日本酒の新ジャンル?人気のクラフトサケとは

近年人気の「クラフトサケ」。取り扱いしている酒販店や飲食店もだんだんと増えてきました。ざっくり説明すると、日本酒の新ジャンル。酒税法的上は、厳密には「日本酒(清酒※1)」と名乗れない別ジャンルです。ビールと発泡酒のように、ちょっとややこしいクラフトサケ。そんなクラフトサケが生まれた経緯や、人気の理由、おすすめの飲み方などを詳しく解説いたします。

※日本酒は、酒税法上では正しくは「清酒」と表記とされます。わかりやすくお伝えする為この記事内では以下、「清酒」ではなく「日本酒」という表現を使用している箇所もあります。

クラフトサケとは? 日本酒、どぶろくとの違い

クラフトサケとは、日本酒の造り方をベースにはしていますが酒税法上は後述の理由から、「清酒」ではなく「その他の醸造酒」や「雑酒」、「リキュール」規格になります。クラフトサケ醸造所の同志が2022年6月に立ち上げた同業者組合、クラフトサケブリュワリー協会の定義によると、“日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒”とあります。

同定義では、「どぶろく」もクラフトサケ。日本酒には、液体のお酒と固形の酒粕とに分ける「搾る」工程があります。この搾る工程を削除したお酒が「どぶろく」です(正式などぶろくは、どぶろく特区でのみ醸造可能。清酒規格のどぶろくは、にごり酒です)。また、フルーツやハーブなど、日本酒の原料としては認められない副原料を使用することで、これまでの日本酒にはない、新しい味わいが楽しめるのがクラフトサケの魅力です。

クラフトサケが誕生した理由

日本酒など、アルコール飲料を製造するためには、酒税法により製造免許が必要になります。申請すれば認可されそうにも思われますが、実際には日本酒の製造免許はこの70年間で1件も新たに交付されていません。クラフトサケが誕生した理由は、その日本酒の製造免許を取得する難しさが理由にあります。

日本酒の製造免許は新規取得が難しい

純米大吟醸から本醸造酒までの特定名称酒は、輸出を含めて人気で増加傾向にありますが、日常酒であるパック酒など普通酒の需要は減り続けています。日本酒全体の需要は、20世紀半ば、昭和30年代がピークで、その後は昭和の代から年々減っているのが現状です。それを理由に、日本酒の製造免許は長らく新規で認可されていません。“酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合”(出典:国税庁 酒税法第10条「製造免許の拒否要件」11号需給調整要件)とあり、酒税法上で既存の酒蔵を守っている、という側面もあります。

日本酒ではない製造免許

日本酒の製造免許が新規に認可されない中で開発されたのが、クラフトサケです。日本酒と同じくお米を原料としながらも、日本酒では使用が認められていない副原料を使用することで、酒税法上「清酒」ではなく「その名の醸造酒」や「雑酒」に分類されます。つまり、クラフトサケは日本酒の製造免許が無くても「その他の醸造酒」や「雑酒」の製造免許があれば造れるお酒なのです。
例えて言えば、蒸留酒であるウイスキーにおける、単一蒸留所のシングルモルトウイスキーにスプーン1杯だけ別の蒸留所のウイスキーを加えた「ブレンデッドウイスキー」や、ウイスキーにごく少量のラムなどを加えた「リキュール」、と言えばお分かりいただけるでしょうか。

ちなみに、輸出専門の日本酒の製造免許は、2020年に新たに認可された「輸出用清酒製造免許」によって、新規取得が可能になりました。クラフトサケ醸造所の中には、同免許を持ち輸出専用に日本酒を造る蔵元もあります。

クラフトサケが人気となった背景と理由

これまで説明してきたような理由で、日本酒の新規参入プレイヤーは酒税法上、新たに登場することはほぼありませんでした。新規参入がなければ業界は活性化しにくいです。
近年、新しく登場したように見えている酒蔵は、実は数年から数十年、酒造りを休んでいた休眠蔵の復活した事例や、酒造りは止めても日本酒の製造免許を持っていた酒蔵から製造免許を買って、新たに参入した事例がほとんどです。

そこに、日本酒のようで、ボトルデザインなどの見た目や、味わいも旧来の日本酒とは明らかに違う、クラフトサケが同時期に幾つも誕生しました。ひとつふたつではインパクトが弱いところ、同時期に一気に登場したことで、ニューウェーブ・オブ・サケ的な、ひとつのムーブメントととして捉えられ、より注目が集まりました。

酒造りというものは、設備投資に数千万円から億単位で資金が必要な設備産業でもあります。より少量仕込みのクラフトサケは設備資金面でも比較的参入障壁が低いため、30代から40代の若手プレイヤーが多いことも特徴です。

クラフトサケの味わいとは

クラフトサケの味わいは、副原料を入れないどぶろくタイプと、副原料=フルーツや、ハーブやホップなどのボタニカルを加えたタイプ、大きく2種類に分かれます。
副原料を加えないどぶろくタイプは、「どぶろく特区」で造られる伝統的などぶろくや、醪(モロミ)を絞った、日本酒表記でいうところの<にごり酒>の味わいと比較的近い、いわば延長線上にある味わいです。
一方、途中までは日本酒の造りと同じで、醪の段階で副原料を加えるタイプの味わいは、日本酒がベースの日本酒カクテルや、日本酒リキュールのような味わいのものもあります。

クラフトサケの美味しい飲み方

当然冷酒でしょ、と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。副原料を含まないどぶろくタイプには、燗酒にすることで味わいが広がる、燗映えするものも存在します。にごり酒と同様です。また、どぶろくタイプ、副原料を加えたタイプのどちらでも、味わいがしっかりしているものは、ロックやちょいソーダ割りでも美味しくいただけます。

主なクラフトサケ

クラフトサケブリュワリー協会の設立メンバーである、東京「三軒茶屋醸造所」とパリ近郊に「KURA GRAND PARIS」を有する「WAKAZE」、秋田の「稲とアガベ」、福島の「haccoba」、新潟の「LAGOON BREWERY」、東京の「ALL WRIGHT(木花之醸造所)」、滋賀の「ハッピー太郎醸造」、福岡の「LIBROM」などが有名です。

今後の注目株としては、菊の司酒造の創業家出身で家業の日本酒蔵は経営難で事業譲渡し、岩手で新たにクラフトサケ醸造所「平六醸造」(その他の醸造酒)を立ち上げた平井佑樹氏は醸造前から多くの注目を集めています。
また自社農場を持ち、クラフトサケ醸造所を大阪で準備中の蔵もあります。そこは「陸奥八仙」の青森・八戸酒造、「小鼓」の兵庫・西山酒造場で修業し、八戸酒造ではOEMで「KOYOI」名義の日本酒を醸造した経歴を持つ方が運営しています。

日本酒蔵が造るクラフトサケ

日本酒蔵の中にも、クラフトサケを造る酒蔵が出てきました。「紀土」で有名な和歌山の平和酒造は米、米麹にビール用ホップを加えた「紀土 KID Takagi’s フュージョンサケ」(リキュール規格)をリリースしています。「杜氏資格保有者シリーズ」という限定シリーズで、南部杜氏資格を有する社員杜氏がクラフトビール「平和クラフト」の醸造長であることから誕生したアイテムです。日本酒蔵が、日本酒に敢えて副原料を加えたクラフトサケを造るのも、今後トレンドとなるかもしれません。

まとめ

新規で日本酒(清酒)の製造免許が降りないことも要因として登場したクラフトサケ。当初は新規蔵ばかりでしたが、ここ数年で、日本酒製造免許を持つ酒蔵が、新たにクラフトサケをリリースすることも増えました。

日本では酒税法上「清酒」と「その他の醸造酒」は厳密に別物として扱われますが、海外ではどちらも「SAKE」扱いです。今後理解が進めば、清酒の「サケ」、「クラフトサケ」と、細分化される可能性もありますが。

日本酒ファンにとっては選択肢が増えることは喜ばしいことです。クラフトサケは一般的な日本酒と比べると、小規模醸造で製造コストが高い、との理由から価格帯は清酒の約2倍・・・。飲食店では扱いにくいのが少々難しいところです。とはいえ、いちジャンルとして人気が出てきているので、引き続き注目していただきたいと思います。

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この記事を書いた人

西尾 明彦

年間取材100店舗以上を10数年の外食ライター。コピーライター。
日本酒会を40回以上主催する利き酒師。

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