目指せ脱現金化!キャッシュレス料飲店 -料飲店トレンドと繁盛店事例 vol.15-

Vol.15は「目指せ脱現金化!キャッシュレス料飲店」。来年2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」開催に伴う訪日外国人の増加を見据えて、キャッシュレス決済の導入が国内で広がりを見せつつあります。

2018年4月には経済産業省が、キャッシュレス決済の比率を2025年までに40%に高める「キャッシュレス・ビジョン」を策定。国を挙げて推進する取り組みとなっていますが、コスト面の問題もあり、特に小規模な料飲店では導入に二の足を踏んでいるお店も多いのが現状です。では料飲店にとって、キャッシュレス決済の導入は具体的にどのようなメリットがあるのか。

今回は“キャッシュレス酒場”を謳い、随所にオペレーションコスト削減の工夫が見られる新進気鋭の料飲店、「トリ&ハイ 本店」を取り上げます。

トリ&ハイ 本店 (東京・田町)

JR田町駅から徒歩約6分、桜田通り(三田通り)沿いに店を構える「トリ&ハイ 本店」は、2019年1月開店。セルフ式のハイボール飲み放題と、卓上のロースターで焼き上げる鶏焼肉が手軽に楽しめる、“糖質オフ”な居酒屋だ。

運営会社「エルライ株式会社」代表取締役であり、同店の店長も務める村田春菜(むらた・はるな)さんが掲げるテーマは、“楽しく飲んで、楽しく生きる”。「いっぱい飲んで、いっぱい食べたいけれども、大人になるほどカロリーや健康面のことも気になる。そこで、ビールよりも低糖質なハイボールと、ヘルシーな鶏料理をメインに据えたお店にしました」と村田さん。

オフィス街である田町・三田エリアの飲食ニーズともマッチして、開店1年未満にも関わらずリピート率は30%超、近隣で働くサラリーマンを中心に毎夜賑わっている。月間来店客数は約650人、客層の男女比は8:2。

「コテコテの居酒屋っぽい内装ではなく、女性でも入りやすいように」と、スタイリッシュで落ち着いた雰囲気の店内は、全テーブル席で32席。2~4人組のグループ客が多いが、“ちょい飲み”利用で訪れる、おひとり様も少なくないという。

ドリンクは飲み放題方式で、30分で580円(税抜)というシステム。20種類以上のウイスキー(※別料金あり)に加えて、ビール、ワイン、焼酎、ソフトドリンクなどが飲み放題メニューに含まれる。

中でも最大の目玉が、前述の「セルフ式ハイボール飲み放題」。テーブル毎に独自設計の強炭酸サーバーが設置されており、サーバー脇に常備されている5種類のウイスキーをセルフで割って、お好みの濃さで味わうという形だ。

取材時には「ジムビーム ホワイト」「サントリー角瓶」「ホワイトホース ファインオールド」「ジェムソン スタンダード」「アルバータ プレミアム」の5銘柄が並んでいた。こちらの銘柄は、定期的に入れ替えているとのこと。

また、「りんご」「オレンジ」「いちご・ベリー」といった、季節に応じたフルーツをウイスキーに数日漬け込んで寝かせた、自家製の「漬け込みハイボール」も人気。

ウイスキーが苦手な方向けに、甘く飲みやすく仕上げたもので、男女問わず好評だ。

フードの目玉である鶏焼肉は、「国産銘柄鶏盛り合わせ」(1人前・税抜980円 ※画像は5人前)が定番。

「大山鶏」「総州古白鶏」「美桜鶏」の3種類の国産地鶏肉の盛り合わせで、内容は仕入れ状況に応じた日替わり。いずれも、鮮度抜群な朝挽きの鶏肉のみを提供している。

そのブランド鶏肉を使用した、「こだわり鶏のから揚げ」(税抜590円)も人気商品。味の決め手は醤油ベースの特製漬け込みタレで、一品料理の中では1番の売れ筋だそう。

他にも、「焼きサバ入りポテトサラダ」「鶏皮ポン酢」「トマトとカマンベールのアヒージョ」「鶏肉とアスパラガスのアンチョビバター炒め」といった、ヘルシー志向のおつまみ料理が充実。約50品を揃えている。

そして、なんと言っても同店の最大の特徴が、キャッシュレス会計であることだ。クレジットカードは7ブランド、電子マネー・スマホ決済は21サービスに対応。ランチタイムの営業を開始したこともあり、8月から現金も利用可能(※終日可)とはなったが、オープン当初は現金不可で「完全キャッシュレス制」だったほど。

決済手数料の負担を差し引いても、レジ締めにかかっていた時間の削減、衛生面、現金の盗難リスクの回避、といったメリットのほうが大きいと考えての決断だという。

さらに注文も、各テーブルに備え付けのiPadから入力するセルフオーダーシステムを採用することで、オーダーミスを防ぎ、人的コストを削減

そもそもハイボールのセルフ式飲み放題にしても、卓上で自分で焼く鶏焼肉にしても、オペレーションの簡略化と効率化の意味合いが強いという。村田さんは、「お客様のストレスの軽減と同時に、この箱の中で、いかに人件費をかけずに回せるか、ということもお店のテーマのひとつでした」と背景を語る。20坪32席の居酒屋にも関わらず、「スタッフ数は基本的に2人、どんなに忙しくても3人」だというから驚きだ。

フードの鶏肉も下処理を済ませたカット済みの状態で仕入れており、難しい仕込みや調理を必要としないため、新人のアルバイトスタッフを教育する時間も短い。

キャッシュレスに紐づいた最先端のシステムを導入・構築することで、徹底的に生産性を高めている同店。しかし、「こういう料飲店をやっていて矛盾しているように思われるかもしれませんが、結局は “人と人”。人手不足の時代だからこそ、たくさんの料飲店の中から、ココ!って選ばれるためには、結局は“人の温かみ”が1番大事だと考えています」と村田さん。

「飲み放題の最初の1杯は、サーバーの使い方をご説明しつつスタッフがお作りさせて頂いて、お客様とお話しする機会を作っています」と、丁寧な接客と1組1組への気配りは欠かさない。つまり、テクノロジーによってスタッフの労力を削減したぶんだけ、アナログなコミュニケーションの時間を取る余裕が生まれる、中間接客に専念できるというわけだ。

消費税率の引き上げに合わせて、経済産業省が主体となり「キャッシュレス・消費者還元事業」も10月1日からスタートした。消費者へのポイント還元だけでなく、端末導入費用の補助など、事業者にとっても恩恵の大きい補助金制度が実施されており、時代は確実にキャッシュレス社会に向けて動いている。

「トリ&ハイ」は今後、都内で同業態での店舗展開を目標にしているそうだ。キャッシュレス料飲店という新しいビジネスモデルのパイオニアとなれるか、注目である。

店  名

トリ&ハイ 本店

住  所

東京都港区芝5-14-17 白蘭ビル1F

運  営

エルライ株式会社

電話番号

03-6453-6713

営業時間

11:30~15:00、
17:00~24:00(L.O 23:00)

定 休 日

土・日・祝(※土曜日は営業の場合あり)

坪数・席数

20坪・32席

禁煙・喫煙

全席禁煙

客 単 価

3,500円

開 業 日

2019年1月

この記事を書いた人

秋山シュン

Webライター/ブロガー/役者/芸人。食べ歩いた料飲店は4,000軒超。2007年に立ち上げた個人サイト「シグナル・ロッソ。」での記事紹介により、人気店となった料飲店は数知れず。サブカルチャーにも造詣が深く、2019年より秋葉原の事業組織「AKIBA観光協議会」公認ライターを務める。

グルメレポートを中心とした地域情報発信メディア「シグナル・ロッソ。」

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