【ガメイ】特徴から食事との組み合わせや生産地について紹介~ワインのブドウ品種シリーズ Vol.7~

こんにちは!松木リエです。

こちらの記事ではワインに使われる代表的な品種について、基本的なことから実際にお店で役に立つ料理とのマリアージュまでわかりやすくご紹介します。

「ワインのこと全然わからない」という方にこそぜひ読んでいただきたいです!

ワインはブドウだけを原料として生まれる醸造酒です。ワインの香りや味わいは原料のブドウの影響を大きく受けます。世界には何千ものブドウ品種がありますが、ワインとなり広く流通している品種は限られています。特に国際品種と呼ばれる世界中で栽培されている品種なら十数種、そして各国を代表する固有品種を合わせても三十数種程度です。

「ワインって難しい」と思っている方にこそ、品種の特徴を知ることが選びたいワインにたどり着く近道となります。ここでは魅力的な飲食店メニューに役立つ、「これさえ知っておけば大丈夫!」という品種の特徴、代表的な生産地とおすすめワイン、そして料理とのマリアージュを合わせてご紹介していきます。

過去の【ワインのブドウ品種シリーズ】の記事はコチラから

今回ご紹介するブドウ品種は「ガメイ」です。品種の名前でピンとくる方は少ないかもしれませんが、ボージョレ・ヌーヴォーの品種と言えば多くの方が飲んだことあるワインと挙げるでしょう。渋味が控えめで、フレッシュ&フルーティーの代表格と言えるボージョレ・ヌーヴォーに使われている品種がガメイです。最近の健康志向&食のライト化のおかげで、軽やかな味わいの赤ワインに注目が集まってきており、ガメイももちろんトレンドの品種となっています。ちなみに、NYやロンドンの感度の高いソムリエや消費者たちは、ガメイの赤ワインと言ってもボージョレ・ヌーヴォーのようなフレッシュ&フルーティーなワインではなく、高品質なピノ・ノワールからつくられた赤ワインのように、味わいに深みを感じるクリュ・ボージョレに熱い視線を送っています。

ガメイとは

ピノ・ノワールとグエ・ブラン(Gouais Blanc)の自然交配で生まれた黒ブドウ品種で、ブルゴーニュ地方の南部にあるボージョレ地区が原産です。片親であるピノ・ノワールの特徴と非常によく似た赤系果実の風味と、高い酸味、中程度から少なめのタンニンをもちます。早く発芽し、秋雨の前に収穫することができる早熟な品種なので、新酒をつくるのに適した特徴をもっていることが分かりますよね。ただし、果皮が薄いためカビ病には弱く、風が強いと結実不良になり収量が減少してしまいます。どこでも栽培できるというわけではないのです。

ボージョレ・ヌーヴォーの品種が「ガメイ」

そして、毎年11月第3木曜日に解禁されるボージョレ・ヌーヴォーはこのガメイからつくられる赤ワインです。品種名を知らずとも、飲んだことがある方は多いかもしれません。新酒を祝うことは昔から行われていましたが、かつてはワイナリー周辺の限られた人々だけがその味を楽しんでいました。航空輸送が整い始め、そしてバブル時代の到来と、時差の関係で本場フランスよりも早く解禁されるということで1980年代から90年代にかけて日本で大ブームが起こりました。今はそのブームは落ち着きましたが、秋だからこそ楽しめる新酒は旬を楽しむ日本の文化にうまくマッチしていると思います。私が日本やパリのレストランで働いていた頃は、新酒を心待ちにしているお客さまのために、解禁日には必ずボージョレ・ヌーボーを用意していました。

同じブルゴーニュのピノ・ノワールとの違い

ガメイは温和な気候での栽培に適した品種で、冷涼なところでも栽培できるピノ・ノワールに比べて気候次第では酸味が若干穏やかで、果実味がしっかりしたワインを造ることが可能です。過去にはボージョレ地区より北部にあるブルゴーニュ地方でもたくさん栽培されていたそうですが、そこの土壌ではガメイは粗野なワインになってしまうため、別のブドウ品種へ植え替えが進みました。ただし、ガメイはボージョレー地方の、特に北部に見られる花崗岩質土壌で丁寧にブドウを育てると、ブルゴーニュのピノ・ノワールに負けないほどのキメの細かなタンニンをもつエレガントな赤ワインになります。

近年はガメイの評価が上昇中

畑の地価の上昇が著しいブルゴーニュ地方の中で、ボージョレ地区はまだ価格が抑えられていること、そして世界で最もガメイに適したテロワールがあり、単一品種で造られるゆえテロワールを反映させやすいことなど、さまざまな理由のおかげで若くユニークな生産者が増えました。ワインや生産者が注目されると、さらに新しい、野心を持った生産者が集まり、新しいワインに感度の高いソムリエたちが反応し、ボージョレのワインの人気上昇を後押ししています。

ガメイの味わいの特徴

ガメイから造られる赤ワインは一般的に、赤系果実(ラズベリー、レッド・チェリー、レッド・プラム)の風味と高い酸味、中程度から少ないタンニンの、ライトボディの赤ワインになります。早飲みタイプと熟成タイプで大きくスタイルが変わるのでまとめていきます。

フレッシュでフルーティー

ボージョレ・ヌーボー、もしくはAOCボージョレのように低価格帯のものが早飲み用としてつくられています。特にボージョレ・ヌーボーの場合は、タンニンの抽出を最小限に抑えながら、色素の抽出を最大限にする手法で造られます。これらの手法により、バナナやイチゴキャンディのようなフルーティーな香りが生まれるのです。すぐに消費することを意図して造られたガメイは、瓶内で時間が経つにつれてフレッシュな果実風味は失われてしまいます。

クリュ・デュ・ボージョレはピノ・ノワール並みの奥行き

「クリュ・デュ・ボージョレ」と呼ばれるボージョレ地区北部の10の区画は、ガメイのテロワールをしっかりと表現できる素晴らしい場所で、はっきりとした赤系果実やスイート・スパイスの風味と、キメの細かな中程度のタンニンが特徴です。

クリュ・デュ・ボージョレでは新酒を作ることは認められておらず、瓶内熟成に耐えるポテンシャルのあるガメイのみを使います。素晴らしい生産者の瓶内熟成を経たクリュ・デュ・ボージョレは、もともとある赤系果実やスイート・スパイスの風味に加えて、ドライフラワーや皮革、土のニュアンスも感じる複雑な風味と、旨味の広がりのある、エレガントなミディアムボディの赤ワインとなります。

ガメイの代表的な産地と特徴

それでは、ガメイの本場であるブルゴーニュ地方ボージョレ地区と、それ以外のエリアに分けて産地の特徴を解説していきます。

ブルゴーニュ地方ボージョレー地区

ガメイの本拠地であるボージョレ地区には3つの原産地呼称があり、ラベル表記の名前の違いでワインのスタイルが少々変わります。

AOCボージョレ

この地域全体を指す原産地呼称(AOC)ですが、大半はボージョレ地方南部の平地で肥沃な土壌からのブドウで造られ、規定されている収穫量もやや多いので(60hℓ/ha)、そのため風味の弱いワインもあります。ワインは、赤系果実のフレッシュでフルーティーなスタイルで造られており、一般的に品質は良く、価格は安いです。

AOCボージョレー・ヴィラージュ

ボージョレの北半分の村々は、ガメイに適した花崗岩質土壌で、なだらかな丘陵地が連なる地域です。赤ワインの最大収穫量はAOCボージョレに比べてわずかに低く(58hℓ/ha)、ブドウは高いレベルの熟度が得られるため、一般的にはAOCボージョレよりも高品質のワインとなります。ラベルに村名を記載することができますが、通常は「ボージョレ・ヴィラージュ」と表示されます。品質は良いものから非常に良いものまであり、価格は安いものから中程度のものまでです。
トップレベルの生産者の中には、古木を使った有機栽培や、人的介入の低いワインを造っており、オーク樽で熟成させることもあります。これらのワインは、赤系果実の香りと風味がより強くなり、スイート・スパイス(シナモン、丁子)の風味がよりはっきりと感じ、タンニンも中程度のレベルになります。

クリュ・デュ・ボージョレの10村のAOC

ボージョレの北部、ヴィラージュの中でも特に素晴らしいブドウができる10のクリュ(区画)は、赤ワインのみの独立したAOCが与えられています。ガメイのテロワールをしっかりと表現できる、素晴らしい場所のみが認証されているので、はっきりとした赤系果実やスイート・スパイスの風味と、キメの細かな中程度のタンニンが特徴です。より軽やかで香りが高いものを選びたいならAOCブルイィやAOCフルーリーがおすすめです。逆に凝縮した果実味で骨格のあるワインを選びたいときは、AOCムーラン・ナ・ヴァンやAOCモルゴン(南向きのコート・ド・ピィの畑は最高品質と評されています)が注目です。

おすすめワイン クリュ・デュ・ボージョレ

モルゴン シャトー デ ジャック/ルイ ジャド

モルゴン シャトー デ ジャック/ルイ ジャド

  • 産地:ブルゴーニュ地方 ボージョレ地区

モルゴンは10のクリュ・デュ・ボージョレの一つで、約1,100haに広がり、結晶片岩と花崗岩からなる土壌にあります。ボージョレ地区のクリュの中では最も男性的と言われる力強さが特徴です。深いチェリー色、香りはベリー系の果実や胡桃のニュアンスも感じられます。

容量:750ml

参考価格:3,012 円(税抜)

ブルゴーニュ地方全体

ブルゴーニュの赤ワインは基本ピノ・ノワールの単一品種で造られますが、AOC Bourgogne Pass-Tout-Grains(ブルゴーニュ・パス・トゥ・グラン)やAOC Coteaux Bourguignons(コトー・ブルギニオン)などピノ・ノワールとガメイをブレンドしたワインも一部生産されています。

ブルゴーニュ以外の生産地

フランスのロワール地方にあるアンジュ・ソミュール地区、トゥーレーヌ地区、サントル・ニヴェルネ地区で少量生産されています。AOC Anjou Gamay(アンジュ・ガメイ)やAOC Touraine Gamay(トゥーレーヌ・ガメイ)のように100%ガメイで造らなくてはいけない原産地呼称もありますが、赤ワインやロゼワインのブレンドにも認可されており、地元消費の軽快なワインという印象です。

ガメイおすすめのマリアージュは?

フード・フレンドリーの軽快なワインなので、広く料理と合わせて楽しめると思います。

ヌーヴォーなら軽めの料理と合わせる

ライトボディで、フレッシュ&フルーティーな酸味と果実味が特徴のワインには、料理も軽快なもので合わせましょう。本場のボージョレ地区はシャリュキュトリー(豚の加工食品)が有名な産地です。定番は生ハムやお肉のパテをおつまみにして、ぐびぐびとワインを飲んでいます。また、トマトなど自然の酸味のある料理がおすすめなので、マルゲリータピザでヌーヴォーを楽しむのはいかがでしょうか。

クリュ・デュ・ボジョレーには重めのメニューを

若干凝縮感の増したクリュ・デュ・ボジョレーのようなワインには、ワインの風味に感じるシナモンやナツメグのようなスイートスパイスのニュアンスを料理に取り入れてみてください。このワインの甘いスパイスの風味が、甘辛いソースに同調します。タンニンが強くなく、果実味豊かなワインには煮込み料理がピッタリ合います。煮込みハンバーグや角煮、煮魚にもいいと思います。

自分のお店の料理にはどうやってワインを合わせたら良いのかわからない!そんな時にはぜひこちらの記事もご覧ください。

単価を上げる!リピーターを増やす!今日から使えるWin-Winのワインペアリング理論

まとめ

近年、注目を浴びているガメイは、ボジョレー・ヌーヴォーの品種として「フレッシュ&フルーティ」な早飲み消費のイメージが強くありますが、瓶内熟成によって発展する品質の高いタイプもあります。気軽に飲みたいとき、じっくりゆっくりワインを嗜みたいとき、さまざまなシチュエーションに合わせることができるので、ぜひスタイルを知って使い分けてみてください。造り手のポテンシャルが非常に出やすいので、生産者を知ることも品質が高くお得なボージョレに出会うコツです。「うちのお店にあったガメイを入れたい!」そんなときはぜひ飲食店向け酒類のプロ「カクヤス」にご相談ください。専任の営業担当がお店に合った商品をご提案いたします。

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この記事を書いた人

松木 リエ

  • WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
  • A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
  • J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
  • WSET Level 3 Certified(2016年合格)
  • IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
  • 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
  • 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
  • 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
  • 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
  • 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
  • 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞

2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。

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