飲食店開業後の酒類提供には許可や免許が必要?申請方法など知っておくべきこと
飲食店を開業したら、お客様においしいお酒を提供したいと考える方も多いでしょう。
他のドリンクや料理と違って、お酒には年齢制限があります。そのため「飲食店でお酒を提供するためには免許がいるのかな?」「何か特別な許可が必要なのだろうか?」と、疑問に思うかもしれません。
そこで今回は、飲食店で酒類を提供する場合に許可が必要なのかをケースごとに解説します。各種許可を得る方法や流れ、申請のポイントも解説しますので、飲食店の開業を控えている方はぜひ参考にしてください。
飲食店での酒類提供には許可や免許が必要?
飲食店で酒類を提供するに際に許可や免許がいるかどうかは、ケースによって異なります。許可・免許が不要なケース、必要なケースを見ていきましょう。
原則として許可を得る必要はない
飲食店を営業するために「飲食店営業許可」は必要ですが、その許可があれば、通常の時間帯(午前0時まで)での酒類提供に対して、特別な許可を得る必要はありません。
ただし、例外として以下に該当する場合には、酒類提供の前に許可や免許が必要になります。
- テイクアウトで酒類を販売する場合
- 深夜営業(0時以降)で酒類を提供する場合
- 接待サービスを主体とする場合
これらの例外について、以下の項で見ていきましょう。
テイクアウトで酒類を販売する場合:免許が必要
お酒をテイクアウトでお客様に販売したい場合、飲食店営業許可とは別に免許が必要です。
お酒を販売する免許は「酒類販売業免許」と呼ばれます。酒類販売業免許には「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」の2つがあり、一般のお客様に対してお酒を売るときに必要なのは「酒類小売業免許」です。
なお、酒類販売の免許は、販売する場所ごとに取得する必要があります。この免許を取得せずにお酒を販売してしまうと酒税法違反にあたりますので、注意しましょう。
深夜営業で酒類を提供する場合:許可が必要
深夜0時から日の出までの時間に酒類を提供する場合には、「深夜酒類提供飲食店営業」の許可を得る必要があります。
ただし、この許可が必要になるのは、居酒屋やバーのように、お酒の提供がおもな営業目的となる店のみです。
例えば、ラーメン店やファミリーレストランなど、お酒の提供がおもな目的でない飲食店では、深夜酒類提供飲食店営業の許可がなくても、深夜0時以降に酒類を提供できます。
接待サービスを主体とする場合:許可が必要
接待サービスをメインのサービス内容とするお店では、「風俗営業」の許可が必要です。例えば、スナック、パブ、キャバクラ、料亭などのお店が接待をメインとするお店に該当します。
なお、バーのようにカウンター越しでお酒を提供し、世間話程度の会話を行なうだけなら当てはまりません。
どのような行為が接待にあたるのかは、記事の最後の章「飲食店の酒類提供許可に関する注意点」で解説しています。ご自身の開業予定のお店が「接待メインのお店」といえるかわからない方は、併せてチェックしてみてください。
また、風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業許可は同時に取得できません。すでに深夜酒類提供飲食店営業開始の届け出を出しているお店では、接待サービスの提供が禁じられているので注意しましょう。
飲食店の酒類提供に関連する許可(1)酒類小売業免許
ここからは許可・免許ごとに、取得の流れやコツを解説します。まずは、酒類小売業免許について見ていきましょう。
原則:飲食店には酒類小売業免許が交付されない
酒税法第10条9号によって、飲食店内での酒類販売は原則禁止されていますが、これは、酒類の仕入れ価格が飲食提供用と小売販売用で異なるためです。
飲食提供用よりも、小売販売用のほうが安価に設定されています。この状況で、飲食店が小売販売用の安い価格で酒類を仕入れるようになると不当な競争が起き、一般小売販売業者の営業が困難になるおそれがあるのです。
それを防ぐために、飲食店の酒類販売を原則禁止としています。
例外:飲食店営業者が酒類小売業免許を得る方法
飲食店営業者は、酒類小売業免許を得られないというわけではありません。在庫の保管・陳列場所、会計の場所、仕入れ・記帳などを飲食提供用と小売販売用で明確に分けると、飲食店と酒類販売場を併設させることも可能です。
保管場所 | 在庫はそれぞれ別の場所に保管する。どちらかの在庫が足りなくなった場合、一方に移動させるのではなく、伝票上返品扱いとして購入しなおす必要がある。 |
陳列場所 | 壁や扉で仕切る、フロアを変えるなど。 |
会計場所 | レジを分ける。レジを分けていても、小売用商品の陳列場所から小売用レジまでに飲食スペースを通り抜けるような構造はNG。 |
仕入れ | 酒類販売用の酒類は酒類卸売業者から仕入れ、飲食提供用の酒類は一般酒類小売業免許業者から仕入れる。両方の免許を持っている同一の業者から仕入れる場合も、納品伝票は別々にする。 |
記帳 | 帳簿を分けるのはもちろん、記帳するための場所もそれぞれ別にする。例えば、閉店後の客席で小売分の記帳をするのはNG。 |
酒類小売業免許を受けるまでの流れ
- 上記のとおり、免許を得られるような環境を用意する
- 下記の書類を用意する
(ア)酒類販売業免許申請書
(イ)酒類販売場免許の免許要件誓約書
(ウ)申請者の履歴書
(エ)定款の写し(申請者が法人の場合)
(オ)地方税の納税証明書
(カ)契約書などの写し(土地・建物・設備の賃貸借契約書の写し、建物未建築の場合は請負契約書の写しなど)
(キ)最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
(ク)土地および建物の登記事項証明書
(ケ)一般酒類小売業免許申請書チェック表 - 販売場の所在地を管轄する税務署に書類を提出する
- 審査に通れば、登録免許税を納付して免許を受ける
なお、飲食店と小売店を併設する場合、これとは別に飲食店自体の営業許可も取得する必要があります。
酒類小売業免許を受けるためのコツ
酒類小売業免許を受けるためには、事前相談に出向いて酒類指導官にアドバイスを受けることが大切です。特に新規出店の場合、内装の構造をしっかり計画することが重要になりますので、事前に図面を持って相談に行くようにしましょう。
飲食店の酒類提供に関連する許可(2)深夜酒類提供飲食店営業許可
続いて、深夜酒類提供飲食店営業許可について解説します。
許可を得るための要件
営業所の設備は、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 客室内部に見通しを妨げる設備がないこと
- 客室を複数設ける場合、1室の床面積が9.5平方メートル以上であること
- 営業所内の照度を20ルクス以下としないこと
- 騒音または振動を条例で定める数値以下とすること
- 善良の風俗を害するおそれのある写真やポスター、装飾を設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を設けないこと
また、原則的に以下の用途地域では営業ができません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
加えて、接待サービスの提供は禁止です。
深夜酒類提供飲食店営業許可を得るまでの流れ
- 適切な物件を選び、設備を整える
- まずは飲食店営業許可を得る(保健所に申請する)
- 下記の書類を用意する(地域によって異なる場合あり)
(ア)深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
(イ)営業の方法(営業方法を記載した書類)
(ウ)メニュー表の写し
(エ)営業所周辺の概略図、営業所平面図、営業所求積図、客室等求積図、照明・音響図
(オ)申請者の住民票(本籍記載のもの。外国人の場合は国籍記載のもの。法人の場合は役員全員分が必要)
(カ)飲食店営業許可証の写し
(キ)契約書などの写し(土地・建物・設備の賃貸借契約書の写し、建物未建築の場合は請負契約書の写しなど)
(ク)誓約書(地域による)
(ケ)法人登記簿謄本、法人の定款の写し(法人の場合) - 所轄の警察署に書類を提出する
- 書類が受理されたあと10日後から営業可能
飲食店の酒類提供に関連する許可(3)風俗営業許可
続いて、接待サービスをメインとするお店に必要となる、風俗営業許可について解説します。
許可を得るための要件
風俗営業には、人物に関する要件が定められています。以下の欠格事由に当てはまってしまうと、営業が許可されません。
[欠格事由]
- 成年被後見人か被保佐人または破産者で複権を得ない者
- 1年以上の懲役、もしくは禁錮の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 集団的または常習的に暴力的不法行為などを行なうおそれのある者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤の中毒者
- 風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
- 風俗営業許可の取消処分を受けてから5年を経過していない者
風俗営業は1号から5号まで分かれ、何号に当てはまるかで、設備の要件が変わります。例えば、1号に当てはまるスナック・パブ・キャバクラなどのお店では、以下の要件を満たす必要があります。
- 客室に見通しを妨げる設備がないこと
- 客室を複数設ける場合、1室の床面積が和室9.5平方メートル以上、その他16.5平方メートル以上であること
- 外部から客室が見えないこと
- 善良の風俗を害するおそれのある写真やポスター、装飾を設けないこと
- 客室の出入口に施錠設備を設けないこと
- 営業所内の照度を5ルクス以下としないこと
- 騒音または振動を条例で定める数値以下とすること
また、原則的に以下の用途地域では風俗営業ができません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
さらに、学校や児童福祉施設、図書館、病院のような「保護対象施設」に近い場所では営業することができません。
なお、こういった要件は各都道府県によっても異なりますので、営業所を設ける都道府県の条例を確かめてください。
風俗営業許可を得るまでの流れ
- 適切な物件を選び、設備を整える
- 下記の書類を用意する
(ア)風俗営業許可申請書
(イ)営業の方法(営業方法を記載した書類)
(ウ)営業所の使用に係る書類(賃貸借契約書の写し、営業所の使用承諾書、建物登記簿謄本など)
(エ)営業所の平面図および営業所の周囲の略図
(オ)住民票の写し(本籍記載のもの。外国人の場合は国籍記載のもの。法人の場合は役員全員分が必要)
(カ)人的欠格事由に該当しない旨の誓約書(法人の場合は役員全員分が必要)
(キ)成年被後見人または被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書(法務局で発行。法人の場合は役員全員分が必要)
(ク)市区町村の発行する身分証明書(法人の場合は役員全員分が必要)
(ケ)選任する管理者に係る前記(オ)~(ク)の書面、誠実に業務を行うことを誓約する書面
(コ)管理者の写真2枚
(サ)定款・法人登記簿謄本(法人の場合) - 所轄の警察署に書類を提出する
- 風俗環境浄化協会による調査を受ける
- 許可証が交付されれば営業可能(申請からおよそ55日以内に交付)
なお、食事を提供する場合、飲食店営業許可も別途取得する必要があります。
飲食店の酒類提供許可に関する注意点
飲食店で酒類を提供するにあたっての注意点を2つご紹介します。知識不足で法令違反を犯してしまわないよう、ぜひ一度目を通しておいてください。
「ボトルの残りのお持ち帰り」に注意!
店内でお酒のボトルを開封し、飲食店で味わったのち、残ったらお客様が持ち帰ることもできる、という業態を考えている方もいるかもしれません。
飲食店で開封したボトルの残りをお客様が持ち帰ってしまうと、「酒類を販売した」とみなされます。たとえ、酒類小売業免許を取得していたとしても、「飲食スペースで頼んだお酒の飲み残し」を持ち帰ってもらうことはNGです。
ただし、販売コーナーで買ったものを飲食スペースに持ち込んで味わい、残りを持ち帰るといった形なら、酒類小売業免許の取得で対応できます。「どこで購入するか」は些細な違いのようですが、法律上ははっきり区別されているので、きちんと守るようにしましょう。
「接待サービス」の判定ラインに注意!
飲食店内でのサービスが、どこから「接待」とみなされるのかを具体的に知っておくことも大切です。
接待 | 接待ではない | |
---|---|---|
談笑・お酌 | 特定のお客様のテーブルについて談笑相手となる/特定のお客様のテーブルについて飲食物を提供する | 挨拶や若干の世間話程度の会話/カウンター内やお客様の後方で待機し、飲食物を提供する |
ショー | 個室や区画された場所で、特定少数のお客様がショーを見る形式 | 不特定多数のお客様が一堂に会してショーを楽しむ形式(ホテルのディナーショーなど) |
歌唱 | 特定少数のお客様に対し、歌唱をすすめる・手拍子で盛り上げる・歌唱を褒めるなど | 特定のお客様に限らず、どのお客様にも歌唱をすすめる・手拍子で盛り上げる・歌唱を褒めるなど |
ダンス | 特定のお客様の相手となってダンスをする/身体に接触していなくても、特定のお客様とずっと踊っている | 十分なダンスの技能・知識がある人が、お客様にダンスを教える |
遊戯・競技 | 特定少数のお客様と遊戯・ゲーム・競技を行なう | お客様が一人またはお客様どうしで遊戯・ゲーム・競技を行なうための環境を提供する |
その他 | お客様の口元に飲食物を運ぶ/手を握る/身体を密着させる | お客様の荷物などを預かる/挨拶としての握手や酔ったお客様の介抱など、必要な範囲でお客様の身体に触れる |
接待にあたるかどうかの判定は意外と難しいものです。
しかし、上記の表からもわかるとおり、同じ行為でも、特定少数のお客様のために行なうのかお客様全員のために行なうのかで、接待かどうかが変わります。迷った場合には保健所や役所、あるいはなんでも酒やカクヤスのように開業支援を行なう業者にご相談されることをおすすめします。
まとめ
飲食店での酒類提供には特別な許可が必要ないことが多いですが、場合によって許可や免許が必要になることもあります。まずは、ご自身の業態で、許可や免許が必要になるかどうかを把握しておきましょう。
そして、許可が必要な店を開業する場合、物件探しの時点から要件を満たせるよう意識することが大切です。許可を得られるよう、準備段階の初期から要件をチェックしておいてください。
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