飲食店開業に必要な資格・手続き・届け出とは〔飲食店開業マニュアル〕
いざ飲食店を始めようと思っても、必ず必要な資格や手続き、届け出は何があって、どこでどうすれば良いのか全てを把握できているか不安になるもの。
そこで必ず必要なもの、業態や提供内容によって必要なものなどを網羅してご案内いたします。
目次
- 飲食店開業に必要な資格
食品衛生責任者
防火管理者 - 飲食店開業に必要な届け出
食品営業許可申請【保健所/必須】
防火・防災管理者選任届出書【消防署/収容人数30名以上の店舗は必須】
防火対象設備使用開始届【消防署/必要か確認】
火を使用する設備等の設置届【消防署/必要か確認】
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書【警察署/事業内容により必須】
風俗営業許可申請【警察署/事業内容により必須】
菓子製造業許可申請【保健所/事業内容により必須】
酒類の販売業免許の申請【税務署/事業内容により必須】
個人事業の開業届出・廃業届出書【税務署/事業内容により必須】
労災保険の加入手続き【労働基準監督署/従業員を雇用する際は必須】
雇用保険の加入手続き【公共職業安定所/従業員(条件あり)を雇用する際は必須】
社会保険の加入手続き【社会保険事務所/法人は必須、個人事業主は任意】
飲食店開業に必要な資格
飲食店開業の際に必ず必要な資格は実は2つだけ。「食品衛生責任者」と「防火管理者(店舗の収容人数が30名未満の場合は不要)」です。
よく必ず必要だと思われがちなのが「調理師免許」。持っていた方が良い資格ではありますが、それがなければ飲食店を開業してはいけないという決まりはありません。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは
食品の衛生管理がきちんとできることを証明する資格です。各店舗に取得している人が必ず一人は必要です。しかし資格者が経営者や店長でなくてもよく、従業員で常雇用の人であれば構いません。一人で何店もの掛け持ちは出来ませんので、複数店舗を経営する予定があるならば、店舗数分の資格者が必要になります。飲食店開業時には保健所へ食品衛生責任者の届け出(食品営業許可申請)が必要です。また食品衛生責任者と食品衛生管理者は違いますので注意しましょう。
食品衛生責任者の資格は飲食店に限らず、食品の製造や加工を行うなど食品の衛生管理が必要な事業を行う場合に必要なため、キッチンカーやゴーストレストランなど店内で飲食しない業態でも必ず必要です。
食品衛生責任者取得方法
食品衛生責任者になるには学歴などに関係なく、各都道府県で実施している養成講習会を受講すれば資格を取得することができます。しかし細かい要項は自治体により変わってきますので、詳しくは各自治体の養成講習会受講資格要件をお確かめください。
一例として東京都の場合は、
年齢17歳以上ならばどなたでも受講できますが現役の高校生は受講できません。また、外国人の方は、日本語が理解でき、在留カードまたは特別永住者証明書をお持ちの方に限ります。なお、住所地、勤務地、従事経験の有無、学歴等は問いません。
出展:「養成講習会 Q&A よくある質問」一般社団法人東京都食品衛生協会
となっています。
講習会の受講料は10,000円程度(自治体によって違います)、講習内容は衛生法規2時間、公衆衛生学1時間、食品衛生学3時間(テスト含む)の計6時間で、1日ですべての科目の講習が行われます。テストもきちんと講習の内容を聞いていればわかる確認テストのようなものですから、事前勉強などは不要です。
また、栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を持っている方は、講習会を受けなくても食品衛生責任者になることができます。
食品衛生責任者養成講習会について
食品衛生責任者養成講習は、各都道府県にある食品衛生協会などで開催しています。定員が決まっており、すぐ満席になる人気の講習会になりますので、開業ギリギリではなく事前に余裕を持って資格を取得しておきましょう。
講習会の日程、受講方法など詳しい内容は、各自治体のウェブサイトでご確認ください。
参考
全 国 | 食品衛生協会一覧 | 公益社団法人日本食品衛生協会 |
東京都 | 食品衛生責任者養成講習会 | 一般社団法人東京都食品衛生協会 |
埼玉県 | 食品衛生責任者 講習会 | 一般社団法人埼玉県食品衛生協会 |
埼玉県 | 食品衛生責任者養成講習会 | 一般社団法人さいたま市食品衛生協会 |
千葉県 | 集合型食品衛生責任者養成講習会のお知らせ | 公益社団法人千葉県食品衛生協会 |
神奈川県 | 食品衛生責任者養成講習会開催のお知らせ | 公益社団法人神奈川県食品衛生協会 |
神奈川県 | 食品衛生責任者養成講習会 | 一般社団法人横浜市食品衛生協会 |
神奈川県 | 食品衛生責任者養成講習会 | 一般社団法人川崎市食品衛生協会 |
大阪府 | 食品衛生責任者養成講習会 | 公益社団法人大阪食品衛生協会 |
食品衛生責任者資格について下記記事で詳しく解説しています。
飲食店の営業許可に必要な食品衛生責任者になるには?資格の取り方を解説
食品衛生責任者資格の概要や資格の取り方、食品衛生責任者資格に関するよくある質問と、その答えなどをご紹介します。
スムーズな資格取得にぜひお役立てください。
防火管理者
防火管理者とは
飲食店に限らず、多数の人が出入り、勤務、居住する建物の「火災等による被害」を防止するための責任者になる資格です。ただし店舗の収容人員が30人未満の場合は不要です。
防火管理者には「甲種」と「乙種」の2種類があり、延べ床面積が300㎠以上の場合は「甲種防火管理者」、300㎠未満の場合は「乙種防火管理者」が必要です。防火管理者と防災管理者は違いますので注意しましょう。
防火管理者取得方法
防火管理者になるには、開業する店舗の所在地を管轄する消防署などが実施している講習会を受講すれば、資格を取得することができます。講習時間は通常甲種が約10時間(2日間講習)、乙種は約5時間(1日講習)で、甲種乙種ともに最終科目終了後に「効果測定」の試験が行われます。
防火管理者資格を取得すると修了証が発行され、防火管理者として選任されることができます。修了証を授与されただけではなく、消防署に「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出する必要があります。
防火管理講習について
防火管理講習は、都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長、総務大臣登録講習機関(一般財団法人日本防火・防災協会)が行うこととされ、講習修了資格は全国共通です。自治体の消防長が行っている地域(東京都、鳥取県、岐阜県内や千葉市、市川市、横浜市、大阪市など)以外は一般財団法人日本防火・防災協会が主催しています。講習を主催する実施者によって受講申込方法、受講料などが異なりますので開業する店舗がある自治体の消防本部にご確認ください。
参考
全 国 | 防火・防災管理講習 | 一般財団法人日本防火・防災協会 |
東京都 | 防火・防災管理講習 | 東京消防庁 |
埼玉県 | 防火管理・防災管理講習 | 公益社団法人さいたま市防火安全協会 |
千葉県千葉市 | 防火管理講習等のご案内 | 公益社団法人千葉県食品衛生協会 |
神奈川県横浜市 | 防火・防災管理・自衛消防業務講習のご案内 | 横浜市消防局予防部予防課 |
大阪府大阪市 | 防火・防災管理等講習のご案内 | 一般社団法人大阪市防災管理協会 |
飲食店開業に必要な届け出
飲食店開業の際に必要な資格は2つだけでしたが、これらを取得すれば開業ができるわけではありません。開業までに意外と多くの許可や届け出が必要となります。最低限必要な手続きをまとめました。
食品営業許可申請 【保健所/必須】
飲食店を開業する際には必ず保健所の許可が必要です。店舗の所在地を管轄する保健所に「食品営業許可申請」を行い許可を取りましょう。
許可は「飲食店営業許可」と「喫茶店営業許可」の2種類がありますが、喫茶店営業の許可だけですと、調理が必要な食事やアルコール飲料の提供はできません。申請には必ず食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)が必要です。その他、申請に必要な書類などは各保健所によって変わってきますので、必ず事前に管轄の保健所に確認しましょう。
遅くとも店舗完成予定日の10日ほど前までには必要書類を保健所に提出し、営業許可書の交付を受けてください。申請後に店舗が要件に合致しているか、保健所の担当者による施設基準適合確認があります。保健所の検査項目についてはコチラをご参考ください。営業許可書の交付までには数日かかりますので開店日が決まっている場合は余裕を持って申請しましょう。
【Point】
- 事前に相談して進めたほうが安心して手続きを進められます。
- 食品衛生責任者の資格があるか確認しましょう。
- 居抜き店舗であっても、あらたに営業許可が必要です。
- 申請は余裕を持って行いましょう。
- 営業許可書交付前には食事、飲み物の提供などはできません。
参考:「保健所管轄区域案内」厚生労働省
防火・防災管理者選任届出書 【消防署/収容人数30名以上の店舗は必須】
収容人数(店内の従業員数+お店の客数)が30名を超える店舗に必要です。消防法第8条に基づき、飲食店経営者は防火管理者を定め、消防署に「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出する必要があります。各自治体の消防署によって内容、書式が異なるため、店舗の所在地を管轄する消防署のウェブサイトを確認しましょう。
【Point】
- 店舗の収容人数を確認しましょう。
- 防火管理者の資格があるか確認しましょう。
- 営業開始までに届け出が必要です。
参考:「各消防署・方面本部ホームページ」東京消防庁
防火対象設備使用開始届 【消防署/必要か確認】
建物や建物の一部を新たに使用し始める場合「防火対象設備使用開始届」が必要です。また、工事を行い店舗の修繕や間取りの変更等をする場合には、工事開始日の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」も必要になります。
【Point】
- 内装業者が届ける場合が多いので、内装業者または管轄の消防署に届け出が必要か問い合わせましょう。
- 使用開始の7日前までに届け出が必要です。
火を使用する設備等の設置届 【消防署/必要か確認】
火を使用する設備や、使用する際に火災発生の恐れがある設備を設置する場合は「火を使用する設備等の設置届」を管轄の消防署に届け出をしなければいけません。
主に厨房設備などが対象に当たりますが、こまかい規程は消防署によって違いますので店舗の所在地を管轄する消防署へ確認しましょう。
【Point】
- 店舗の所在地を管轄する消防署に確認しましょう。
- 設備設置前までに届け出が必要です。
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書 【警察署/事業内容により必須】
深夜0時以降も営業し、お酒の提供をする場合には店舗の所在地を管轄する警察署へ届け出が必要です。食事のみの提供で酒類の提供を全くしない場合は届け出は必要ありません。
【Point】
- 営業開始の10日前までに届け出が必要です。
参考:「深夜酒類提供飲食店営業(様式一覧)」警視庁
風俗営業許可申請 【警察署/事業内容により必須】
お店でお客様への接待営業を行う場合には、店舗の所在地を管轄する警察署に風俗営業許可の申請をしなくてはいけません。申請が必要な飲食店とは、風営法で以下のように定められています。
風営法第2条第1項第1号
キヤバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
「接待」とはどういう行為なのかがポイントになってきます。お客様の隣でお酒を飲んでお相手をする行為だけでなく、お客様とカラオケを歌ったり、お客様と一緒にゲームをする行為も当てはまります。
風俗営業を行うにあたっては、店舗の内部構造・設備に関しても細かい決まりがありますので、事前に警察署に確認をして進めていくのが無難です。基本的に、風俗営業は深夜の営業を禁止としています(風営法第13条)。ですので、風俗営業許可と深夜営業の届け出の両方を一緒に申請することはできません。(ここでいう深夜とは「午前0時~6時」を指します(都道府県の条例により特別に定める場合はこれに限りません)。)
【Point】
- 営業開始の約2ヵ月前までに届け出が必要です。
- 申請に時間がかかるので余裕を持って申請しましょう。
- 風俗営業許可と深夜営業の届け出の両方を一緒に申請することはできません。
参考:「風俗営業、特定遊興飲食店営業(様式一覧)」警視庁
菓子製造業許可申請 【保健所/事業内容により必須】
店内で食事するものとして提供するだけでは必要ありませんが、店内で製造したパン、ケーキ、焼き菓子、餅菓子、飴菓子などをテイクアウト販売する場合は保健所へ許可申請が必要です。
【Point】
- 施設基準に合致しているかなど必ず保健所に事前相談しましょう。
- 営業開始の15日前までに届け出が必要です。
- 許可書交付前に販売はできません。
酒類の販売業免許の申請 【税務署/事業内容により必須】
店内でお酒を提供する以外に、酒類を販売する場合「酒類販売業免許」が必要です。店舗の所在地を管轄する税務署へ申請し、免許を取得しましょう。
【Point】
- 飲み残した酒類をお客様が持ち帰る行為も「酒類販売」にあたるので免許が必要です。
- ボトルの持ち帰りも含めて「酒類を販売」してしまうと酒税法違反になり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがあります(酒税法第54条、第56条)。
- 申請から免許の付与までおおよそ2〜3ヵ月かかります。
個人事業の開業届出・廃業届出書 【税務署/事業内容により必須】
法人ではなく個人事業主として開業する際に必ず必要になります。納税地を管轄する税務署長に提出してください。開業届を出さないと確定申告の際に青色申告ができず、白色申告で申告を行うことになります。
【Point】
労災保険の加入手続き 【労働基準監督署/従業員を雇用する際は必須】
従業員が就業中(通勤中)にケガ等をしてしまった際に治療費を全額支給してくれる保険です。雇用する従業員が正社員だけではなくアルバイトやパートなど、雇用形態を問わず必ず届け出が必要です。店舗の所在地を管轄する労働基準監督署で手続きをします。
【Point】
- 雇用日の翌日から10日以内に届け出が必要です。
- 従業員を雇用する際は必ず届け出が必要です。
参考:「東京の労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧」東京労働局
参考:「全国労働基準監督署の所在案内」厚生労働省
雇用保険の加入手続き 【公共職業安定所/従業員(条件あり)を雇用する際は必須】
雇用する従業員が「1週間の労働時間が20時間以上ある」かつ「31日以上継続して雇用する」ことが見込まれる場合に必要です。店舗の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)で手続きをします。
【Point】
社会保険の加入手続き 【社会保険事務所/法人は必須、個人事業主は任意】
社会保険には「健康保険」「厚生年金」があります。法人登記をする場合はたとえ従業員が一人もいなくても社会保険への加入は必須になります。個人事業主の場合は従業員を何人雇用しようが加入は任意になります。店舗の所在地を管轄する年金事務所で手続きをします。
【Point】
- 個人事業主の場合、従業員を何人雇用しようが社会保険の加入義務はない。
- 法人事業主の場合、従業員がいなくても加入義務がある。
参考:「全国の年金事務所等の検索」日本年金機構
まとめ
飲食店開業までは事務的手続きも多い事がわかったかと思います。手続きには時間がかかるものもありますので、開業まで余裕を持って申請することが大切です。また、法人として飲食店を開業する場合は「法人設立届出書」など他にも必要な届け出があります。個人経営にするか、法人経営にするか、それぞれメリットとデメリットがありますので検討が必要です。
この記事を書いた人
カクヤス編集部
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