知っておきたい日本酒と居酒屋料理のペアリングの基本

料理とお酒の合わせ方の基本の考え方

あくまで料理が主役、お酒は料理を引き立てるための従。という考えの料理人の方は今でも多いようです。個人的にはもったいないなと思うこともあります。なぜなら、世の中には料理を引き立てる以外のペアリング方法がたくさんあるからです。料理と日本酒は同格と考えると、ペアリング方法は一気に広がります。
日本酒ペアリングを上手く活用し、日本酒の出数を増やすことで売上UPも可能です。少しだけ冒険してみませんか?

数あるペアリング方法の中から、日本酒の専門的な知識がなくても比較的簡単に実践できる方法をいくつかご紹介していきます。

1.酒肴の濃い味を洗い流す組み合わせ【濃い味×淡麗辛口】

味の濃い酒肴を、後口ドライな端麗辛口タイプで味を切る、居酒屋などで一番よく使われている手法です。
新潟に代表される淡麗辛口タイプが重宝される理由でもあります。旨味や甘味成分が少なく味わいがすっきりとした淡麗辛口タイプは、食事が主、お酒が従の組み合わせをソツなく働いてくれます。日本酒ペアリングの良さは、ど真ん中ストレートでなくても、それなりに広いストライクゾーンに合わせることができることです。

焼きめざし×「特別本醸造 八海山」

カタクチイワシの丸干しを素焼きにした酒肴は、製法同様シンプルな味わいです。ほのかな苦味と塩味主体なので、合わせるお酒も味が多いと合いません。
既製品など常温のものには、容器は筒形グラスの冷酒で。焼き立てのものなら、もちろん熱燗。ぼってりと丸みがあるお猪口がお薦めです。

特別本醸造 八海山(はっかいさん)
新潟県 特別本醸造

特別本醸造 八海山(はっかいさん)

  • 度数 :15度~16度
  • 飲み口:やや辛口

冷でよし、燗でよしの、八海山を代表するお酒です。 燗をつけた時のほのかな麹の香りもまた、このお酒の楽しみの一つといえます。

容量:1.8L

参考価格:2,495 円(税抜)

鮭とば×「本醸造酒 国士無双 DRY」

上記の組み合わせに、郷土性、ストーリー性を持たせた組み合わせです。秋鮭の半身を皮付きで縦切り、海水で洗って干した和製魚ジャーキーのような北海道名物の鮭とば。合わせるなら北海道の辛口酒でしょう。旨味成分が少ない北海道産米彗星の60%精米で、日本酒度+16の超辛口酒です。 容器は筒形グラスの冷酒がお薦めです。
日本酒の味わいが均質化しつつある昨今、郷土料理に必ずしもその地域の地酒が合う訳ではありません。それでも、地元で昔から親しまれている晩酌酒な地酒の中には、郷土料理に合うものも一定数存在します。

本醸造酒 国士無双(こくしむそう) DRY
北海道 本醸造

本醸造酒 国士無双(こくしむそう) DRY

  • 度数:15度~16度
  • 飲み口:辛口

北海道産酒造好適米「彗星」で醸す、北海道一の本格超辛口酒。超辛口ですが旨味があるので飲みやすく、キリッとした軽い飲み口と爽快な味わいです。

容量:1.8L

参考価格:2,100 円(税抜)

2.料理とお酒の温度帯を合わせる【冷菜×冷酒】【温菜×燗酒】

例外はありますが、基本的に冷たい料理には冷たいお酒、温かい料理には温かいお酒の組み合わせが、味わいをマッチさせやすいです。保存食や郷土色が強い酒肴などは、常温で熱燗と合うものが多いです。

3.料理と日本酒の味の濃さを合わせる

淡白な旨味の刺身には、淡麗な味わいのお酒を合わせる【淡白な料理×淡白なお酒】

日本酒と刺身は、何でも合いそうに思われるかもしれませんが、意外と合わない組み合わせが存在します。生魚なので、フレッシュな生酒やにごり酒が合いそうかと思いきや、これが一番合わない組み合わせ。生魚の臭みや癖を引き出したり、フルーティーなお酒の香りが魚の味わいの邪魔をしたりしてしまうのです。
刺身に合わせる場合は、鮮度を合わせるのではなく、味わいの方向性、味の濃淡具合を合わせます。
基本的に火入れ酒で、香り穏やか、味わいは淡麗なタイプが合います。本醸造酒から純米大吟醸まで、幅広いお酒が該当します。

寒ブリ×「銀盤 純米大吟醸 播州50」

寒ブリは通常期のブリよりサシが多く、旨味たっぷりなのが特徴。合わせる日本酒は、淡麗過ぎず、程よい旨味があるものを。お薦めは、ストーリー性も重視して寒ブリの名産地、富山県の銘酒、銀盤の看板商品を。兵庫県産の酒米山田錦を50%まで磨いた、なめらかなで程よいコク、すっきりした後口。穏やかで食中酒向けの純米大吟醸です。
温度帯を合わせて冷酒~常温(冷や)で。容器は口径が大き過ぎない白ワイングラスがお薦めです。

銀盤(ぎんばん) 純米大吟醸 播州50
富山県 純米大吟醸

銀盤(ぎんばん) 純米大吟醸 播州50

  • 度数:15度~16度
  • 飲み口:辛口

なめらかな喉ごしと、際立つ吟醸香。山田錦100%使用。長期低温貯蔵で醸した飲み飽きしないスッキリとした味わいが特徴の純米大吟醸。

容量:1.8L

参考価格:2,818 円(税抜)

カツオのタタキ×「酔鯨 吟麗 純米吟醸」

血合いがある赤身魚であるカツオは、生だと生臭さが強調されやすいため、合うお酒がない訳ではありませんが、日本酒を合わせるのが最も難しい部類です。藁焼きでタタキにすることで芳ばしい旨味が生じ、ぐっと日本酒と合わせやすくなります。合うお酒の条件はそれなりにあって、甘味が僅少、日本酒度が+5以上ある後口が切れる辛口タイプで、酸もあるもの。旨味があまり強くないものがベターです。
お薦めするのは、甘味が僅少な北海道産の酒米・吟風50%精米で純米大吟醸規格の純米吟醸酒です。標準値が日本酒度+7、酸度1.7、アミノ酸度1.2。ほのかな旨味に、抜群の後口のキレの良さと、ずっと飲み続けられる良い意味で引っ掛かりのなさ。和洋中何でもOKな食中酒です。 温度帯を合わせた冷酒、白ワイングラスがお薦めです。

酔鯨(すいげい) 吟麗 純米吟醸
高知県 純米吟醸

酔鯨(すいげい) 吟麗 純米吟醸

  • 度数:16度~17度
  • 飲み口:辛口

旨みとキレの良さが際立つ、酔鯨を代表する純米吟醸酒。香りはあくまで控えめとし、キレが良く飲み飽きのしない純米吟醸酒です。和食全般、特に醤油系のお料理との相性が良く、一緒に頂くお料理の良さを引き出します。

容量:1.8L

参考価格:2,840 円(税抜)

料理の味わいが中口なら、日本酒も、コク甘旨味がある中口タイプを合わせる

ねぎまタレ×「金陵 濃醇 純米」【中口な料理×中口なお酒】

鶏もも肉のジューシーな旨味と、焼けたネギの苦味を含んだ香ばしさ。それを甘辛いタレで味わいを上手くまとめたのが、ねぎまタレ串です。料理としての味わいは、濃い味ではなく中口です。合わせるお酒は、ねぎまタレにある味の構成要素と同方向の味わいを持ったお酒です。具体的には甘味とコク旨味主体で、酸が比較的少ないタイプです。
お薦めの「金陵 濃醇純米」は、地元香川県産オオセト70%精米の純米酒。淡い山吹色に、米本来の味や、雑味、ゴク味が一体となった複雑な旨味が特徴です。少々癖がある冷やも良いですが、焼鳥と温度帯を合わせて燗酒にすることで、コク甘旨味が広がり、ねぎまのタレ味と良くマッチします。山椒や七味で焼鳥にアクセントを付けると、より合わせやすくなります。
温度帯を合わせた熱燗で。容器はぼってりと丸みがあるお猪口がお薦めです。

金陵(きんりょう) 濃醇 純米
香川県 純米

金陵(きんりょう) 濃醇 純米

  • 度数:15度~16度
  • 飲み口:旨口

「濃醇」「旨味」を全面に出した純米酒です。このお酒はコクのある味付け、旨みのある食材に好相性です。ぬる燗から上燗でゆっくりとお楽しみください。

容量:1.8L

参考価格:1,900 円(税抜)

旨味の総量が多い濃い味なら、合わせるお酒は旨味たっぷりな生酛や山廃タイプ

おでん(関東煮(かんとだき))×「菊正宗 上撰 本醸造」【旨味が多い料理×旨味が多いお酒】

ひとつの鍋で野菜や豆腐、練り物に、卵、牛すじ、タコ、クジラなど、バリエーション豊富なタネ(具材)の数々。ベースの出汁醤油の味と、タネから出た複雑な旨味の塊。旨味の総量として濃い味味の幅を受け止める、包容力があるお酒を合わせるのがベターです。
大手蔵を侮るなかれ。日本酒はこれ一本で充分という老舗の人気おでん店も存在するほど、冷酒から燗酒まで高レベルで汎用性が高いお酒なのです。生酛造りならでは、押し味とも言われるコク旨味と、乳酸が効いた切れ味。主張が強いプッシュ型の食中酒。様々なタネから出た奥行ある旨味も、すべて受け止める横綱級です。
温度帯を合わせてぬる燗~上燗で。容器はぼってりと丸みがあるお猪口がお薦め、升酒も風情あり。冷酒の場合は筒形グラスがお薦めです。

菊正宗(きくまさむね) 上撰 本醸造
兵庫県 本醸造

菊正宗(きくまさむね) 上撰 本醸造

  • 度数:15度~16度
  • 飲み口:辛口

「雑味がなくスッキリとした味わい。しっかりとした押し味と、キレのあるのど越し」が特長の本格辛口の本醸造酒。2009年9月より伝承の生酛造りを採用。「調和のとれた味わいと、キレのある力強いのど越し」にさら磨きをかけました。

容量:1.8L

参考価格:1,762 円(税抜)

味付けは濃いけど、旨味の構成がシンプルな濃い味には、味わいがシンプルな辛口酒が合う

大衆酒場の料理をイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。モツ煮や肉豆腐、煮込みなど味付けは濃いのですが、味わい自体はシンプルです。合わせるお酒も同様に、味わいはシンプルな方がまとまり良く、生酛や山廃造りのような複雑な味わいのタイプだとお酒が勝ち過ぎて、味わいのバランスが上手く取れません。そこで、燗にしても美味しい、程よい旨味の辛口タイプの出番です。

モツ煮×「大山 特別純米 超辛口」【旨味シンプルな濃い味料理×程よい旨味の辛口酒】

超辛口、大辛口を名乗るお酒は、日本酒度が大体+10程度あります(一般的に+3を超えると辛口)。低精白の場合、雑味があるお酒もあるので、精米歩合60%以上のものを選ぶと味わいも綺麗なものが多くなり、合わせやすくなります。こちらのお酒は程よい旨味で、そこまで超辛口とは感じない分、料理の味わいとも調和するタイプです。
冷酒なら筒形グラス。温度帯を合わせた熱燗なら、容器はぼってりと丸みがあるお猪口がお薦めです。

大山(おおやま) 特別純米 超辛口
山形県 特別純米

大山(おおやま) 特別純米 超辛口

  • 度数:15度~16度
  • 飲み口:やや辛口

キレの良さに磨きをかけ日本酒愛好家の心をつかむ水質で地元でも愛されています。「超辛口」は辛いだけでなく米の旨味を感じさせ、冷~お燗まで楽しめるお酒です。

容量:1.8L

参考価格:2,950 円(税抜)

〇〇に合うお酒、本当に料理に合う?

近年は食材や料理に特化したお酒も増えました。シーフードや肉料理、ジビエから、よりピンポイントな、焼鳥、鯖、牡蠣、うどん、骨付鳥などなど。結論は、合う場合も合わない場合もあります。それは、焼鳥を例にとっても、鶏の品種や品質、部位、味付けなど、千差万別だからです。1本ですべてをフォローできるわけではないため、当然、合う合わないがでてきます。また専用酒は、特定の料理と口中で合わせた時に最高に美味しいように、酒質設計されています。そのため、そのまま飲んだ場合にはちょっと物足りない、バランスが良くないお酒が多いです。専門料理店なら、ラインナップに1本あっても良いかもしれませんが。

例外的なお薦め「川鶴 讃岐くらうでぃ」【料理×お酒で新たな味わいが誕生】

元々は地元香川のご当地グルメ、骨付鳥に合わせて美味しいお酒として開発されたもので、麹が焼酎仕込みによく使われる白麹。それも通常の麹の3倍使用で滓(オリ/白い濁り成分)たっぷり。
クエン酸が効いた、乳性飲料のような甘酸っぱさが最大の特徴です。アルコール度数は6%とほぼビール並みで、そのまま飲んでも美味しく、骨付鳥や鶏の唐揚げなど、濃い味の料理と合わせるとソース的な役割を果たします。料理とお酒を組み合わせることで、新たな味わいが生まれるペアリング手法です。
よく冷やした冷酒で、容器はワイングラスがお薦めです。

川鶴(かわつる) 讃岐くらうでぃ
香川県 本醸造

川鶴(かわつる) 讃岐くらうでぃ

  • 度数:6度

アルコール度6度の低アルコール。通常の3倍の麹。たっぷりな滓でクリーミーな味わい。ロックやソーダ割り等様々な飲み方で楽しめます。

容量:1.8L

参考価格:2,500 円(税抜)

まとめ

日本酒のペアリングは、基本的にワインほどピンポイントの組み合わせは狙いません。押さえておきたいポイントはありますが、それさえ守れば大外れはしないペアリングが可能です。
自由度が高いのが魅力でもあります。看板料理に合うお酒の組み合わせを見つけることができれば、お客様に日本酒の訴求がしやすくなりますし、お客様満足度も高まるかもしれません。ぜひ貴店でも日本酒のペアリングに挑戦してみてください。

今回は日本酒とお料理のペアリングについてお話させて頂きました。いかがでしたでしょうか。
業務用酒販最大手のカクヤスでしたら、お料理に合った日本酒を1本から仕入れる事ができます。他にも多種多様なお酒を取り扱っておりますので、ぜひ「お問合せフォーム」からお気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

西尾 明彦

年間取材100店舗以上を10数年の外食ライター。コピーライター。
日本酒会を40回以上主催する利き酒師。

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