差別化がファンを生む! 個性が光るご当地店 -料飲店トレンドと繁盛店事例 vol.7-

観光地で営業する料飲店は、どこもアプローチが似てしまいがち。観光客を相手にする以上、その土地の名産品を使ったメニューやご当地グルメを提供することが、ほぼ宿命づけられているためです。では、その中でどのように他店と差別化を図り、集客につなげればよいのか。

近年急速に観光地化がすすむ神奈川県横須賀市の「楽島モアイモ食堂」の取り組みをピックアップします。

楽島モアイモ食堂 (神奈川県・横須賀)

京急横須賀中央駅から徒歩約7分、横須賀の中心市街地に店を構えるダイニングレストラン&バー「楽島モアイモ食堂」は、2010年8月開店。

港に軍艦が浮かび、商店街に英語の看板が立ち並ぶ、異国情緒あふれる横須賀の街で、観光客からも、地元民からも、そして米海軍基地の米兵たちからも愛されている人気店だ。

オーナー店長の佐久間睦(さくま・むつみ)さんは、市内のハンバーガーショップやライブハウスバーでの勤務経験を経て、1998年6月に前身となる「飲食島imo(イモ)」を開店、移転リニューアルする形で「楽島モアイモ食堂」をオープンしており、同地での飲食歴は20年以上。

「横須賀に無さそうなお店」を最大のテーマに掲げ、徹底的にオリジナリティを追求している。

店舗は築50年以上の商店兼住居をリノベーションしたもので、コストの大幅削減と、「内装の細部までこだわり抜く」ために業者を入れず、スタッフのみで全面改装をおこなった。


古民家ならではの趣と温かみをそのまま活かして、家具やインテリアにも木材を多用した、南国リゾートのコテージを連想させるリラクシングな空間となっている。

店内は1Fと2Fに分かれており、全48席だ。

2Fが団体客・グループの利用を想定しているのに対して、1Fは常連客・お一人様の利用に対応。


オープンキッチンに面したカウンター席にすることで、観光で訪れた一見客でも “置いてけぼり” にならぬよう、スタッフ側からコミュニケーションをとりやすい環境 を作った。

そして、1Fの最奥に キッズルーム付きの個室を備えているのが、「楽島モアイモ食堂」の最大の特徴といえるだろう。


入口がベビーカーを引いたまま入れるようになっていたり、離乳食を温められる電子レンジが設置されていたりと、自身の育児経験にもとづいた実用的なつくりで、小さな子供連れのファミリーや、ママ会などのニーズに対応。ひと月の半分以上が予約で埋まる好評だ。

観光客の約7割を男性が占める横須賀の地において、客層の男女比が4:6 という、女性の高い支持を得ることに成功している。

また、メニューの表示価格は分かりやすさを重視して、税込み価格に統一。テーブルチャージやお通しを設けていないのは、商慣習が異なる米兵たちの利便性を考慮して。同じく、クレジットカードは5大国際ブランドが利用可能。「米兵さんも含めて、地元民が通ってくれるお店でないと、観光客も来てくれない」との考えから、客目線のサービスを充実させている。

2020年の東京オリンピック開催に合わせて、電子マネーとスマホ決済の導入も検討中とのこと。

もちろん、同店の差別化戦略は飲食物そのものにも見て取れる。約40種類のフードメニューの中でのイチオシは、創作タコス 「アジスカタコス」(税込500円)。地元産のアジの唐揚げに甘酢ソースをかけて、地野菜とスナック菓子とともにトルティーヤ生地で包んだ一品だ。

在日アメリカ人の多い横須賀という土地柄、「タコス」自体は市内のそこかしこで販売されているポピュラーな軽食だが、そこに和風アレンジを加えることでターゲット層の拡大を狙った。


肉ではなく魚を使用する、ヘルシーかつ栄養バランスの良い食材構成で、女性にアピール。地産の食材をメインに使用し、ネーミングにも「ヨコスカ」の「スカ」を入れて、観光客へとアピール。税込み500円という気軽な価格設定で、地元民にもアピール。

2015年に現地のグルメコンテストでグランプリに輝いたこともあり、発売以降、不動の人気商品となっている。

自家製サルサソースが味の決め手だという 「タコライス」(税込780円)は、タコミートにひと工夫が。


一般的なタコミートは牛肉か豚肉、もしくは合い挽き肉で作るところ、こちらではグリルした鶏肉を刻んだものを使用。ボリューム満点で食べ応えのある、男性向きの一品に仕上げている。

ご当地グルメ「ヨコスカネイビーバーガー」(レギュラーサイズ:税込1,500円、クォーターサイズ:税込780円)も、試行錯誤を重ねて開発した、こだわりの一品だ。

「ヨコスカネイビーバーガー」とは、横須賀市の観光振興策のひとつとして、2009年にスタートしたご当地グルメブランド。

市から正式に認定された料飲店(※2019年現在で20店舗弱)のみが販売できるご当地バーガーで、「米軍基地内で昔から食べられている伝統的なハンバーガー」をコンセプトにしているため、パティは必ず牛肉100%であること、かつ重量が170g以上であること、トマトとオニオンとレタスを必ず挟むこと、他に挟んでもよい具はチーズやベーコンなどの指定された4~5個だけ、といった厳しいルールがあり、他店との差別化が非常に難しい。

派手なビジュアルやボリューム感を出す店舗が多い中で、同店は「バンズを外注せずに自家製にする」という手段をとった。無農薬の国産小麦粉を使用し、玉子もショートニングも使わないオーガニックな味わいにすることで、コンセプトの軸をとらえつつも、女性や年配の方にも喜ばれる「ヨコスカネイビーバーガー」を開発。


ひと口に「観光客」といっても、性別や年齢などでニーズが様々であることに着目し、「アジスカタコス」と同じく、ターゲット層の幅を広げることに成功している。競合店が見逃していた「空いている椅子」を狙ったともいえるかもしれない。/p>


約80種類のアルコールメニューは、なるべく周辺の料飲店で取り扱っていない銘柄を中心に仕入れているそうで、10種類以上のオリジナルカクテルも提供。中でもイチオシは「モシーソ」(税込800円)だ。

「モヒート」の日本版をイメージしたカクテルで、ミントの代わりに青じそをふんだんに使用しており、どんな料理とも相性が良い。ユニークなアイディアはもちろんのこと、メニュー表をぱっと開いた瞬間に、字面だけで興味を引けるキャッチーなネーミングが光る。

観光地の料飲店はどうしても歴史を持つ老舗店ばかりが注目されるため、上記のような取り組みだけにとどまらず、グルメイベントに積極的に出店したり、アニメ作品とのコラボレーションをおこなったりと、潜在顧客層に自店舗の存在を発信する努力を怠らず、地道に確実にファンを増やしてきた。

佐久間さんは今以上のオンリーワンな料飲店を目指し続けるといい、「まだまだ意欲は尽きない」と笑顔を見せる。

店  名

楽島モアイモ食堂

住  所

神奈川県横須賀市本町1-1

運  営

佐久間 睦

電話番号

046-827-2051

営業時間

月~土 11:30~24:00(L.O 23:00)
日・祝 11:30~21:00(L.O 20:00)

定 休 日

木曜(※祝日の場合は営業)

坪数・席数

34坪・48席

禁煙・喫煙

昼:全席禁煙(※2Fの一部のみ喫煙)
夜:全席喫煙(※キッズルーム付き個室のみ禁煙)

客 単 価

昼:1,000円~1,500円
夜:2,000円~2,500円

開 業 日

2010年8月

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この記事を書いた人

秋山シュン

Webライター/ブロガー/役者/芸人。食べ歩いた料飲店は4,000軒超。2007年に立ち上げた個人サイト「シグナル・ロッソ。」での記事紹介により、人気店となった料飲店は数知れず。サブカルチャーにも造詣が深く、2019年より秋葉原の事業組織「AKIBA観光協議会」公認ライターを務める。

グルメレポートを中心とした地域情報発信メディア「シグナル・ロッソ。」

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※ 掲載店について、カクヤスとの取引の有無は関係ありません。
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※ 最新の営業状況は店舗にお尋ねください。


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