【ピノ・ノワール】特徴から食事との組み合わせや生産地について紹介~ワインのブドウ品種シリーズ Vol.1~
こんにちは!松木リエです。
こちらの記事ではワインに使われる代表的な品種について、基本的なことから実際にお店で役に立つ料理とのマリアージュまでわかりやすくご紹介します。
「ワインのこと全然わからない」という方にこそぜひ読んでいただきたいです!
ワインはブドウだけを原料として生まれる醸造酒です。ワインの香りや味わいは原料のブドウの影響を大きく受けます。世界には何千ものブドウ品種がありますが、ワインとなり広く流通している品種は限られています。特に国際品種と呼ばれる世界中で栽培されている品種なら十数種、そして各国を代表する固有品種を合わせても三十数種程度です。
「ワインって難しい」と思っている方にこそ、品種の特徴を知ることが選びたいワインにたどり着く近道となります。ここでは魅力的な飲食店メニューに役立つ、「これさえ知っておけば大丈夫!」という品種の特徴、代表的な生産地とおすすめワイン、そして料理とのマリアージュを合わせてご紹介していきます。
ピノ・ノワールとは
さて、今回はピノ・ノワールという黒ブドウ品種のお話です。ピノ・ノワールという品種名を知らない方でも、世界最高峰の赤ワインと称される「ロマネ・コンティ」なら聞いたことのある方も多いでしょう。ロマネ・コンティは100%、ピノ・ノワールから造られています。
ピノ・ノワールはどこで栽培されたかということが非常に重要なブドウ品種であり、ブドウ栽培者にとって栽培がとても困難な品種です。しかし、赤系果実の風味と渋味の控えめな味わいは消費者にとって飲みやすく、より短い瓶熟成で魅力的な風味となります。ワインが若い段階で飲んでも、瓶熟成を経て飲んでも、どちらでも楽しむことができます。
赤の国際品種の代表格
ピノ・ノワールは世界で6番目に多く栽培されているワイン用の黒ブドウ品種で、2017年のO.I.V.の統計によると115,000haに及びます。過去40年の間にさらに広く普及した人気の品種です。ブドウ自体が繊細で気難しい特徴を持っているため栽培が難しく、生産地域が限定されていますが、栽培面積は上昇傾向にあります。
味わいの特徴
ピノ・ノワールは果皮の薄い黒ブドウ品種で、そのためワインにすると色調は明るくなりやすく、タンニンは強くない赤ワインとなります。
基本となる香りや風味の特徴は、イチゴやレッドチェリーを思わせる赤系果実や、シナモンやナツメグのようなスイート・スパイス、バラのような華やかな花です。
生産地の気候が大きくワインに影響するため個性は様々ですが、共通しているのは、自然の高い酸味と赤系果実の豊かな果実味により、非常に飲みやすい、エレガントなワインになります。
ピノ・ノワールは気難しい?
理想的な栽培環境は、冷涼から温和な気候です。冷涼すぎる環境で栽培、もしくはきちんとブドウが成熟していないと、青臭い香りがあらわれてしまいます。逆に気候が暑すぎると、ワインは過度にジャムっぽくなり、ピノ・ノワールらしい繊細さが失われてしまいます。
果粒同士がぎゅっと詰まった房をしているので風通しを阻害してカビ病になりやすく、収穫前に雨が多く降ってしまうと水分で果粒が割れてしまうこともあるため、栽培は容易ではありません。
収量は一般的に少なく、しかしピノ・ノワールのワインは大変人気があるので価格も高くなりやすいです。また、シャルドネ、ピノ・ムニエとともにシャンパーニュなど高品質スパークリングワインの主要品種にもなっています。
シャンパーニュなどのスパークリングワインを除いて一般的に単一品種のワインとして生産されます。オーク樽で熟成されることも多いですが、簡単にオーク樽の強い風味に圧倒されてしまうので、新樽を醸造に使うのは稀です。
一部の非常に良質、または素晴らしい品質のものは瓶内熟成により、ダージリンティーのような華やかな香りや、なめし革やキノコのような滋味深い風味、梅カツオを思わせる旨味を伴った味わいが広がります。
ピノ・ノワールは、ブドウ栽培家やワイン醸造家の力量が試されると言ってもいいでしょう。栽培や醸造の困難に立ち向かった先にはとても魅力的なワインが待っていることを想像すると、消費者のみならずブドウ栽培家やワイン醸造家からも人気がある品種だということが頷けます。
ピノ・ノワールの代表的な生産地とおすすめワイン
土地の個性がワインにとても表現される品種なので、生産地ごとに個性がやや異なります。好みのタイプに出会うためにも、代表的な産地と味わいの特徴を把握していきましょう。
フランスのピノ・ノワール
ピノ・ノワールはフランスのブルゴーニュ地方を故郷とする品種です。その歴史は古く、1世紀ごろにはブルゴーニュで栽培されていたといわれています。その後、ブルゴーニュのブドウ畑は教会所有になり、修道士によって栽培の知識と技が代々受け継がれました。
ブルゴーニュ地方の中でも、コート・ドールと呼ばれる地区は、常にヨーロッパで最も優れたピノ・ノワールを生産しています。この一帯は、理想的な石灰質で水はけのよい土壌、平均気温を上回る日照量、そして緩やかな傾斜が特徴です。
ブドウ畑における小さな環境の変化は「テロワール」といわれ、ワインの味わいに大きな影響を与え、テロワールの違いがブルゴーニュの原産地呼称システムに明確な品質のヒエラルキーをもたらしています。「グラン・クリュ(特級畑) 」や「プルミエ・クリュ(1級畑)」は生産量が少なく、取引価格も非常に高いです。同時にワインには凝縮感が加わるので、飲み頃になるまで数年〜十数年の瓶内熟成が必要となります。「ブルゴーニュ(=地方名)」とラベルに書いてあるものは、より軽快で飲みやすく、飲み頃が早く訪れます。ブルゴーニュは「ドメーヌ」と呼ばれるブドウ栽培とワイン醸造の両方を行う小さな生産者が多いですが、最近ではネゴシアン(契約栽培農家のブドウも扱うワイン商)の品質の高さや安定感、そしてコストパフォーマンスの良さが見直されています。
おすすめワイン
高品質のスパークリング・ワインの代名詞、シャンパーニュ地方でもピノ・ノワールは重要な役目を担っています。シャンパーニュの味わいにしっかりとしたボディを与え、シャルドネやムニエとブレンドする際に骨格の中心になります。ピノ・ノワールは果皮に色がついている黒ブドウですが、そっと絞った果汁だけを使うので、一般的な白のシャンパーニュの色は白ワインと同じ淡いレモン色になります。
アメリカのピノ・ノワール
ワインはアメリカ全土で生産されていますが、高品質なピノ・ノワールが栽培される地域は限定的です。産地によって傾向は異なりますが、豊潤な果実感は共通してあらわれます。
アメリカのワインの総生産量の約80%を占めているカリフォルニア州では、ピノ・ノワールはカベルネ・ソーヴィニヨン(38,312ha)とシャルドネ(36,699ha)に次ぐ栽培面積があり(19,378ha)、人気の品種です。特に2004年に「サイドウェイ」という映画が大ヒットしたことで、他の品種からピノ・ノワールにどんどん植え替えが進みました。しかしカリフォルニア州の大半は、ピノ・ノワールをつくるのには暖かすぎるので、寒流の流れる太平洋沿岸からの冷却効果が重要なポイントとなってきます。
サンフランシスコの北側のノース・コーストにあるカーネロスやソノマ、サンフランシスコの南側のセントラル・コーストにあるモントレー・カウンティやサンタ・バーバラ・カウンティは海風や朝霧によって冷却される場所で、高品質なピノ・ノワールが生産されています。
おすすめワイン
カリフォルニア州の北に接するオレゴン州は、冷涼な気候から生まれる高品質なピノ・ノワールの産地として世界から注目を集めています。今では栽培面積の約57%がピノ・ノワールを占めるほどです。一般的にカリフォルニアよりも冷涼な気候なので、フレッシュな赤系果実の風味をもつ繊細なワインとなります。
ニュージーランドのピノ・ノワール
ニュージーランドといえば白ブドウのソーヴィニヨン・ブランが栽培面積・生産量とも抜きん出ていますが(25,160ha)、次に続くのはピノ・ノワールで(5,642ha)、ニュージーランドでは1990年代末から栽培面積が増えていきました。
北島の南に位置するマーティンボロや南島のマールボロの冷涼から温和な気候によく適していて、どちらの地域も非常に良質または素晴らしい品質のワインを生み出します。
また、南島にあるセントラル・オタゴは約70%の地域でピノ・ノワールを栽培しています。紫外線の強さや雨の少なさなど過酷な環境が影響して、熟度が高く力強い風味のワインとなります。
おすすめワイン
南アフリカのピノ・ノワール
南アフリカは新世界と呼ばれる国々の中でも、フランス的な幾分抑えた果実味と、滋味深い味わいをもつワインのスタイルが多いため、値段が高くなりすぎたフランスワインの代替地として熱く注目されています。
古くからリンゴの産地として有名だったエルギンは、南極から流れる冷たいベンゲラ海流や、標高の高さの影響によりピノ・ノワールにとって理想的な冷涼な気候がもたらされます。また沿岸地域のウォーカー・ベイも、非常に高品質なピノ・ノワールのワインが多くあります。
おすすめワイン
ピノ・ノワール以外にも魅力がいっぱい!南アフリカについてもっと詳しく知りたい場合はこちらの記事もぜひご覧ください。
チリのピノ・ノワール
チリには多様な気候がありますが、大半はピノ・ノワールにとっては暖かすぎます。しかし、寒流であるフンボルト海流の影響を受ける沿岸地域、特にカサブランカ・ヴァレーは、太平洋からの海風と朝霧で冷却されるのでピノ・ノワールにとって理想的な栽培地域となります。チリのワインはとてもフルーティーで飲みやすいものが多く、色が濃く香りが強めです。ピノ・ノワールのワインが安価なことは稀ですが、チリのワインには非常にコストパフォーマンスが良いものがいくつもあります。
おすすめワイン
ピノ・ノワールと食事のマリアージュは?
酸味が高く、なめらかなタンニンをもつピノ・ノワールは、酸味のある料理や軽めの料理、そして和食との相性が良いものを見つけやすいです。
肉料理はシンプルな味付けで!ジビエにも合う
タンニン量が少なく滑らかな味わいのワインということは、料理の脂質が少ない肉、咀嚼が少なくてすむ薄切りの肉の方がよく合います。
例えば生ハムやローストビーフ、鴨肉などの赤身肉です。ローストビーフにはバルサミコソースで酸味をプラスするとピノ・ノワールの高い酸味に寄り添います。私のお勧めはイチジクのバルサミコソースです。赤系果実風味も調和して素晴らしいマリアージュを楽しめます。
もしジビエに合わせたいのなら、ワインは凝縮感と複雑さがを合わせ持ったピノ・ノワールがおすすめです。ブルゴーニュの一級畑や特級畑、またはカリフォルニアの高品質のもの、ニュージーランドならセントラル・オタゴのワインなら果実味が豊富でボリューム感があるのでより合わせやすいでしょう。
魚ならマグロやカツオ、サラダ・チーズにも
ピノ・ノワールの良さは、お肉料理に限らず赤身の魚との相性がいいことです。この時にはフレッシュで軽快さがあるピノ・ノワールの方がよりマッチします。マグロやカツオのカルパッチョやサラダ仕立てなら、地方名か村名クラスのブルゴーニュ、ニュージーランドのマールボロ、チリのワインが軽快で飲みやすくおすすめです。
ワインのおつまみとして筆頭に挙げられるチーズは、ワインのスタイルに合わせて選びましょう。若い状態のチーズならフレッシュなワイン、熟成タイプのチーズなら熟成感があらわれているワインと合わせるのは基本ルールです。ピノ・ノワールと比較的合いやすいチーズは、ワインの酸味が同調して後味にも旨味が生まれるシェーブルチーズ(山羊)、ワインの果実味が引き出されるブルーチーズ、ワインのなめらかな味わいとチーズのクリーミーさが同調する白カビチーズが手に入りやすくおすすめです。
和食とも相性が良い
瓶内熟成したピノ・ノワールに、私はいつも醤油のような、梅カツオのような、旨味を連想させる香りを感じます。この香りが出汁や醤油などを使う和食と調和します。
鶏肉の梅煮、鰤の照り焼き、焼き鳥をタレで…。醤油、酒、味醂、砂糖を使った味付けにワインを合わせたいときはぜひピノ・ノワールを試してみてください。
自分のお店の料理にはどうやってワインを合わせたら良いのかわからない!そんな時にはぜひこちらの記事もご覧ください。
まとめ
赤ワインの代表品種のひとつピノ・ノワールは果実味と酸味、なめらかなタンニンが魅力の品種です。生産地によって若干個性が異なるので、お手頃価格のものから試して各国・各地域のスタイルを把握してみてください。
お客様からの人気が高い品種ですし、肉・魚はもちろん、和食材との相性も良いので、ワインリストには必須でしょう。1種類のみならず、違う国・地域、価格帯で何種類ものピノ・ノワールをオンリストしてもいいと思います。
何十、何百もあるワインの中から自分のお店にはどのワインが合っているのか選ぶのは大変なので、ワインリストの作成や仕入れのご相談はぜひ飲食店向け酒類のプロ「なんでも酒やカクヤス」にご相談ください。
この記事を書いた人
松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
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