日本酒〝辛口〟座談会【第8回:Nechi 2019・2020・2021】カクヤス営業スタッフが飲み比べました!

日々、飲食店にアルコール・アイテムを提案しているカクヤス営業スタッフが、取り扱う日本酒を忖度なしで語り合うシリーズ企画。時代の変化により日本各地の日本酒が気軽に楽しめるようになり、女性や若い世代などにも日本酒ファンの裾野が広がってきました。一方で「色々ありすぎて何を飲んだらいいかわからない」という消費者や「色々ありすぎて何を置いたらいいかわからない」と悩む飲食店も多いようです。

そこで飲食店に直接お酒を提案・配達している酒販店カクヤスの営業スタッフが結集し、お勧めポイントや料理との相性を考えました。皆様の銘柄選定、メニューづくりのお役に立てれば幸いです。

今回選んだ3品はこちら

Nechi 越淡麗 壱等米2021 Nechi 越淡麗 壱等米2020 Nechi 越淡麗 2019
メーカー 渡辺酒造 渡辺酒造 渡辺酒造
生産地 新潟県糸魚川市 新潟県糸魚川市 新潟県糸魚川市
原料米 越淡麗 越淡麗 越淡麗
アルコール度 16% 16% 16%

今回の利き酒メンバーのご紹介

橋本さん

恵比寿エリア担当。バーやスナックといった料飲業態や中高級のレストラン業態を担当。日本酒はガツンとくる濃厚系が好み。夏はキャンプ、冬はスキー、秋冬はカメラ抱えて旅行と休日をアグレッシブに過ごす。

本企画2回目の参戦。担当は営業推進部で商品販促を務める。カクヤスきっての日本酒ラバーで、先日「マイ燗どうこ」を購入して夜ごと鍋をつつきながら熱燗を堪能。最近は学生時代の趣味だったスキーを社内のスキー好きに誘われて再開した。

大野さん

伊藤さん

本企画2回目の参戦。酒蔵や和酒専門店に勤めていた経験もあって知識が豊富。今も日本酒トレンドの情報収集を欠かさない勉強家。休日は友人と小旅行を楽しんだり、マニアックな日本酒専門店を巡って過ごす。

銀座エリアのクラブを8年間担当し、現在は新橋〜品川エリアを統括。休日は社内の釣りキチと集まって船釣りに。釣れた魚はみずから捌いて家族に振る舞う。またジム通いにも精を出し、食生活を変えずとも一年で6キロ減量を実現。

小森谷さん

米作りからこだわる渡辺酒造「Nechi」の酒造り

小森谷:

今回は新潟・根知谷の蔵元「渡辺酒造店」さんの「Nechi」シリーズです。なんと同じ銘柄をヴィンテージ違いで2021年、2020年、2019年の3種類を飲み比べます。

同じ銘柄の醸造年違いって、難易度高いですね!
「Nechi」は大野さんが先日蔵元に行ってきたんですよね。詳しく教えてください。

橋本:

大野:

はい。渡辺酒造さんの創業は明治元年で150年を超える歴史を持つ老舗蔵元です。主要銘柄は「根知男山」が知られていますが、「Nechi」は上位ブランドという位置づけです。蔵のある場所は新潟県西端の糸魚川市の根知谷で、山に囲まれていて地形的に米の大量生産には不向きですが、寒暖差があるため良質な米ができるそうです。

蔵元の大きな特徴は2003年から米作りを始めていて、自社栽培米のみで酒造りをする「ドメーヌスタイル(※1)」ですね。近年、米作りから関わる酒造メーカーが増えていますが、20年も前から手掛けているパイオニアといっていいと思います。

6代目蔵元の渡辺吉樹さんはまるで「大学教授ですか?」ってくらい研究熱心で、米作りについても日照時間や降水量などのデータを細かく取って収穫時期などを見極めているそうです。お酒の説明もお米の栽培データの解説から始まるという異色の体験でしたね。

栽培している酒米は新潟で開発された「越淡麗」と「五百万石」です(今回の飲み比べは越淡麗のみ)。酒米は品質検査を実施して「特等米」「一等米」「それ以外」に分けて醸造しています。今回の飲み比べは2021年、2020年が「一等米」のみを使ったものです(2019年は一等米が品切れのため別バージョンを代用)。自社栽培するだけでなく酒米を選りすぐって醸造している蔵元は、他に聞いたことがありません。
「ヴィンテージ(※2)」の考え方を日本酒に採り入れたことも個性的ですね。瓶内熟成で5年くらいまで味わいの変化を楽しめるそうです。「収穫(醸造)年ごとに日照時間や降水量などが異なり、それに応じて米質も異なるから、それが日本酒の味にも反映されるのです」と渡辺さんは語ってくれました。

(※1)
フランス・ブルゴーニュのワインはワイナリーがブドウ畑(ドメーヌ)を持ちブドウ作りから一貫製造しており、しかも商品は畑の地区ごとに商品化、格付けされている。
渡辺酒造はこれに倣い、自社で畑を持って原料米作りから一貫製造している。
一般的な日本酒造りでは農家が栽培した酒米を購入して酒造りを行っており、産地も地元に限らない。

(※2)
ワインは「醸造年(ヴィンテージ)」を明記し、特に高価格帯のものではその年ごとの原料ブドウの出来具合が品質や価値などの評価に影響される。
対して日本酒は出荷後1年間程度の商品サイクルが一般的(一部酒造メーカーであえて数年間熟成させてから出荷するところがあるが、醸造年ごとの違いが評価されることはほとんどない)。
渡辺酒造の「Nechi」シリーズでは「醸造年(ヴィンテージ)」ごとに保管熟成させている。醸造年ごとの原料米の生育状況や米質を細かく記録に残し、それを酒質の根拠としている点も独特だ。

聞けば聞くほどブルゴーニュのワイン造りのようだね。
酒米は日本各地から購入するのが当たり前だし、毎年同じ味にしたり、さらに向上させようと杜氏を中心に調整していくものだよね。それが毎年味わいに多少の違いがあってもそれを個性とし、酒米の出来映えを表現しようという発想は斬新だ。

伊藤:

日本酒の異端児「Nechi 越淡麗」のヴィンテージ違いを飲み比べ!

小森谷:

まず「2021年ヴィンテージ」から。若いだけあってフレッシュさが際立つね。青リンゴや柑橘系を思わせる酸味で、味わいもジューシーで軽やか。香りは日本酒としては穏やかなほうだけど、3本の中では爽やかな香りが立っている。

対して「2020年ヴィンテージ」は、ヨーグルトのようなまろやかな酸味で飲み口もクリーミー。飲み比べると、2021年よりも調和がとれているなって実感する。
味わいは繊細なんだけど、すっきり軽いわけではないんだよね。上品さや上質感が伝わってくる。

伊藤:

橋本:

「2019年ヴィンテージ」は熟成しはじめを感じさせるふくよかな香り、味わい。ただ古酒のような「ひねた酸味」はなく、印象がまったく違う。円熟味が増してチーズのような発酵感が感じられるね。もっと前のヴィンテージはどんな味なんだろうって想像力がかき立てられる。

私は刺身より焼鳥の塩が合うって感じました。どのヴィンテージも上品で繊細な味わいなんだけど、2019年ヴィンテージはよりしっかりしていて肉のうま味にも負けない強さがある。

大野:

橋本:

乳酸の風味がキレイに出ているからチーズとも相性はいいね。生クリームなど乳製品ベースのソースを使った洋食と合わせるのもいいんじゃないかな。

実はさっき昼食にうっかりビリ辛い麻婆豆腐を食べてしまい、まだ花椒が口の中に残っていて「これから試飲なのに失敗した〜」って思ってた(苦笑)。でも、飲んでみると花椒の爽やかな残り香がほのかに戻ってきた。とりわけ2019年は花椒とうまく調和していて、いい感じに味わいがふくらんだのに驚いた。
激辛料理に合わせるのは無理でもスパイスを生かしたひとクセある料理とも合うのかもと思ったくらい。

小森谷:

伊藤:

ニンニクなど食欲をそそる風味にもしっかり寄り添える。僕はアヒージョやペペロンチーノなんかと合わせたい。
相性良さそうな料理をあげていくといろいろ出てくるね。なにげにそうとう懐が深い酒なんだな。

僕は居酒屋のツマミで考えてみました。2021年はあん肝ポン酢、2020年はいぶりがっこや奈良漬け、2019年は塩辛という感じ。
酸味、乳酸、コクといったヴィンテージごとの個性に合わせていくイメージですね。

橋本:

大野:

抜栓してから1時間ほど経つけど、2019年が最初よりおいしくなってる!
第一印象では熱燗のイメージがなかったけど、40℃くらいのぬる燗であれば味が崩れることなくおいしいかもしれない。

2021年は冷やがおすすめだね。甘みと酸味の爽やかさが特徴だから。
この2021年を来年、再来年と寝かせたら、どれくらい味が変化するか試してみたくなるね。

小森谷:

銘柄の選定や、メニュー作成についてなんでも相談できる!

いかがでしたでしょうか。味やブランドが持つキャラクターによって客層や利用シーンが異なる日本酒は、価格だけで判断しづらいところ。カクヤスではエリアごとに専任の営業スタッフがいて、業態や客層を熟知したうえで最適な日本酒をご提案しています。また日本酒の品揃えも拡大中ですので、アルコールメニューにお悩みの飲食店は一度カクヤスに相談してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

さとう木誉(きよし)

外食ライター
都内在住。繁盛店取材だけでなく経営マネジメントに関する取材活動を中心とする。「月刊食堂」「外食レストラン新聞」「外食図鑑」といった専門媒体の他、食品商社や外食コンサルタント等の宣伝企画にも携わる。
好きな酒は熱燗。好きなツマミはガリ〆さば。


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