【メルロ】特徴から食事との組み合わせや生産地について紹介~ワインのブドウ品種シリーズ Vol.3~


こんにちは!松木リエです。
こちらの記事ではワインに使われる代表的な品種について、基本的なことから実際にお店で役に立つ料理とのマリアージュまでわかりやすくご紹介します。
「ワインのこと全然わからない」という方にこそぜひ読んでいただきたいです!
ワインはブドウだけを原料として生まれる醸造酒です。ワインの香りや味わいは原料のブドウの影響を大きく受けます。世界には何千ものブドウ品種がありますが、ワインとなり広く流通している品種は限られています。特に国際品種と呼ばれる世界中で栽培されている品種なら十数種、そして各国を代表する固有品種を合わせても三十数種程度です。
「ワインって難しい」と思っている方にこそ、品種の特徴を知ることが選びたいワインにたどり着く近道となります。ここでは魅力的な飲食店メニューに役立つ、「これさえ知っておけば大丈夫!」という品種の特徴、代表的な生産地とおすすめワイン、そして料理とのマリアージュを合わせてご紹介していきます。
メルロとは
今回はメルロという黒ブドウ品種についてお話します。毎日の食卓に置けるようなデイリーワインから、「シャトー・ペトリュス」のように1本何十万円もする高価格帯まで造られているメルロ。ブドウの個性としては、ワインになったときに「強すぎず、弱すぎない渋味」「高すぎず、低すぎない酸味」そして「ふくよかな果実味」が持ち味なので、幅広い料理に合わせることができ多くの方に愛されています。
赤の国際品種の代表格
メルロは世界中で栽培されている国際品種のひとつ。カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールと並ぶ存在です。ワイン用のブドウとしても世界でも2番目に多く栽培されており、2017年のO.I.V.の統計によると226,000haに及びます。特にフランスでは国内栽培面積1位。ワインの国フランスの人々はメルロが大好きです。
バランスの良い味わい
メルロはフランスのボルドー地方が原産です。温和から温暖な気候での栽培に適した黒ブドウ品種で、ワインにすると赤系果実(レッドチェリーやレッドプラム)、草や野菜のような清涼感のある香り・風味があらわれます。そして中程度の柔和なタンニンと中程度から低い酸味、しっかりとした果実味、ミディアムボディのバランスの取れた赤ワインです。
より温暖な気候での栽培や収量を抑えることでブドウの成熟度が高まった場合には、黒系果実(ブラックベリーやブラックプラム)の香り・風味があらわれ、しっかりとしたタンニンと高めのアルコール、そして芳醇な味わいの、フルボディの赤ワインとなります。
親しみやすさがメルロの特徴
デイリーワインの価格帯でも果実味が豊かで飲み応えがあり、それでいて酸味や渋味の主張は控えめな味わいは、個性の強いワインが苦手な方にもぴったりの品種と言えます。フランスでのブドウ栽培面積が1位だということが示すように、フランスでは日常的に飲まれており、苦手な人が少ない、皆から愛されている品種です。
メルロの代表的な生産地と味わいの特徴
世界中で栽培されるメルロは、気候や国によって若干スタイルが異なります。それでは、各地の特徴とおすすめワインを紹介していきます。
フランスのメルロ
フランスでメルロと言えば、やはり原産地であるボルドー地方です。温和な海洋性気候のボルドーは、フランスの中では比較的雨が多く、霜害やカビ病のリスクを避けるためにもカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどの品種とブレンドしてワインをつくっています。
ボルドーといえば川を挟んで「右岸」と「左岸」でワインのスタイルが異なります。
右岸はドルドーニュ川の右側、サンテミリオンやポムロールを中心とする、主に粘土質土壌の地域です。少しひんやりとする粘土質土壌にはメルロの栽培が向いているため、メルロ主体の芳醇な果実味とビロードのような滑らかなタンニンが持ち味のワインが生まれます。
左岸はジロンド川やガロンヌ川の左側、オー・メドックやグラーヴを中心とする、小石や砂利質土壌の地域です。昼間の太陽熱を吸収し暖かな小石や砂利質で、かつ水捌けが良い土壌にはカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が向いており、カベルネ・ソーヴィニヨンにメルロをブレンドした、しっかりとした酸味とタンニンをもつ骨格のあるワインが生まれます。
右岸の最上級メルロのワインには「シャトー・シュヴァル・ブラン」「シャトー・ペトリュス」「ル・パン」など至宝の造り手などがありますが、もちろん相応して値段も高額です。
ですが実は、右岸のような特徴を持ちつつお手頃価格で、しかもお店での提供に向いているワインもあります。それは「ボルドー」や「ボルドー・シューペリュール」とラベルに書かれているものです。
これら「ボルドー」や「ボルドー・シューペリュール」は、ボルドー地方の広域から集められたブドウを、味わいなどのバランスを考えてブレンドしています。若いヴィンテージでも購入した時点で美味しく飲める柔らかいタンニンのワインを探すのなら、メルロの割合が高いものをぜひ選んでみてください。少し青野菜のような清涼感があるミディアムボディの味わいは、野菜をたっぷり使った肉料理との相性が抜群です。
おすすめワイン

シャトー マルキザ ラ ペルーズ
- 産地:フランス ボルドー地方
ABとEUのオーニック認証取得、亜硫酸無添加のエレガント・ボルドー。
色彩も淡く、デリケートな香りで、心地よい酸味を感じ、のど越しは滑らかでタンニンの穏やかな味わい。味付けを控えめにして、食材の味わいを引き立てるような料理全般に向いています。あえて樽熟成に依存しないバランスとエレガンスさをご堪能いただけます。
容量:750ml
参考価格:3,180 円(税抜)
イタリアのメルロ
イタリアは、古代から「ワインの大地」と讃えられていたほど、ブドウ栽培に非常に適した土地が広がっています。地中海に囲まれた温暖な気候と、日照量に恵まれた雨の少ない環境は、見事に熟した健全なブドウを育てることができるのです。非常に多くの固有品種が残っており、その固有品種からつくったワインが原産地呼称として認められています。ですから固有品種の方が主力で、あまり国際品種のイメージのないイタリアですが、メルロはイタリアでも黒ブドウの栽培面積で3位、白ブドウも入れた全体でも5位の23,631ha(2015年O.I.V.の統計)と広く栽培されています。ちなみに上位4つの品種はイタリア固有の品種です。メルロはイタリア全域で栽培され、エリアごとに個性がありバランスの良さが共通しています。
イタリアで、まさに国際品種の品質の高さに注目されたきっかけは「サッシカイヤ」の登場です。イタリアのトスカーナ州、海に近いボルゲリという地域にあらわれたスターワインで、ボルドー系品種からフルボディの赤ワインをつくっています。
サッシカイヤが世界的に高評価されたことで、そのサッシカイヤを産むボルゲリの土地にも注目が集まりました。そこはボルドーと似た気候で、かつ、ボルドーよりも温暖になります。そこで育ったボルドー系品種は、フランスの銘醸地・ボルドーを凌ぐと言われるほどの凝縮感を得ることができるのです。黒系果実(ブラックチェリーやブラックプラム)のリキュールのような香り、風味と凝縮感のある果実味は、煮込み料理やデミグラスソースのような凝縮した旨味と調和します。
おすすめワイン

レ マッキオーレ ボルゲリ ロッソ/アジィエンダ アグリコーラ レ マッキオーレ
- 産地:イタリア トスカーナ州
深みのある紫紅。カシスリキュール、濃縮したブルーベリーの果実香。柔らかい口当たりでミネラルからくる旨みが強い。フレッシュさや香りの華やかさが際立つ赤ワインです。
容量:750ml
参考価格:3,860 円(税抜)
チリのメルロ
日本との関税撤廃のおかげで、さらにお手頃感が増したチリ。低価格帯のチリのメルロは、主にセントラル・ヴァレーで生産されています。セントラル・ヴァレーは太平洋とアンデス山脈に挟まれた温暖な地中海性気候で、チリのブドウ栽培地の大半が集まっているところです。ワインは他国に比べて濃厚な味わいで、ダークフルーツの風味と特にタンニンのなめらかさがあり、輸出市場で非常に良い結果を残しています。
おすすめワイン

モンテス アルファ メルロ/モンテス
- 産地:チリ セントラル・ヴァレー
タンニンが柔らかく、肉付きの良いボディが魅力です。 黒系果実や黒胡椒、チョコレートなどの豊かなアロマ。樽の香りと柔らかいタンニン、長く上品な余韻をお愉しみいただけます。
容量:750ml
参考価格:2,300 円(税抜)
アメリカのメルロ
カベルネ・ソーヴィニヨンが根強い人気で栽培面積も1位ですが、低価格帯のデイリーワインでもバランスの良い味わいをもたらすメルロも多く栽培されています。
カリフォルニア州ではメルロは1990年代から2000年代初頭にかけて絶大な人気を誇っていました。消費者動向の変化に伴い、ピノ・ノワールの栽培面積が増えてきた2005年以降にメルロは逆に作付けが減少してきています。それでも黒ブドウ中4位の14,553ha(California Grape Acreage Report 2020の統計)の栽培面積があり、多くのメルローは中程度の酸味とタンニンをもち、フルーティなプラムの特徴のデイリーワインや中価格帯のワインが造られています。
ワシントン州もおすすめです。こちらもカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が圧倒的に多いですが、メルロはそれに次ぐ2位の栽培面積22,775ha(Washington Grape Production Report 2020の統計)を誇っています。ワシントン州のブドウ栽培地の大半は温暖で日照に恵まれ、そして乾燥していますが夜は大変冷え込むため、ワインは熟した果実味をもちながらも酸度は中程度から高めのものが多くなっています。黒系果実の濃厚な香りが特徴で、デイリーワインにぴったりの産地です。
おすすめワイン

コロンビア ヴァレー メルロ/シャトー サンミッシェル
- 産地:アメリカ ワシントン州
やさしい抽出と16ヵ月の樽熟成(新樽比率約30%)により、やわらかく、たっぷりしたタンニンが感じられ、複雑味がありながら、楽しみやすいメルロに仕上がっている。色濃い果実を思わせるフレーバー・アロマに、滑らかで甘い余韻。
容量:750ml
参考価格:2,690 円(税抜)
日本のメルロ
日本で一番メルロが栽培されているのは長野県です。長野では昼夜の寒暖差があり、質の良いメルロを生産することができます。特に日本のメルロが代名詞となっているのは桔梗ヶ原ワインバレーの別名をもつ塩尻市です。
日本のメルロは、ブラック・ベリーやブラックチェリーと甘草や丁子の香りに加えて、ごぼうのような根菜の香り、ししとうを思わせる清涼感ある野菜の香りが特徴的です。そして緻密なタンニンとやわらかい口当たりがあるので、重すぎない味わいの赤ワインになります。年々、栽培や醸造の技術が向上しているので、ボルドーやカリフォルニアの銘醸地にあるような、凝縮したフルボディのタイプも出会えるようになってきました。
おすすめワイン

シャトーメルシャン 長野メルロ
- 産地:日本 長野県
色合いは紫がかったガーネット。カシスやブラックチェリーなどの黒い果実、スパイスやドライフルーツ、ヴァニラなどの香りが感じられ、なめし皮や腐葉土などの香りが複雑さを与えています。心地よい酸としっかりとしたタンニンがバランスよく調和したエレガントなワインです。
容量:750ml
参考価格:3,610 円(税抜)
メルロのおすすめマリアージュは?
酸味やタンニンのレベルが強すぎず、土っぽい風味や、熟成させると滋味深い旨味が出てくるメルローは、野菜や根菜、きのこを使った料理と、比較的容易に香り・風味を合わせることができます。
挽肉料理と相性抜群
さらにタンニンが滑らかで強すぎないので、咀嚼の必要性があまりない、ひき肉を使った料理と(例えばハンバーグ・肉団子・ミートボールなど)口中の味の滞在時間や味の広がり方が同調します。
味噌・醤油・砂糖との相性も◎
そして熟成したメルロは、味噌や醤油に感じられる土のような風味をもっており、そしてワインのジューシーな果実風味もあるので、味醂や砂糖と甘辛く味付けした照り焼きや煮物と合わせると、五味(甘・塩・酸・苦・旨)がバランスよく完成して心地よいマリアージュを体験することができます。
もちろん和食だけではなく、スイートスパイスを使う中華や、デミグラスソースのような旨味の凝縮のある洋食にも合わせやすく、幅広い料理とマリアージュすることができるメルロは万能の品種と言ってもいいでしょう。

自分のお店の料理にはどうやってワインを合わせたら良いのかわからない!そんな時にはぜひこちらの記事もご覧ください。
まとめ
メルロは赤ワインの代表的品種の一つで世界中で栽培されています。色合い・タンニン(渋味)・香りともにバランスの良い、ふくよかで口当たりの良いワインになるので、合わせる料理の守備範囲が広く、メニューに加えると重宝するでしょう。
何十、何百もあるワインの中から自分のお店にはどのワインが合っているのか選ぶのは大変なので、ワインリストの作成や仕入れのご相談はぜひ飲食店向け酒類のプロ「なんでも酒やカクヤス」にご相談ください。

この記事を書いた人

松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
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