withコロナの生き残り方を、外食支援のプロに聞いてみた 第2回 株式会社オプトインキュベート プライムシェフ事業CBO 宮崎理沙氏

第2回目のテーマは「テイクアウト」×「SNS活用」です。

4~5月の緊急事態宣言時は大半の市民が〝ステイホーム〟、多くの企業は会食禁止を従業員に通達するという状況でした。その中で多くの飲食店が急遽テイクアウトやデリバリーといった新たな販売チャネルにチャレンジしました。そうした取り組みの成否に大きな影響を与えたのがSNS発信などインターネット活用です。

今回は一定の成果が見られた「テイクアウト」と「SNS活用」を柱にこれからの「売り方」を考えてみたいと思います。そこでデジタルシフト事業を展開するデジタルホールディングスグループにて、「おうち記念日」にぴったりなフードサービス「プライムシェフ」の事業責任者を務める株式会社オプトインキュベートの宮崎理沙さんにお話を伺いました。

宮崎理沙氏 プロフィール

〝ビーン・トゥ・バー・チョコレート〟ブランド「Salagadoola」の立ちあげに参画。ブランド運営に携わった後、2018年より株式会社オプトインキュベートが運営する出張料理サービス「PRIME CHEF」の事業責任者に就任。

PRIME CHEF(プライムシェフ)

シェフを自宅に呼び、できたてのコース料理を楽しめる「出張シェフサービス」と、「おうち記念日」にぴったりな5品のコース料理を自宅へ届ける「デリバリーサービス」を関東、関西、九州のエリアで展開する。

現在、フリーで活躍する料理人に加えて、飲食店の登録も増加しており、1人あたり5,000円前後とリーズナブルなコースから3万円超まで幅広いプランを揃えている。

https://www.primechef.cooking/

また本取材にあたって福岡を拠点とするWEB制作会社「ホワイトボックス」が5月8日に発表した調査データ「新型コロナで大変な飲食店へのご提案 459名調査に基づくマーケティング戦略」の一部を補助線として掲載しています。

外食支援企業ではありませんが、単に調査結果を網羅するだけでなく提言としても参考になることの多い内容になっています。より深く知りたい方は、ぜひご覧ください。

この記事の目次

  • テイクアウトは飲食店を救ったか?
  • 今どれか1つを選ぶなら「インスタグラム」
  • 基本的すぎるインスタグラム使用法
  • 第二波の備えに限らず、店内飲食プラスαは不可欠になる

テイクアウトは飲食店を救ったか?

設問:新しい取り組みで成功したものは何ですか?《飲食店調査・MA》
設問:新しい取り組みで失敗したものは何ですか?《飲食店調査・MA》

設問「飲食店が新たに取り組んで成功したもの」のトップはもちろんテイクアウト(54.1%)でした。またウーバーイーツの登場でコロナ以前から盛り上がりを見せていたデリバリーですが「成功した」と回答した飲食店は18.9%いた一方で「失敗した」と回答した店も同じ18.9%だったことが目を引きました。デリバリー会社への手数料負担の大きさや自前でデリバリー要因を準備した場合でも人件費を賄えるほどの注文を獲得するのが難しかったことが伺えます。

「テイクアウトはコスト面も含めて導入のハードルが低かったこと、消費者も利用しやすかったことが効果を生みました。その一方で多くの飲食店がお弁当を売り出したことで各店の個性がぼやけて価格競争になるなど収益力の面で課題が出ています。飲食店ならではの価値があるテイクアウト商品で単価を上げ、収益性を高める努力が必要です」と宮崎さんは指摘します。

「ご家族や友達同士の誕生日や記念日といったハレの日ニーズのご馳走であればコース仕立てで1人3,000円以上の単価が確保できます。また居酒屋であれば、お弁当よりお酒に合わせた一品料理のセットを提案したほうが店のコンセプトが伝わり自粛生活後の来店につながでしょう」と提案する。宮崎さんが手掛ける「プライムシェフ」でも家庭のハレの日ニーズに強みがあったことで、緊急事態宣言中に出張料理からデリバリーに切り替えても一定の成果につながったといいます。

今どれか1つを選ぶなら「インスタグラム」

設問:飲食店のテイクアウトのきっかけのSNSは何ですか?《消費者調査・MA》

さて売り方とセットにして考えなければいけないのがお客様への〝伝え方〟です。緊急事態宣言のような人が街に出歩かなくなってしまった状態で店の存在やテイクアウト対応を知らせるにはネットの力を活用するほかありません。

注目なのが「飲食店のテイクアウトきっかけのSNSは何ですか(消費者調査)」という設問で、インスタグラムが47.5%でダントツ。次いでツイッターが29.7%。フェイスブック、ラインと10ポイント以上引き離しての結果で、SNSによって利用状況に大きな差があることがわかります。お店を営業しながら複数のSNSを活用するのが無理という方が多いと思いますが、最も効果が高い1つを選ぶなら文句なしにインスタグラムといえます。

インスタグラムについて宮崎さんは「写真の投稿が中心のSNSという特徴が飲食店のアピールと相性がいいんです。美味しそうな料理写真を見て〝食べてみたい〟と興味を持ってからお店の情報をチェックしますから購入(来店)に直結しやすいんですね」とインスタグラムの優位点を解説。また「インスタグラムは2019年からビジネスアカウント機能がスタートしています。電話番号、住所、ホームページやフェイスブックといった情報を掲載でき、消費者が興味を持った写真からすぐお店にアクセスできるようになるなどの機能が無料で使えるようになっていますから活用しない手はありません」という。これまでインスタグラムは食べてみたい料理写真を見つけた後にお店を探すのが手間だった(笑)ので、解消される利便性は大きいと思います。

基本的すぎるインスタグラム使用法

もともとインスタグラムはアカウントを作ったら写真を撮って投稿するだけで成立するお気軽なSNS。難しいことを考える前に料理写真をアップしていきながらアプリ操作に慣れるのが一番の近道です。

当然ですが料理がわかりやすく写っていることとウソがない(ポーションや食材が実際の商品と同じ)ことをお忘れなく。詳しく書きすぎるとややこしくなるので必ず押さえておいていただきたい基本事項だけまとめます。ビジネスアカウント機能の詳細については公式サイトをご覧ください。

投稿する写真は料理だけ?

設問「飲食店の利用きっかけになるSNSの投稿内容は何ですか(消費者調査)」の結果を見ると、やはりの料理写真が87.1%でトップ。次いでおすすめメニュー(57.6%)、割引情報(51.8%)と続いています。

「〝インスタ映え〟という流行語が定着したように、盛り付けや撮影クリエイティブのセンスが高い店ほど有利になっていく傾向はさらに強まっていくでしょう」と宮崎さんが説くように〝視覚的なおいしさ〟にも力を注げる店が、今後の集客力に大きな差となって現れてきます。

そうはいってもインスタグラムの中にある機能を活用できている飲食店はわずかしかありません。これからSNSを活用して、お店のブランドを上手に発信する中で、インスタグラムの中にある機能を上手く使い分けることで集客力の差が開いてくると考えています。少なくとも下に紹介する②の「#(ハッシュタグ)」と③の「ストーリーズ」を上手に活用できればお客様にお店を知っていただく確率がアップします。

インスタグラム使用法② お客様は「#(ハッシュタグ)」でお店を探す

写真を投稿する際、コメント欄に「#(ハッシュタグ)」付きのキーワードを記入して、テイクアウト注文や来店につなげるためには食べ(受け取り)に行くことができる地域の人に検索表示されるようにしましょう。

最低限必要と思われるのが「#テイクアウト+地域」「#料理ジャンル」「#店名」です。

インスタグラム使用法③ 毎日投稿してお店の存在をアピール

写真の投稿は毎日するのがお勧め。インスタグラムには通常の投稿の仕方の他に「ストーリーズ」という機能があります。違いは、通常投稿の写真が何日何年経っても掲載しているのに対して、ストーリーズは24時間後に消えてしまう仕組みになっています。「ストーリーズを上手に活用するとお店のイメージを守りながら、さまざまな販売促進ができます。たとえば料理写真は通常投稿で常時見ることができるようにして、ストーリーズで当日限定の割引告知をしてみたり、日替わりメニューを紹介するといった具合です。動画投稿ももちろん可能で仕込みの様子を投稿すると手づくり品質をアピールできます」(宮崎さん)。

第二波の備えに限らず、店内飲食プラスαは不可欠になる

新型コロナ「第二波」に備えた戦略について宮崎さんに伺うと「第二波が来たら今回同様に店内飲食の売上げが急減します。そもそも今もコロナ以前の売上げに戻せていない飲食店がほとんどです。確実にテイクアウトなど店内飲食以外の売り方を付加した営業スタイルにシフトしないと厳しいと思います。店内飲食が少なく調理スタッフに余力がある今こそ多くの営業方法にトライする機会です。当社が運営する出張料理サービスプライムシェフに登録している料理人にも、飲食店と出張料理の二本柱で収益を上げている方も多くいます。新型コロナ禍で大多数の人が〝外食したくてもできない〟状況となったわけですが、消費者がわも提供者がわも〝家でも外食体験したいしできる〟ということに気づきました。実は平時でも小さなお子様がいる家族や高齢夫婦、療養中など〝外に出られないけど外食体験をしたい〟というニーズは決して小さくありません。これは新しいマーケットを創り出していくチャンスにできると思います」と外食シーンの未来を語ってくれました。

今後は外食の非日常体験を店の外でも可能にする新サービスを多く持つことが、長期的な生き残り策になってきそうです。

この記事を書いた人

さとう木誉(きよし)

外食ライター
都内在住。繁盛店取材だけでなく経営マネジメントに関する取材活動を中心とする。「月刊食堂」「外食レストラン新聞」「外食図鑑」といった専門媒体の他、食品商社や外食コンサルタント等の宣伝企画にも携わる。
好きな酒は熱燗。好きなツマミはガリ〆さば。

ご注意

※ 取材時点での情報です。


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