県、岩手県)と、日本を代表する黒ブドウ品種マスカット・ベーリーAの原産地である新潟県、そして新興勢力・九州も加え、各地区の特徴を解説していきます。
前編では山梨県をご紹介しました。ぜひ合わせてご覧ください。
国際的にも評価急上昇!日本ワインの代表的産地の特徴とトレンドを徹底解説〔前編〕
生産量、ワイナリー数、ともに日本一の山梨県は、日本を代表するワイン産地として国内外に知られています。日本を代表する品種「甲州」でも様々なタイプの商品があります。また山梨のワインは地域によっても特徴が分かれます。それぞれの特徴やトレンドを解説し、おすすめ商品をご紹介しています。
近年、国際的にも高い評価を獲得しており人気も急上昇中の日本ワイン。日本ワインをドリンクメニューに取り入れたいがワインにそう詳しくなく、どこから手をつけていいのかわからない方々に、代表的な産地と産地ごとの特徴・トレンドをご紹介します。お店にふさわしい日本ワインをドリンクメニューに加え、売上アップをはかっていきましょう。
長野のワインはメルロー・シャルドネが高評価
長野県のワイン産地は全体的に朝晩の気温差が大きく、降水量が比較的少なめで、国際品種から土着品種まで栽培されています。
主に地元で飲まれているのはアメリカ系品種のコンコード(赤ワイン)やナイアガラ(白ワイン)で、この2品種で長野県のブドウ栽培面積の48%を占めています。
一方、この気象条件の良さはヨーロッパ系品種の栽培に非常に適しており、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランというワイン消費者から人気の高い品種の生産数量は日本一です。早くからヨーロッパ的な原産地呼称の保護に努めてきており、今は「信州ワインバレー構想」で世界中のワインラバーのあこがれの地をめざしています。
長野県は山梨県と共に日本を代表するワイン産地であり、世界的評価においても申し分ない実績があります。海外からのお客様にも馴染みのある国際品種で、美味しいワインがたくさんある長野は、今後もワインメニューに必要な注目産地です。
桔梗ヶ原ワインバレー
松本盆地の南端、塩尻市全体のエリアをさす桔梗ヶ原ワインバレーは、長野県のワイン造り発祥の地と言われています。
奈良井川と田川が作った扇状地の影響で緩やかな北向き斜面ですが、その地に立つとほぼ真っ平らに感じるような場所です。日照量は全国1、2位を争うほど多く、水捌けの良い土地なので黒ブドウの栽培に適しています。特にメルロという品種において日本を代表する産地となっています。
桔梗ヶ原ワインバレーのメルロの赤ワインは、ブラック・ベリーやブラックチェリーと、甘草や丁子の香り、さらに清涼感をもたらす野菜のニュアンスも感じるミディアムボディで、渋味や酸味が強すぎないため、飲み口はまろやかです。魚の煮付け、肉詰めピーマンの照り焼き、きんぴらごぼうのようなおばんざい料理にぴったりですので、ぜひ合わせてみてください。
そして桔梗ヶ原ワインバレーのある塩尻は今、大きく5つの地区(桔梗ヶ原、岩垂原、洗馬、片丘、柿沢)に分けることができ、今後さらに地域ごとのテロワール(土地の個性)を活かしたワインづくりが進んでいくでしょう。
おすすめワイナリー
- シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー
- アルプス
- 井筒ワイン
- 林農園
- 信濃ワイン
千曲川ワインバレー
長野県北東部の千曲川流域に広がるこの地域は、まるでヨーロッパのブドウ畑に来ているような、なだらかな丘にワイン畑が広がる風景を見ることができます。
長野県にある55場のワイナリー中、約半数がここにあります。ほとんどのワイナリーがヨーロッパ系品種を、フランスのボルドーやブルゴーニュのような銘醸地で見られるのと同じ垣根仕立てで栽培しています。
国際ワインコンクールで高い評価を受けたワインもたくさん見受けられるのがこの地域です。特にインターナショナル・ワイン・チャレンジでは「北信左岸シャルドネ リヴァリス 2017」が金賞を受賞し、一気に世界的高評価ワイン産地の仲間入りをしました。
シャルドネの他にも冷涼で雨の少ない気候から、香り高く柑橘やハーブの清涼感ある香りが魅力的なソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)、他国と比べても黒コショウのようなスパイス香が顕著に感じる、エレガントな味わいのシラー種(赤ワイン)、華やかで旨味を感じる軽やかなピノ・ノワール(赤ワイン)が注目品種です。
おすすめワイナリー
- シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー
- 信州たかやまワイナリー
- ヴィラデストワイナリー
- アルカンヴィーニュ
北海道のワインはヨーロッパ品種のよう
日本ワイン第3の産地が北海道です。ブドウの生育期間中に梅雨や台風の影響を受けにくく、本州に比べて湿度と気温が低いので、ブドウ栽培に非常に適した地となっています。
栽培面積が広いのは、寒さに強い品種のナイアガラやキャンベル・アーリーですが、他にはドイツ系品種のケルナーやオーストリア系品種のツヴァイゲルトの評価が高く、また、栽培が難しいといわれているピノ・ノワールの栽培面積が急速に広がっています。まだ量としては少ないですが、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネからつくられた素晴らしい品質のワインを見つけることもできます。
北海道特有の品種としては、「山幸(やまさち)」という黒ブドウ品種があります。寒冷地でも栽培ができるように北海道池田町のぶどう・ぶどう酒研究所が開発しました。濃い色調で酸味の高い赤ワインとなります。そしてこの品種は「甲州」や「マスカット・ベーリーA」に続いて2020年に国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V)に品種登録されました。この登録によって今後、世界への山幸ワインのアピールとブランディング価値の向上に繋がっていくことでしょう。
特に注目したいワイン生産地域は3つ
<空知地方>
岩見沢市や三笠市を中心とする、石狩平野の端に位置します。札幌市内や新千歳空港から車で1時間ほどの場所にあり、白樺林の中に広がるブドウ畑はまるでヨーロッパに来たかのようにも感じます。
冬にかなりの積雪がある地域なので、ブドウ樹が折れないためと凍害防御のために冬期は雪の中に樹を埋めます。雪に埋めやすいようにあらかじめ樹の幹を斜めにして仕立てる独特な栽培のブドウ畑も見所です。
ピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランの栽培面積が増えています。
<後志地方>
余市町や仁木町を中心とするこの地域は、栽培面積、収穫量、ワイナリーの数において道内一位の産地です。北海道の中でも比較的温暖な海洋性気候で、約30年前からヨーロッパ系品種の本格的な栽培がスタートしました。
品質の高いワインをつくるワイナリーがたくさんあり、特にピノ・ノワール栽培においては北海道を代表するような場所です。
おすすめ生産者
- グランポレール(ヴィンヤードのみ)
- 余市ワイン
- 北海道ワイン
<函館エリア>
函館市や北斗市のエリアは海洋性気候で、ブルゴーニュより日照量が幾分少ないですが霜害を心配することなく10月までゆっくりブドウの成熟を待つことができます。数年前、フランス・ブルゴーニュの有名生産者がこの函館エリアにワイナリーを建てるというニュースが驚きをもって世界に発信されました。今後さらに注目度が高くなることは間違いない地域です。
おすすめワイナリー
- はこだてワイン
もちろん広い北海道ですから他の地域にもおすすめワイナリーがありますので一覧にまとめます。ぜひお試しください。
おすすめワイナリー
- 十勝ワイン
- ふらのワイン
- ドメーヌレゾン
果物生産レベルが高い山形のワイン
果樹栽培のレベルが高く、ワイン用のブドウ栽培においてもポテンシャルが高いのが山形県です。夏は高温ですが、9月以降一気に冷え込み寒暖差が大きく、質の高いブドウが収穫されます。
実は、長野県塩尻市(桔梗ヶ原)の代名詞と言われているメルロ種は、山形県から苗木を持っていったのが始まりです。現在山形でたくさん栽培されている品種はマスカット・ベーリーAとデラウェアですが、メルロやナイヤガラ、シャルドネも多く栽培されています。
ちなみに、2021年に日本の原産地呼称「G.I.山形」を取得しました。
おすすめワイナリー
- タケダワイナリー
- 朝日町ワイン
- 酒井ワイナリー
- 高畠ワイナリー
など
冷涼な気候から生まれる岩手のワイン
震災後にワイン産業が活性化し、現在11軒のワイナリーがあります。ドイツ原産「リースリング」と日本固有品種「甲州三尺」を交配したリースリング・リオンが代表品種です。フレッシュでスッキリとした辛口ワインになります。他にも、岩手県らしさと言えば、ヤマブドウを使ったワインづくりや、キャンベル・アーリーの栽培量の多さです。
おすすめワイナリー
- エーデルワイン
など
個性派ワイナリーが多い新潟のワイン
日本ワインの歴史に功績を残す偉大な土地、新潟。「日本ワインぶどうの父」川上善兵衛が拓いた岩の原葡萄園がある場所です。川上善兵衛は、雪深く河川氾濫によって米作りも厳しかった地元地域の農業発展を考えて1万311回もの品種交雑を行い、優良22品種を世に送り出しました。雪を利用して熟成庫を冷却、スペイン系ブドウ品種のアルバリーニョ栽培に挑戦、耐寒性に優れた品種(ツヴァイゲルトレーべ)へのチャレンジ成功など、個性的なワイナリーが多く、試行錯誤しながらその土地らしさを表現しています。
新潟で生まれた日本固有品種「マスカット・ベーリーA」
新潟県「岩の原葡萄園」で交配により生まれた赤ワイン用日本固有品種です。日本の赤ワイン用のブドウとしては最大の生産量を誇り、苺キャンディーのような香りで果実味をしっかり感じる軽やかな味わいのワインに仕上がります。
アルバリーニョの評価が高い「新潟ワインコースト」
新潟駅から車で海沿いを南西に走ること40分。「新潟ワインコースト」と呼ばれる注目のワイン産地があります。直線距離300m以内に5軒の個性のあるワイナリーが集まっており、そしてレストランやホテルも併設された日本屈指のワインツーリズムができる場所となっています。
新潟県ですが海に近いこともあり雪はそれほど降りません。角田山の麓と日本海の間の砂質土壌に、ヨーロッパ系品種を栽培していますが、特にスペインのリアスバイシャスを代表する白ブドウ品種のアルバリーニョの評判が非常に高いです。このアルバリーニョ、熟れた果樹の芳醇な果実味がある一方、少し旨塩味を感じるようなミネラル感がある味わいで、魚介料理にピッタリ合うワインとして消費者からとても人気があります。
成長著しい新興勢力、九州のワイン
ブドウ生育シーズンが温暖で台風の影響もある九州ですが、近年ワイナリーが続々誕生し、試行錯誤を繰り返して風土に適したブドウ品種導入に熱心に取り組んでいます。九州全体に17軒のワイナリーがあり、特に大分県の安心院町にある安心院葡萄酒工房、宮崎の都農町にある都農ワイナリー、そして熊本の熊本ワインファームの評価が高いです。
日本ワインは受賞歴や固有品種から試すのもおすすめ
日本ワインはコンクールで高い評価を獲得しているものも多く、受賞歴を参考に好みの産地のワインを選ぶのも良いかと思います。
また前編で紹介した甲州やマスカット・ベーリーAも日本ワイン初心者におすすめです。
まとめ
高品質で国際的評価も上昇中の日本ワイン。山梨、長野、北海道のトップ3生産地から、東北、新潟、九州などにも様々な特徴を持つワインがたくさんあります。まずは代表的な産地と、産地ごとのワインの特徴・トレンドを理解しておけば、お店のコンセプトとメニューにぴったりのワインが選べるはずです。
日本ワイン選び・仕入れに迷ったら、業務用酒販のプロ「カクヤス」に気軽にお声かけください。地域性も加味して売上アップにつながる提案をさせていただきます。
この記事を書いた人
松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
生産者名は株式会社醸造産業新聞社発行「日本ワイン生産者ガイドブック 2021年版」参照。
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