“特化系飲み放題”が人気のビュッフェレストラン -料飲店トレンドと繁盛店事例 vol.11-
Vol.11は「“特化系飲み放題”が人気のビュッフェレストラン」。ここ数年で食べ放題・飲み放題を導入する料飲店はますます増えています。集客力が強く、一定の客単価が取れる魅力的なビジネスモデルではありますが、競合店との差別化が図りにくく、目新しさが失われやすい=飽きられやすいという側面もあります。経営を安定させるには、他にはない個性的な「ウリ」がほしいところ。
今回は激戦区・上野で10年以上も人気店であり続ける、「自然食ビュッフェ 大地の贈り物 上野店」を取り上げます。
自然食ビュッフェ 大地の贈り物 上野店 (東京・上野)
JR御徒町駅から徒歩3分ほど、老舗百貨店「松坂屋 上野店」と中央通りを挟んだ対面に建つ、8階建てビルの4階に店を構える「大地の贈り物」は、2007年2月開店。東証1部上場の外食企業「株式会社DDホールディングス」グループの「株式会社ダイヤモンドダイニング」が運営する、“自然食”にこだわったビュッフェレストランだ。
ランチタイムは80分制の、ディナータイムは120分制の食べ放題をおこなっており、80種類以上のバラエティ豊かなメニューを提供している。
ソフトドリンクバー付きの「ベースプラン」は、平日ランチタイムが大人1,890円、土日祝ランチタイムが1,990円、ディナータイムが2,990円。
農家の台所をイメージしたという店内は、木目の温もりが感じられる落ち着いた空間で全180席。お櫃を模した半個室、上野の街を望む窓際のボックステーブル席、最大50名まで収容可能なパーティスペースなどを備えており、デートや女子会、打ち上げや親睦会まであらゆるシーンに対応している。
上野恩賜公園とアメヤ横丁(アメ横)から徒歩数分のため、上野観光に訪れた観光客の利用も多く、ファミリーやカップル、シニアだけでなく、30名以上のインバウンドの団体予約が週に数組入ったりと、客層も実に幅広い。月間来店客数は約8,000人、客層の男女比は3:7。
ビュッフェ台には全国各地から取り寄せた新鮮な国産生野菜をはじめ、季節野菜の蒸篭蒸し、春雨サラダ、揚げ茄子とインゲンの和風餡かけ、焼きトウモロコシ、大学芋、出汁巻き玉子、揚げ出し豆腐、焼き魚に鶏の竜田揚げなどなど、素材を活かした和食中心のお惣菜がズラリと並ぶ。
ソフトドリンクもジュースやコーヒーに加えて、36種類ものハーブティーを揃えた「お茶ビュッフェ」を用意していたりと充実の内容。ヘルシー志向の女性人気が高いのも頷ける。
また、春は「いちご」、夏は「うなぎ」、秋は「まつたけ」といった、四季折々の厳選食材を用いたフェアも年間通して開催しており、なかなか食べ放題ではお目にかかれない高級食材が味わえると評判だ。
ちなみに2019年6月3日(月)~7月28日(日)の期間に開催されたのは、「メロン」をテーマにした「メロン食べ比べ&メロンスイーツ食べ放題フェア」。9種類の限定メニューが登場した。
そして同店の最大の特徴が、ディナータイムの「梅酒&樽生スパークリング飲み放題プラン(税込3,490円)」で利用可能になる、「梅酒百選」カウンターである。
その名の通り、全国から選りすぐった梅酒・果実酒が常時100種類用意されており、追加料金が必要な銘柄などもなく、全てが飲み放題。ベースプランに500円プラスしただけで楽しめるとあって、開店以来の目玉コーナーとなっている。
カウンターには専任の担当者がつき、客の味の好みや気分に合わせた1杯を、解説とともに供してくれるBarスタイル。梅酒に詳しくない初心者でも気軽にオーダーできるため、食べ放題よりも梅酒百選を目当てに訪れるリピーター客も多い。
100種類の中でも特に人気の銘柄が、茨城県「明利酒類株式会社」の「梅香 百年梅酒」。漬け込んでから長期間熟成させた国産青梅に、ブランデーとハチミツを加えて仕上げられており、芳醇な香りと濃厚な甘味が官能的。
負けず劣らずの人気を誇るのが、岩手県「株式会社南部美人」の「南部美人 糖類無添加 梅酒」。純米酒をベースに甘味料を一切使わずに仕込んだ、すっきりとした大人な美味しさの梅酒で、食事との相性が非常に良い。
「あまりお酒に強くない人」に推薦しているというのが、長野県「大信州酒造」の「大信州 みぞれりんごの梅酒 吟醸仕込」。吟醸酒で仕込んだ完熟南高梅100%の梅酒に、最上級「サンふじ」のストレートジュースがブレンドされた、果肉たっぷりのフレッシュジュースのような味わいだ。
他にも、ワインベースの梅酒や泡盛ベースの梅酒といった変わり種も用意しており、もちろん、ロック、水割り、お湯割り、ソーダ割りの飲み方の指定まで自由自在。
さらに、ビュッフェ台からソフトクリームやかき氷を持ってきて、そこに梅酒・果実酒をトッピングするという内容の「大人のトッピング」も好評だ。
夏季のイチオシが、奈良県「梅乃宿酒造」の「FRUTAS(フルータス)マンゴー」をソフトクリームにかけるアレンジ。マンゴーの王様と称されるアルフォンソマンゴーをたっぷりと使用した日本酒ベースのフルーツリキュールで、華やかな甘味とコクがミルクの優しさとマッチする。
居酒屋などの飲み放題では30分前~1時間前にラストオーダーを設定するのが一般的だが、「当店の飲み放題にはラストオーダーを設けていません。お客様に満足していただくことが第一」と語るのは、店舗主任の寺山祐司(てらやま・ゆうじ)さん。
「私が思う料飲店の理想形は、売り上げが週末に偏らないお店です。平日の集客数を上げるにはリピーターの獲得が必須で、そのためには顧客満足度を高めることが最重要。お店のファンがついてくれる状態を作れなければ、右肩下がりになるのは目に見えている」。
しかしラストオーダーを設けないというのは、そのぶんコスト面・作業面での負担が増えてしまうように思うが、「ビュッフェレストランという業態は、実は人件費があまりかかりません。基本はセルフサービスですので、営業前の準備さえしっかりとすれば、あとはスタッフが各ポジションにつくだけで、複雑なオペレーションを必要としない。梅酒百選にしても、お客様にカウンターまで出向いてもらう形ですから、通常の飲み放題のような接客と提供の手間が無いんです」との回答。
これだけ大箱の店舗にも関わらず、「ビュッフェ台のまわりに人が集中して、料理が取りにくくならないように」と、予約客と交渉して、来店時間をこまかくズラすような調整にも気を使っているとのこと。
料理長を務める岡崎智彦(おかざき・ともひこ)さんは高知県出身で、「地元で農家や漁師をやっている親族・友人が多く、彼らの苦労を知っている。素材の味を活かすことと同じくらい、素材を無駄なく捨てるところなく大事に使う、というのが料理人としてのモットーです」と胸を張る。
開発するメニューにその精神が反映されていることは言うまでもないが、ホールとキッチンとの連絡を密にとり、客数から割り出せる適切な提供量を常に意識するなど、食品ロスを抑える努力も欠かさないそうだ。「状態がいいお惣菜は、次の日に玉子とじにして、スタッフのまかないに転用したりね。味には自信がありますから」と頼もしい。
2010年に「100店舗100業態」を達成したダイヤモンドダイニング系列の料飲店は、サービスの内容が店ごとに異なるため、決まったマニュアルが存在しないのだそう。
上野店1店舗しかない同店もまるで個人経営店のように、ケースバイケースの対応を心掛けているのが伝わる。 寺山さんは「お客様目線を欠かさず、会計時にごちそうさま!と、一声かけてもらえるお店であり続けることが目標です」と、今日も自らレジに立つ。
※掲載している価格は、2019年7月時点のものです。
店 名 | 自然食ビュッフェ 大地の贈り物 上野店 |
住 所 | 東京都台東区上野1-20-11 上野鈴乃屋本店ビル4F |
運 営 | 株式会社ダイヤモンドダイニング |
電話番号 | 03-3836-2640 |
営業時間 | 月~土・祝前日 11:00~16:00、17:00~23:00 |
定 休 日 | 無休(※年末年始は営業時間変更あり) |
坪数・席数 | 86.6坪・180席 |
禁煙・喫煙 | 全席禁煙 |
客 単 価 | 昼:2,000円 |
開 業 日 | 2007年2月 |
公式サイト |
この記事を書いた人
秋山シュン
Webライター/ブロガー/役者/芸人。食べ歩いた料飲店は4,000軒超。2007年に立ち上げた個人サイト「シグナル・ロッソ。」での記事紹介により、人気店となった料飲店は数知れず。サブカルチャーにも造詣が深く、2019年より秋葉原の事業組織「AKIBA観光協議会」公認ライターを務める。
グルメレポートを中心とした地域情報発信メディア「シグナル・ロッソ。」
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