レモンサワー専門店の差別化戦略 -料飲店トレンドと繁盛店事例 vol.13-

Vol.13は「レモンサワー専門店の差別化戦略」。“若者の酒離れ”が飲食業界の課題に挙げられて久しいですが、ここ数年で例外的に消費量を伸ばし続けているお酒がレモンサワー。2017年には「外食アワード」の外食キーワードに選出、2018年には全国7都市でレモンサワーに特化したイベントが開催されるなど、ハイボールに続く定番アルコール飲料として、地位を確立しつつあります。都内では、こだわりのレモンサワーを提供する「レモンサワー専門店」まで続々とオープン。

今回はその中でも特に独自路線を進む一軒、「瀬戸内レモンサワー専門店 go-go」を取り上げます。

瀬戸内レモンサワー専門店 go-go (東京・赤坂)

東京メトロ赤坂駅から徒歩僅か30秒、一ツ木通りから1本入った路地裏に店を構える「瀬戸内レモンサワー専門店 go-go(ゴゴ)」は、2018年10月開店。国内各所で地域活性事業などをおこなう「株式会社未来づくりカンパニー」が運営する、レモンサワーの専門店だ。

レモンサワーに使用するレモンは、店名通り、広島県の契約農園から仕入れた瀬戸内産レモンに限定。外国産の輸入レモンとは異なり、防腐剤・カビ防止剤・ワックスといったポストハーベスト農薬は一切不使用で、皮ごと食べられる安心安全な国産レモンにこだわっている。

近隣で働くサラリーマンとOLがメインの客層だが、最近ではインターネット上の口コミを見て訪れる20代女性の来店客も増えており、木曜や金曜の夜は予約を取らないと入れないほどの人気ぶりだ。月間来店客数は700~800人、客層の男女比は4:6。

レモン色の壁と木目基調のスタイリッシュな内装の店内は、カウンター席と2名用テーブル席、スタンディングのBOX席を合わせて全38席。

カウンターバックには、「SAZAN(サザン) 焼酎」「ウィルキンソン ジン」「ウィルキンソン ウォッカ」の3種類のベース酒に漬け込まれた、レモンの外皮と果肉入りのガラス瓶がズラリと並ぶ。


レモンサワーは、「定番のドライレモン」「特製!塩レモン」「はちみつレモン」「辛口ジンジャーレモン」の4種類の定番サワーに、季節限定サワーを加えた5種類を提供しており、ベース酒はお好みで選ぶことができるため、計15通りの味を楽しむことが可能だ。

もっともベーシックな組み合わせだというのが、「定番のドライレモン」(税抜 700円)のウォッカベース。瀬戸内産レモンのマイルドな酸味としっかりとした旨味が感じられつつ、すっきりとしたクリアな飲み口で、乾杯の1杯に相応しい。

この美味しさの秘密は、時間と手間を惜しまない丹念な仕込みにある。

苦味成分が集中する、レモンの内皮の白い部分(ペクチン)を手作業で極限まで取り除き、大根の桂むきのごとく薄く薄く削いだ外皮と、果肉と果汁をベース酒に30日間漬け込むことで、熟成した深みのある味わいを出しているのだ。

同時に、目が覚めるような強炭酸であることも、同店のレモンサワーの特徴。独自改造したソーダストリームで作った炭酸水を一旦冷却、提供時に再度炭酸を入れなおす “2度入れ” で、他にはないパチパチ感を実現している。

実は開店当初は炭酸の度合いも、「弱炭酸」「中炭酸」「強炭酸」の3種類から選べるシステムだったが、弱炭酸を選ぶ客がほぼ皆無だったそうで、自店の “ウリ” として強炭酸に一本化したとのこと。

その強炭酸をより爽快に感じられる組み合わせが、「特製!塩レモン」(税抜 700円)のジンベース。自家製の塩レモンの塩気が味を引き締め、そこに「ウィルキンソン ジン」ならではのシトラスを思わせる香りが加わって、食事とも相性抜群な仕上がりだ。

ちなみに塩レモンは、ピーラーで糸のように細くカットした外皮を、果汁と厳選した塩とともに漬け込んで作っている。このカット作業に至るまで、すべて手作業だというから驚きを禁じ得ない。

若者や女性に特に好評な組み合わせが、「はちみつレモン」(税抜 700円)の焼酎ベース。はちみつのほんのりとした甘味が優しい、クセのない美味しさで、レモンそのものの味わいもよく分かる。  

さらに果汁をプラスしたい場合には、なんと「追いレモン」が無料。生のフレッシュレモンが、お通し扱いでチャージ代金(500円)に含まれており、追加で好きなだけ絞って頂くことが可能なのだ。素材の味をダイレクトに感じたいなら、かぶりついてみてもいい。

「飲み手を選ばず、料理とも合う “万能さ” がレモンサワーの魅力です。色々と飲み比べて頂けるように、ベース酒との組み合わせによる複数のバリエーションを用意しつつ、極端な味にすることも避けつつ、メニュー開発をおこないました」と語るのは、店長の鈴木恭介(すずき・きょうすけ)さん。

原料のレモンは10日間で40kgを消費、レモンサワーは1ヶ月で2,000杯以上を売り上げている。

また、「瀬戸内レモンはブランドとしての知名度は高いですが、果汁をごく少量加えただけの商品が多かったり、まだまだ本当の美味しさが伝わっていません。ただ単に飲むだけではなく、お客様に背景にあるストーリーまで楽しんでもらうことで、瀬戸内産レモンの魅力を広めたい」とも。

そして、料理長の小久保祐奈(こくぼ・ゆな)さんが腕をふるう一品料理の数々も、ドリンクが主役の料飲店とは思えないクオリティの高さである。

大ぶりにカットした国産鶏もも肉をカラッと揚げた「go-go特製唐あげ」(税抜 1,000円)は、レモン汁に漬けて作ったキュウリのピクルス入りの自家製タルタルソースと、甘辛な味わいでレモンサワーがすすむスイートチリソース、レモンクリーミードレッシングをかけたミニサラダが添えられており、まさに同店ならではの一皿。

もちろん、唐揚げに追いレモンを絞って頂くのが料理長のオススメだ。

気温や湿度を考慮しながら毎日店内で燻しているという 「自家製!燻製盛り合せ」(税抜 1,500円) も、レモンサワーの繊細な風味を打ち消さないよう、燻製を強くかけすぎず、上品な味わいに仕上げている。なお前述のタルタルソースは、唐あげの注文が入ってから、こちらの燻製煮玉子を刻んで作っているそう。  

分かりやすく一貫したコンセプトとオリジナリティを持ち、レモンサワーだけではなく料理まで手作りを徹底することで商品力を強化し、豊富な商品説明に加えて、仕入れ先の農園を紹介するPOPを置くなど、情報による付加価値を追加

こうして見ると、店舗ブランディングにおける重要なポイントを確実に抑えており、同店が開店1年未満にも関わらず、名店がひしめく赤坂で一気に繁盛店となったのも頷けるところ。たとえ昨今のレモンサワーブームが終焉を迎えたとしても、流行に左右されない価値を生み出せているこの店には、きっとどこ吹く風ではないか。

「未来づくりカンパニー」飲食事業部プロデューサーの前田淳(まえだ・じゅん)さん曰く、最終的な着地点としては、広島県の地域活性化に繋げることが目標なのだという。「瀬戸内レモンサワー専門店go-goを通して、広島の盛り上がりに貢献したい」と力を込める。

今後、都内での店舗展開も検討しているそうだ。

店  名

瀬戸内レモンサワー専門店 go-go

住  所

東京都港区赤坂3-13-12 赤坂料飲会館1F

運  営

株式会社未来づくりカンパニー

電話番号

03-3584-1125

営業時間

月~金 17:30~23:50 (L.O 23:30)
土 17:00~22:30 (L.O 22:00)

定 休 日

日・祝

坪数・席数

13坪・38席

禁煙・喫煙

全席禁煙

客 単 価

3,000円

開 業 日

2018年10月

公式サイト

http://www.go-go-akasaka.com/

この記事を書いた人

秋山シュン

Webライター/ブロガー/役者/芸人。食べ歩いた料飲店は4,000軒超。2007年に立ち上げた個人サイト「シグナル・ロッソ。」での記事紹介により、人気店となった料飲店は数知れず。サブカルチャーにも造詣が深く、2019年より秋葉原の事業組織「AKIBA観光協議会」公認ライターを務める。

グルメレポートを中心とした地域情報発信メディア「シグナル・ロッソ。」

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