飲食店開業の営業許可について徹底解説|申請方法・費用・更新の有無

「飲食店を開業するときにはどの営業許可が必要なの?」という疑問を抱えている方もいるでしょう。飲食店の業態に応じて、必要な営業許可の種類が異なります。また、食品衛生責任者の資格が必要であり、場合によっては防火管理者の資格が必要になることも。
営業許可を取らずに無許可で営業した場合、罰則が課せられる可能性もあるため、必ず適切な許可証を取得する必要があります。注意点を理解した上で、開業準備を進めることが大切です。

そこで今回の記事では、どのような飲食店に営業許可が必要なのかをお伝えするほか、必要な要件「食品衛生責任者」の資格の概要や営業許可の申請の流れ、必要書類、更新について詳しく解説します。
飲食店を開業したいと思いながらも「営業許可を取るのが大変そう」となかなか前に進めない方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

「営業許可」はすべての飲食店開業に必要

どのようなスタイルの飲食店であれ、すべての飲食店は営業許可が必要です。営業許可はどのようにすれば取れるのか解説します。

飲食店営業許可に必要な要件1. 食品衛生責任者

飲食店の営業許可には、まず食品衛生責任者が必要です。食品衛生責任者の資格の概要と取り方を見ていきましょう。

食品衛生責任者とは?

食品衛生責任者は、飲食店舗を営業する際の食品衛生における責任者の資格のことで、施設ごとに1人の有資格者が必須です。
食品衛生責任者の資格は、食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。また、栄養士・調理師・製菓衛生師などの資格を持っている場合は、講習会の受講は免除となり、申請するだけで取得可能です。

食品衛生責任者の資格取得方法

食品衛生責任者養成講習会は各都道府県の食品衛生協会が実施しており、講習の日程や申し込み方法などの詳細は多くの場合、各団体のホームページで確認できます。見つからない場合は、各都道府県の保健所か食品衛生協会事務所に問い合わせて確認しましょう。

参考:「保健所管轄区域案内」厚生労働省
参考:「食品衛生にかかわる資格」公益社団法人日本食品衛生協会

食品衛生責任者養成講習会の費用は、自治体によって若干差がありますが、1~2万円と考えてください。資格は6時間の講習を受講するだけで取得でき、1日で完了します。
食品衛生責任者の詳細に関しては、ぜひ以下の記事をお読みください。

飲食店の営業許可に必要な食品衛生責任者になるには?資格の取り方を解説

飲食店の営業許可に必要な食品衛生責任者になるには?資格の取り方を解説

食品衛生責任者資格の概要や資格の取り方、食品衛生責任者資格に関するよくある質問と、その答えなどをご紹介します。
スムーズな資格取得にぜひお役立てください。

飲食店営業許可に必要な要件2. 保健所への営業許可申請

食品衛生責任者の資格が取得できたら、保健所へ営業許可を申請します。申請は厚生労働省のホームページからも可能です。パソコンやスマートフォンで提出でき、保健所に行かなくても申請可能なため、利用してもよいでしょう。

参考:「食品衛生申請等システム」厚生労働省

事前相談のうえ申請

保険所への事前の相談は義務ではありませんが、許可がスムーズにおりるように指導してもらったというケースもあるようです。相談して進めたほうが手続きを安心して進められるでしょう。
検査の基準は業態や保健所ごとに異なります。内装工事後に修正が必要になると、コストも時間もかかります。施設や設備に関して不安や疑問があれば、事前に相談しておくことをおすすめします。

申請に必要な書類

申請の際に必要な書類は、次のとおりです。

  • 営業許可申請書
    • 店舗代表者氏名・住所・営業時間・食品衛生責任者氏名などを書きます。保健所の窓口で入手できますが、各保健所のホームページからもダウンロード可能です。
  • 営業施設の大要・配置図
    • お店の設備や面積、配置、客席数、従業員数などを記入します。調理場はメジャーなどを使い、できるだけ正確に調べたものを記入しましょう。裏面には内装の配置平面図を記入します。
  • 場所の見取り図
    • 地図をコピーし、お店の所在地がわかるように印を付ける程度で問題ありません。
  • 食品衛生責任者設置届
    • 食品衛生責任者手帳の写しなどを添えて提出しましょう。調理師免許の場合、免許証を提示します。

さらに、法人として開業する場合は「登記事項証明書」、貯水槽の水や井戸水を使用する場合、「水質検査成績書」も必要になります。状況に応じて用意してください。「水質検査成績書」は管理会社や大家さんが持っていますので、コピーしてもらいます。
なお、深夜0時以降にも営業する場合、警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届」の提出が必要など、業態・営業スタイルによって提出書類が増えるケースもあります。事前相談を通じてできるだけ早い段階で必要書類を把握しておきましょう。
また、これらの書類とは別に、自治体によって金額は異なりますが、申請費用が1万5,000円から2万円ほどかかります。

書類がすべてそろったら、保健所で手続きを行ないます。書類をチェックしてもらい、OKなら手数料を納入し調査日時の調整に入ります。

取得時にかかる費用

営業許可を取得する際には、申請費用が発生します。自治体によって金額は異なりますが、申請費用は1万5,000円から2万円ほどかかります。なお、東京都渋谷区の各業態における申請費用は以下の通りです。

東京都渋谷区の申請費用(2022年8月現在)

  • 飲食店営業:18,300円
  • 飲食店営業(移動・臨時):5,600円
  • 食肉販売業:11,500円
  • 魚介類販売業:11,500円
  • 乳類販売業:11,500円
  • 氷雪製造業:25,200円

これら申請費用は地域によって異なる場合があるため、申請前に該当する地域の申請費用をご確認ください。

施設検査

保健所の担当者と調整して店舗検査日を決定します。施設検査は飲食店の施設が衛生面・安全面で保健所の求める基準に達しているかの確認で、不適格な事項があれば改善のうえ再検査を受ける必要があります。以下が検査のチェックポイントです。

掃除しやすく特に調理場は防火性がある。
調理スペースは掃除しやすく水はけが良い。勾配があるとなお良い。
天井 むき出しの配管などはデザイン性が高いが、保健所によっては注意対象。
更衣室 厨房とは別に着替えのための個室があり、着替えを入れるロッカーなどがある。
換気扇 店内の空気を十分に換気できる。厨房だけでなく客席にもあると良い。
シンク 一槽シンクで食器洗浄機があるか、二槽式で蛇口がありお湯が出るか。地域によっては湯温に必要な基準がある場合も。
厨房 冷凍庫に温度計が付いており、冷蔵庫・冷凍庫・オープンなどの調理器具はすべて厨房におさまっている。
トイレ 従業員数に応じた数が衛生上、問題のない位置に設置されている。また、害虫侵入防止措置がとられており、消毒液を備えた流水式手洗い設備がある。
照明 自然光が入り100ルクス以上の明るさがある。お店全体が明るいことが条件。
手洗い場 規定以上の広さのお客様用と従業員用の手洗い場があり、ハンドソープ・アルコール消毒液が設置されている。
食器棚 食器・グラスはもちろん、スプーン・箸などもすべて収納できる。
ゴミ箱 厨房内に1個以上のフタ付きゴミ箱がある。
害虫対策 ゴキブリなどの害虫類が進入しないよう、換気扇にはシャッター、さらに網戸・排水口の金網などが設置されている。

営業許可書交付

検査で問題がないと保健所から営業許可書が交付され、交付後に営業が開始できます。検査の混み具合など、状況次第で交付までの所要時間が異なる可能性もあるため、開業したい日が決まったら、それに合わせて余裕のあるスケジュールで進めましょう。営業許可書は店舗内の目立つ場所に掲示します。
なお、交付前に営業を開始してしまうと、食品衛生法違反などに該当してしまうリスクがあります。交付と開店日のスケジュール管理には十分注意してください。

また、正式オープン前のプレオープン時にも営業許可証が必要な点に注意が必要です。営業許可証交付前の営業や店内掲示なしの営業は、無許可営業に該当する可能性があります。罰則を受けるとその後2年間営業許可の取得ができないため、絶対にやめましょう。

防火管理者は必要ないのか?

食品衛生管理者と同様に、飲食店の開業に必要になる防火管理者ですが、防火管理者は収容人数が30人以上の飲食店を開く際に選任が必要になります。
防火管理者については以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

飲食店開業時に防火管理者は必要?資格取得方法も併せて解説!

飲食店開業時に防火管理者は必要?資格取得方法も併せて解説!

防火管理者とはどういった資格なのか、どのようなケースで防火管理者が必要なのかを解説しています。防火管理者の資格を取得する方法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

飲食店営業許可の種類と番号とは

飲食店の許可は「喫茶店営業」と「飲食店営業」の2種類に分かれ、許可ごとに番号があります。
カフェのオープンを考えている人は「喫茶店営業」と考えてしまうかもしれませんが、「喫茶店営業」ではアルコールや調理が必要なフードが提供できません
フードメニューがある場合、カフェスタイルの営業でも「飲食店営業」にしておきましょう。「飲食店営業」許可があれば、アルコールやフードメニューが提供可能です。

また、自店舗の飲食店営業許可の許可番号は、許可証の所定の位置で確認できます。

飲食店営業許可に更新は必要?

飲食店の営業許可は無期限に有効なわけではなく、更新が必要です。更新手続きをせずに営業を続けると無許可営業となり、食品衛生法上違法行為です。「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が課される可能性があります。
保健所によって営業許可の期間はさまざまですが、一般的に5~8年の有効期限が定められており、衛生面で大きな変化がないかチェックされます。飲食店営業許可証の有効期間を把握し、期限が切れる前に更新手続きをしましょう。
更新時は、今までの営業許可証と許可証申請手数料を保健所窓口に提出します。申請が遅れると新規申請扱いになり、手続きが増えてしまいますので、余裕を持って行ないましょう。更新の申請をした後は、施設検査を経て問題なければ営業許可証が届きます。
この際の更新費用は、新規で営業許可を取る場合に比べて低く設定されています。例えば、東京都渋谷区の場合、飲食店営業許可の新規申請は18,300円であるのに対し、更新費用は8,900円で完了します。
更新の申請時、図面提出は原則として不要ですが、店舗の構造などを変更した後、内容を届け出ていない場合は、更新時に図面の提出を求められることがあるようです。

更新以外の提出義務

飲食店営業許可は更新時以外でも提出義務があります。それは、店名や設備、食品衛生責任者などが変更された場合です。開業時の申請内容に変更があった場合は、保健所に変更届を提出してください。
なお、代表者の変更や個人経営から法人になる場合などは、変更届ではなく飲食店営業許可の取り直しとなります。また、閉店の際は廃業届を提出します。
なかには、食品衛生責任者の定期的な講習を義務付けている自治体もあるため、管轄自治体に確認しておくとよいでしょう。

飲食店の営業許可に関する3つの注意点

営業許可の抜けがあると、後々大きなトラブルにつながりかねません。飲食店の営業許可に関する注意点をいま一度ご確認ください。

注意点1.業態に合った営業許可を取得する

1つ目の注意点は、業態に合った営業許可を取得することです。先ほども解説しましたが、営業許可には複数の種類があります。
一般的な飲食店を開業する場合は「飲食店営業許可」を取れば問題ありません。しかし、お酒をメインに提供する飲食店で夜間営業を含むケースでは、「飲食店営業許可」に加えて「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要です。
営業許可に抜けがあると罰則が課せられる可能性があるため、ご自身が開業する業態の営業許可を確認し、適正な許可証を取得しましょう。

注意点2.食品衛生責任者の講習は早めに受ける

食品衛生責任者の講習は早めに受けましょう。飲食店を開業する上では、業態に関わらず店舗内に1人は食品衛生責任者が必要です。
資格を取得するための講習会自体は1日で終わりますが、時期や地域によっては講習会の予約がすぐに取れません。場合によっては、申請してから1ヵ月後しか受講できないというケースもあります。
「講習は1日で終わるからギリギリで大丈夫」という気持ちで後回しにすると、店舗のオープンに間に合わない場合もあるため注意が必要です。

注意点3.申請方法はわからないまま進めない

申請方法をわからないまま進めると、営業許可に関するさまざまなトラブルを招いてしまいます。営業許可を進める上で不明点がある場合は、保健所の事前相談を受けましょう。
この事前相談は無料で受けることができます。トラブルが発生するとお金や時間を無駄にしてしまうため、不安な方はぜひ事前相談をご検討ください。
また、「申請方法がまったくわからないからプロに任せたい」という方は、行政書士への依頼をおすすめします。費用はかかりますが、面倒な手続きや必要書類を代行してくれます。開業をスムーズに進めたい方は、行政書士に依頼するのも1つの手です。

まとめ

飲食店開業には営業許可書が必要です。食品衛生責任者の資格を取得したうえで保健所に申請すれば、施設検査後に許可書が交付されます。
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この記事を書いた人

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