季節の日本酒「ひやおろし」とは?おすすめ4選|いつから飲める?秋あがりとの違いや合う料理を解説

一年を通して楽しめる定番酒がある一方で、季節ごとに旬の限定酒があるのも、日本酒の魅力です。
冬に搾りたてで出荷されるフレッシュな新酒にはじまり、変わり種も多い春酒に夏酒と、季節が移ろうごとに、徐々に熟成も進んでいきます。旬のお酒の最後を飾るのが、ひと夏を越えた秋の酒であるひやおろし(冷卸)です。

「ひやおろし」とはどんなお酒?「秋あがり」との違いはある?

「ひやおろし」には定義があります。その年に獲れた新米で冬に造った新酒を搾って、1度火入れ(加熱殺菌)したものをひと夏を越えて貯蔵して、外の気温が貯蔵庫の温度と同じくらいに下がった頃に、2度目の火入れをせずに出荷する生詰め酒のことです。新酒+1度火入れ+半年ほど熟成の生詰め酒です。ごく稀に、ふた夏越え(1年半熟成)や生原酒のひやおろしも見かけますが、どちらも厳密にはひやおろし規格ではありません。
一方で、同じ時期に出荷される「秋あがり」には定義がありません。元々は、冬に仕込んだお酒が熟成して秋に旨味が増してきたものを称えた呼称です。そのため、生原酒であろうが、スパークリング日本酒であろうが、熟成がうまくいっていたら、秋あがりなのです。

ひやおろしの販売シーズンは?

秋の旬酒であるひやおろしですが、近年はシーズン先取りが進んでおり、早いものでは残暑がまだまだ厳しい8月下旬に登場します。遅い酒蔵では晩秋の11月と、4ヵ月近くにわたってリリースされるため、出荷時期によって味わいタイプの傾向も違ってきます。

ひやおろしの味わいの特徴とは?

ひやおろしの味わいは、リリース時期によって大きく3つのタイプに分類されます。

8月下旬から9月頃に出荷されるものは、熟成感よりもフレッシュさが勝るタイプです。味わいの傾向としては、本来の「ひやおろし」より、かつて「夏越し(なごし)酒」と呼ばれていた晩夏タイプの旬酒に近いです。
秋本番の10月に出荷されるひやおろしは、熟成がより進み、香りと味乗りのバランスの良さが特徴です。「秋出し一番酒」とも呼ばれ、燗酒にして美味しいタイプも多いです。
晩秋11月に出荷されるひやおろしは、香り高い芳醇ではなく、豊かな旨味の豊潤さ。熟れきったとも表現される完熟感が特徴です。「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」という言い方もされています。

季節限定酒で、最も幅広い温度帯で楽しめるのもひやおろしの特徴です。1回火入れの半年熟成酒という規格が決まっているため、にごり酒など澱(おり)入りやスパークリングタイプ、低アルコールタイプなど、何でもありの春酒、夏酒と比べると、味わいの方向性は似通ったタイプが多くなります。

ひやおろしのボトルやラベルの特徴は?

ひやおろしの特徴を一言で表すと、熟成感。ボトルやラベルデザインも、熟成を感じさせるものが多いです。透明ボトルや青色ボトルが多かった夏酒から一転して、茶色ボトル、黒ボトルが主流になります。ラベルも暖色系や茶色の落ち着いたものが多く登場します。基本的に一度火入れで半年熟成させているので、熟成感を楽しめるタイプが多く、純米酒や特別純米酒、純米吟醸クラスが大半です。

「ひやおろし」と相性の良い料理の特徴を知ろう

ひやおろし以外の新酒~春酒~夏酒は基本的にライトボディで軽やかなタイプですが、ひやおろしのみ、ミディアムボディ以上で飲みごたえがあります。
熟成感があるひやおろしと合う料理とは、ひやおろしと同じベクトルの料理です。味わい軸では、あっさり淡白なものよりこってりと濃厚なもの。温度軸では、冷たいものより燗酒と同様に温かいもの。時間軸では、調理時間が短いパッと短いものより、長いものが当てはまります。
野菜料理なら、酢の物より炊き合わせ。魚・肉料理なら、刺身やカルパッチョより焼魚や焼肉、煮込み料理です。天ぷらや唐揚げなど、揚げ物と合うお酒が多いのも、ひやおろしの特徴です。

同じ半年程度熟成でも、色味が濃いお酒は、常温熟成で熟成が早いので、味わいもより濃厚です。蒸留酒であるウイスキーに例えるなら、気温が低いスコッチウイスキーの3年熟成は、まだまだフレッシュな青さを感じます。一方で、気温が高いバーボンなどアメリカンウイスキーや、台湾やインドなどアジアンウイスキーの3年物は、充分に熟成感があります。料理の色味も、お酒に合わせて淡いものは淡い色味、濃い色なら濃い色と合わせると、同調しやすく外しにくいです。

お酒と食材や料理の旬を合わせる

夏は生酒やにごり酒、スパークリングタイプなどフレッシュなお酒が多く、夏野菜もトマトやキュウリ、レタスなど生で食べても美味しいものが多いです。
秋のお酒は半年熟成で旨味が乗っていますが、秋野菜は根菜やイモ類、キノコなど火を通して美味しくなるものばかり。魚も夏は湯引きのハモ、アジ、キスなど生で食べても美味しい魚が多かったのが、秋の魚は秋刀魚(新鮮なものが流通する産地以外)、秋鮭、戻り鰹など、火入れして美味しいものが大半です。

「ひやおろし」に賞味期限はあるの?

日本酒は長期間の保存が可能という観点から賞味期限の表示義務がありません。その代わりに「製造年月」を義務として必ず記載することとされています。
では、日本酒はいつまでに飲み切ればいいの?と悩んでしまいますよね。そのために正しい日本酒の保存方法、おいしく飲める期間を知っておきましょう。

製造方法によっておいしく飲める期間が異なります。

  • 【一般的な日本酒】出荷までに2度の火入れ(加熱処理)を行います。瓶詰めより1年がおいしくいただける目安です。
  • 【生詰め酒(ひやおろし)・生貯蔵酒】1度の火入れ(加熱処理)のみ行います。瓶詰めより7~8ヵ月がおいしくいただける目安です。
  • 【生酒】火入れ(加熱処理)を行いません。瓶詰めより2~3ヵ月がおいしくいただける目安です。

あくまで保存が良い環境での目安です。商品に記載されている作り手、メーカーの推奨する保存方法をご参照ください。

おすすめの「ひやおろし」4選

先述したように、ひやおろしの出荷期間は約4ヵ月と長いため、出荷時期でも味わいのタイプが異なります。字面や音からは、冷酒で美味しいお酒と思われがちなのですが、燗酒でも美味しいです。

南方 純米吟醸 ひやおろし

南方 純米吟醸 ひやおろし
和歌山県 純米吟醸

南方 純米吟醸 ひやおろし

  • 原料米:京都府産 五百万石
  • 精米歩合:58%
  • 度数:17度
  • 日本酒度:+1
  • 酸度:1.7
  • 酒蔵:世界一統

8月下旬にリリースされるひやおろし第一弾。通常の「純米吟醸 南方」シリーズは、フルーティーで華やかなタイプですが、ひやおろしは、磨きを抑えて、香り穏やかな酵母を使用した食事との相性を重視した食中酒タイプ。控えめなコクに度数17度と飲み応えがあり、後口の酸の切れの良さが特徴です。よく冷やして白ワイングラスで楽しむのがおすすめです。

容量:1.8L

参考価格:2,700 円(税抜)

山猿 山廃仕込原酒 山猿実り

山猿 山廃仕込原酒 山猿実り
山口県 純米

山猿 山廃仕込原酒 山猿実り

  • 原料米:山口県産穀良都
  • 酒蔵:永山酒造

山口県産の酒米・穀良都65%精米、但馬杜氏が仕込む純米原酒です。程よい熟成感のある柔らかなコク旨味からスッキリした後口で、冷酒から燗酒までオールマイティー食中酒。 通年販売の「山猿 純米酒」との価格差は数十円~100円程度ながら、こちらは定番酒のアルコール度数15度よりも2~3度高い原酒なので、実はお値打ちな1本です。

容量:1.8L

参考価格:3,200 円(税抜)

天の戸 純米吟醸 ひやおろし

天の戸 純米吟醸 ひやおろし
秋田県 純米吟醸

天の戸 純米吟醸 ひやおろし

  • 原料米:秋田県産 美山錦
  • 精米歩合:50%
  • 度数:16.3度
  • 日本酒度:+2
  • 酸度:1.7
  • 酒蔵:浅舞酒造

美山錦50%精米の純米大吟醸も名乗れる規格に、秋田流花酵母のAK-1酵母「天の戸」ならではのテッパンな組み合わせ。低温貯蔵でフレッシュさを残しつつ、柔らかな熟成感です。
キリっとシャープな味わいの冷酒から、ぬる燗でやわらかく開く旨味と余韻、温度帯で見せる表情も様々。全量が地元横手盆地産米による純米蔵です。

容量:1.8L

参考価格:2,900 円(税抜)

大納川 純米吟醸 無濾過原酒 ひやおろし

大納川 純米吟醸 無濾過原酒 ひやおろし
秋田県 純米吟醸

大納川 純米吟醸 無濾過原酒 ひやおろし

  • 原料米:秋の精 100%
  • 精米歩合:55%
  • 度数:15度
  • 日本酒度:ー1
  • 酸度:2.2
  • 酒蔵:大納川

秋田県産の酒米・秋の精55%精米、蔵付き酵母D-121使用、度数15度の無濾過原酒です。低温熟成による程よい吟醸香、数値上の日本酒度はマイナスでも、酸度が2.2とキレッキレなのです。ほのかな米の甘旨味から、キレのある後味で、甘くてキレるすっきりした味わいです。冷酒から燗まで幅広い温度で楽しめます。
5人で造る小仕込みの酒蔵ですが、更なる酒質向上を目指してプレハブ冷蔵庫や新型精米機など新規設備を導入、味わいは年々進化しています。

容量:1.8L

参考価格:3,000 円(税抜)

まとめ

秋の季節限定酒である「ひやおろし」は、夏酒の名残りのフレッシュなタイプを除いては、半年熟成されたミディアムボディのコク旨味が魅力です。それでいて、後口の切れ良い、ドライな辛口タイプが近年は顕著に増えました。旬の食材と相性が良いのも特徴です。味わい軸、温度軸、時間軸、色味軸と、合わせる評価軸も分かりやすいので、旬の食材と組み合わせるだけでも、マリアージュが結構な頻度で完成します。

暑い夏は出数が減ったかもしれない日本酒も、気温が下がる秋口になると、また飲まれるようになってきます。ひやおろしはそういう意味でも、お客様に訴求しやすいアイテムです。
満足度アップと客単価アップを目指して、ぜひうまく活用してください。取り扱い銘柄や出荷時期など気になる方は、ぜひカクヤスまでお問い合わせください。

この記事を書いた人

西尾 明彦

年間取材100店舗以上を10数年の外食ライター。コピーライター。
日本酒会を40回以上主催する利き酒師。

西尾明彦 Instagram

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