【リースリング】特徴から食事との組み合わせや生産地について紹介~ワインのブドウ品種シリーズ Vol.6~
こんにちは!松木リエです。
こちらの記事ではワインに使われる代表的な品種について、基本的なことから実際にお店で役に立つ料理とのマリアージュまでわかりやすくご紹介します。
「ワインのこと全然わからない」という方にこそぜひ読んでいただきたいです!
ワインはブドウだけを原料として生まれる醸造酒です。ワインの香りや味わいは原料のブドウの影響を大きく受けます。世界には何千ものブドウ品種がありますが、ワインとなり広く流通している品種は限られています。特に国際品種と呼ばれる世界中で栽培されている品種なら十数種、そして各国を代表する固有品種を合わせても三十数種程度です。
「ワインって難しい」と思っている方にこそ、品種の特徴を知ることが選びたいワインにたどり着く近道となります。ここでは魅力的な飲食店メニューに役立つ、「これさえ知っておけば大丈夫!」という品種の特徴、代表的な生産地とおすすめワイン、そして料理とのマリアージュを合わせてご紹介していきます。
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リースリングとは
とても華やかな香りと、豊かな果実味、そして熟成に向く高い酸度をあわせもつリースリングは白ブドウのスターと言えます。私も大好きな品種のひとつで、リースリングの辛口ワインは暑い日や疲れた時にキリッとした酸が食欲を促してくれますし、少し甘さの残ったリースリングに癒されることもあります。過去には一部のリースリングで、品質の高くない廉価なものに甘味を足して、薄まったワインの味を誤魔化して流通されていたこともあり、消費者から倦厭されてしまった時代もありました。ちゃんと造り手や土地を選べば、素晴らしく、そして熟成能力の高いヒーロー的なワインになる品種です。ぜひその魅力を知っていただければと思います。
白の国際品種の代表格
リースリングは、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランと並ぶ有名な白ブドウ品種のひとつですが、ニッチな存在でもあります。シャルドネが約21万ヘクタールの栽培面積で世界5位に対し(2017年OIV調べ)、リースリングは約5万5千ヘクタール、世界のトップ10にも入りません。なぜなら、栽培できる環境が冷涼なところに限られてしまうからです。
リースリングは耐寒性のある品種なので、主にドイツやフランスのアルザス地方のように冷涼な場所で栽培されています。アロマティックなブドウ品種で、強い果実と花の香りと自然な高い酸度が特徴です。
ブドウの熟度によって香りは異なりますが、熟したリースリングからは白バラやアカシアの花のような華やかな香り、そしてリンゴや柑橘の爽やかさも香ります。
非常に熟したリースリングからはもっと甘やかな香りが強くなり、白桃のシロップ漬けや、トロピカルフルーツ、さらにドライアプリコットのような香りを感じます。
辛口から超甘口まで多様なスタイルを表現
リースリングはさまざまなスタイルのワインをつくることができます。なぜなら、ブドウがどんどん成熟しても高いレベルの酸度が自然と残るからです。これは白ワインづくりにおいてとても大切な要素です。
通常、ブドウは収穫時期に向かってどんどん糖分や風味を蓄積させ、酸度は低くなっていきます。酸度は味にも影響しますが、ワインメーカーにとってはバクテリアに汚染されない健全なワインをつくるためにこの高い酸度が必要になります。酸度がある程度高い状態でありつつ、ワインのボディや熟成力につながる糖分(発酵したらアルコールに変わります)、香りや果実味の元となる風味は高いレベルの時に収穫したいと考えています。リースリングは酸度のレベルが下がりにくいこともあり、ブドウをじっくり成熟させてから収穫できるということも魅力の一つです。
もう一点、この酸度のレベルが下がりにくいということは、甘口ワインをつくる上でも重要となります。ワインは甘いだけではバランスが悪く飲みにくいものです。高い酸度があることでワインのバランスをとり、最高のレベルの甘口ワインとなるのです。
熟成したらどうなる?
何度も言うように、リースリングには時には「鋼のよう」とも表現される骨太の高い酸があるので、長期の瓶内熟成を経てもフレッシュさを失わず驚くことがあります。風味が発展して、ハチミツやドライフルーツ、そしてスモーキーな石油のような香りがあらわれることがあります。
石油のような香りというとあまり良い印象になりませんね。「ペトロールの香り」と言われる石油や重油などのオイルのような香りです。このペトロールの香りは瓶内熟成によって生まれる香りです。個性的ではありますが複雑で華やかな果物や花の香りの中に溶け込みます。水分ストレスがかかった環境下で栽培された場合は、熟成していないリースリングでもペトロール香が感じられることがあります。
リースリングの代表的な生産地と味わいの特徴
世界中の冷涼地で栽培されるリースリングですが、主要産地はドイツ、フランス、そしてオーストラリアです。では、各地の特徴を紹介していきましょう。
ドイツのリースリング
ドイツはリースリングの故郷で、その栽培面積は24,150ヘクタールにも及び、世界中のリースリングの約半分を占めます。ドイツ全体がリースリングの栽培に適した冷涼地にあたり、特にモーゼルとラインガウという産地が品質も高く有名な生産者が多く集まっています。
モーゼルはライン川の支流であるモーゼル川の両岸に広まるワイン産地です。緯度が高く冷涼なので、川に面した急斜面の畑でブドウを栽培することは光合成の効率を上げてブドウがゆっくり成熟するのに役立ちます。また、特徴的なスレートと呼ばれる花崗岩土壌が、ブドウに凝縮感と鋼のような高い酸を与えます。冷涼な気候ゆえブドウの糖分が高くないので、ワインは比較的低いアルコール度数でライトボディ、フローラルな香り・風味でキリッとした酸の白ワインをつくります。酸度が非常に高いので、中には少し甘味を残したオフドライや半辛口のスタイルにしてバランスを取っているものもあります。いずれにせよ、熟成のポテンシャルも高く、軽快な飲み口で、リンゴや白桃の果実味と白バラの華やかな香りをもつワインとなります。
ラインガウは、ライン川の北岸にあたるワイン産地で、川に向かって下る南向きの斜面に畑が連なります。よって、モーゼルよりも若干ブドウの凝縮感が増し、ミネラル感の骨格がある、こちらも長期熟成のポテンシャルのある素晴らしいワインがつくられます。
ドイツはリースリングからアイスワインも生産されています。アイスワインというのは、甘口ワインのスタイルの一種です。健康なブドウを晩秋から冬の間、樹にぶら下げたままにしておきます。マイナス7度以下の状態でブドウを収穫し圧搾すると、水分は氷のままですが糖分は溶け始めているので、果汁の糖分が濃縮されます。品種由来の特徴が凝縮された、華やかで甘美なワインとなります。
この方法でワインを造るために必要なブドウは、限られた土地でしか生産することができません。また、収穫していないブドウが病気になったり、害虫に食べられたりするリスクも大きく、ブドウの収量はとても少なくなり、結果としてアイスワインは高品質かつスーパー・プレミアムな価格にもなります。
おすすめワイン
リースリング トロッケン ドライ 19/ヴァイングート コレル ヨハネスホフ
- 産地:ドイツ
- 飲み口:辛口
緑がかった輝きのあるイエローで、青リンゴやフレッシュなグレープフルーツ、ライムなど典型的なリースリングのアロマから始まり、白い花、蜂蜜のニュアンスそしてミネラル感が伴います。タイトで生き生きとした味わいとピュアな果実味の広がるバランスに優れた白ワインです。
容量:750ml
参考価格:3,411 円(税抜)
フランスのリースリング
フランスでは、アルザス地方がリースリングの産地です。アルザス地方の西側にある、南北に長くそびえるヴォージュ山脈のおかげで、アルザスはフランスの中でも特に雨の少ない産地として有名です。フランスのワイン産地の中では高緯度にありながら、収穫シーズンに雨が少ないおかげでゆっくりブドウの成熟を待つことができ、質の良いブドウを収穫することができます。
アルザスのリースリングは、ドイツに比べて酸・ミネラル感・果実風味がしっかり感じる辛口となっており、こちらも高品質・高評価な生産者が多く存在します。
おすすめワイン
リースリング/トリンバック
- 産地:フランス アルザス地方
- 飲み口:辛口
星付きレストランに支持されるアルザスの名門のスタンダードキュヴェ。爽やかな果実味とキレのある酸が心地良い、秀逸な辛口リースリング。特にお寿司やお刺身をはじめとした魚料理と好相性です。
容量:750ml
参考価格:2,800 円(税抜)
オーストラリアのリースリング
リースリングにとっては温暖すぎるイメージのオーストラリアですが、南オーストラリア州のクレア・ヴァレーやイーデン・ヴァレーという産地から素晴らしいリースリングが生み出されています。
オーストラリアのリースリングはほとんどが酸度の高い完全な辛口です。溌剌とした高い酸がまだしっかりと残るように比較的早めに収穫します。そしてほとんどの生産者はリースリングのピュアでフレッシュな果実味を表現するため、ステンレス・スチール・タンクを使った醸造をしてすぐに瓶詰めすることで生き生きとした果実と花のアロマを保ちます。ワインは搾りたてのリンゴ、レモン、グレープフルーツ、ライム、桃などの風味を持ちます。
おすすめワイン
イーデンヴァレー リースリング/ロルフビンダー
- 産地:オーストラリア イーデン・ヴァレー
- 飲み口:辛口
繊細なライムの花とバラのフローラルなアロマにシトラスを想わせる味わいが長い余韻へと続く。
容量:750ml
参考価格:2,360 円(税抜)
その他の地域のリースリング
ドイツに近いヨーロッパには他にもリースリングに定評のある国があります。その筆頭がオーストリアです。
オーストリアにはグリュナー・フェルトリーナという、オーストリアを代表する固有地場品種がありますが、リースリングは高品質な白ワインの品種としての地位を確立しています。特に北東部、ドナウ川沿いのニーダーエスタライヒ州やウィーン州の辛口リースリングは、ドイツよりも幾分成熟度が高くてボリュームがありますが、フランスのリースリングよりは繊細な花と白桃の香りが強く、他の国とは微妙に違う個性があります。
余談ですが、ヨーロッパではヴェルシュリースリングやエメラルド・リースリングなどリースリングという名前がつく品種がいくつか見られますが、リースリングとは違う品種なので間違えないようにしてくださいね。
リースリングのおすすめマリアージュは?
ドイツやフランスでは食中酒として広く飲まれているリースリング。香りが豊かなのできっと好きになる方も多いと思います。軽快なタイプが多いので軽めの食事にぴったりです。ぜひお料理と合わせてみてください。
辛口リースリングに合わせるなら
リースリングは、フランスのアルザスではシュークルート、ドイツではザワークラウトと呼ばれるキャベツの酢漬けに合わせるのが定番です。このキャベツの酢漬けにはいつも豚バラ肉やソーセージ、ベーコンなどシャリュキュトリー(豚の加工肉)を一緒に食べます。リースリングのキリッとした酸がキャベツの酢漬けの酸と重なって、さっぱりさせてくれるので、無限に食べてしまうほどの組み合わせです。
また、このミネラル感もある鉱物的なリースリングの酸は、「サクッ」と音がなるほどのクリスプな食感・・・例えば揚げたての天ぷらとテクスチャーが合います。リースリングの果実味は少しとろっとした甘やかな風味があるので、具材を海老やホタテなどにしたらさらに最高のペアリングになるでしょう。
甘口リースリングに合わせるなら
甘口のリースリングは、贅沢な飲み物のひとつです。もちろんワインだけでゆっくり飲んでもいいですが、例えばドライアプリコットを添えたブルーチーズ、甘さ控えめのレアチーズケーキ、柑橘のシロップ付けを添えたパンケーキなどと合わせてみてください。リースリングの甘口ワインといっても、酸度の高さとのバランスによっては半甘口から極甘口に感じるものまで様々でしょう。あまり甘いものと合わせてしまうとワインの酸が浮いて感じてしまうので、「甘味+塩味」の組み合わせがあるものか、幾分甘さを控えたデザート、そして風味合わせとしてドライフルーツや柑橘を添えたものとの組み合わせがおすすめです。
おすすめの甘口ワイン
アマリエ モーゼル リースリング QbA/クロスター醸造所
- 産地:ドイツ
- 飲み口:甘口
ハートのモチーフが可愛らしいモーゼル産のリースリングで造られた甘口白ワイン。穏やかな酸味と甘味がバランスよく口の中で広がります。
容量:500ml
参考価格:1,450 円(税抜)
自分のお店の料理にはどうやってワインを合わせたら良いのかわからない!そんな時にはぜひこちらの記事もご覧ください。
まとめ
このように、リースリングは世界中で栽培されている白ワインの主要品種で、辛口から極甘口まで幅広いスタイルを表現しています。時には鋭いと言われるほどの高い酸度と、柑橘、りんご、白桃を思わせる透明感のある果実味、甘口のものならドライフルーツやハチミツのような凝縮感のある味わいが特徴です。辛口なら素材を活かした料理、甘口ならフルーツと合わせて単体でデザートワインとしても◎。様々な場面で活躍できる万能な品種といえるでしょう。「うちのお店にあったリースリングを入れたい!」そんなときはぜひ飲食店向け酒類のプロ「カクヤス」にご相談ください。お店に合った商品をご提案いたします。
この記事を書いた人
松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
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