就業規則がお店を守る!作成のポイント教えます〔飲食店開業マニュアル〕

「働き方改革関連法」の施行に伴い、企業としては労務系のコンプライアンス(法令順守)の整備が求められている昨今ですが、小規模で飲食業を展開している事業者では「就業規則」を作成していないところも多いのではないでしょうか?

今回は就業規則の必要性とアルバイトさんへの就業規則作成上の大事なポイントをいくつか報告させていただきます。

10名以上スタッフがいる店舗なら就業規則が必要

まず就業規則ですが、「常時10名以上の従業員のいる事業場」では必ず作成し、事業場ごとにそこを管轄する労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。

会社全体の総従業数で10名ではなく、事業場という店舗ごとに社員・アルバイトの総数が10名未満か10名以上で提出の有無が異なりますので、お間違えのないようにお願いします。

また「常時10名以上の従業員のいる事業所」ですので、繁忙期だけとりあえず10名や11名になってしまった場合は10名未満の扱いになりますが、仮に週1回勤務だとしても常時雇用(無期雇用)である場合は1名に数えます。

そして後述でも触れていますが、現在の考え方として就業規則を作成し届け出ることが、小規模店舗も問わず「会社を守り、勤めている従業員を守る」ことにつながりますので、今回を機に小規模店舗でも作成をしてみてはいかがでしょうか?

正社員とアルバイト  就業規則は別々に

就業規則の作成についてですが、正社員(無期雇用)とアルバイト(有期雇用)で別々に作成するのが、わかりやすく一般的です。

退職金の有無や賃金規定、福利厚生等も異なるケースが多く、アルバイトには時間帯別時給などを導入する店舗も増えたり、有期雇用契約者には、5年後の無期雇用転換などのルールあるので、一冊の就業規則に無期雇用、有期雇用で補足を入れて説明するよりは、別々の作成が主流になってきています。

飲食店アルバイトの就業規則

変形労働時間制のメリット

飲食店のアルバイトスタッフの就業規則の内容として、飲食業は社員に関して「月次の変形労働時間制」や「年次の変形労働時間制」が基本ですので、社員並みに働くフリーターさんなどが在籍している店舗なら「変形労働時間制」にした方が、急なシフト延長などが発生しやすいアルバイトスタッフに対して、月平均などで残業代計算を行う変形労働時間制は残業代加算分が節約になりやすいです。

さらに「月次の変形労働時間制」は10人未満の店舗であれば「特例事業場」の扱いになり、月次の変形労働時間制の残業代計算が週40時間での月換算でなく、週44時間での計算基礎となるので、企業側の残業代を少しでも抑える施策になります(年次の変形労働制は適用外)。

就業規則を作成しないなら、契約書がおすすめ

もし10名未満での運営店舗しかなく就業規則を作成しない場合は、労働条件通知書(雇い入れ通知書)や労働契約書がこの役割を担うことになりますが、就業規則や賃金規定の内容やその他事項すべてを、組み入れるのはボリューム的にも現実的でないです。

よって、すべての飲食店においては、「就業規則」と「雇用条件通知書または労働契約書」が「会社を守る必要条件」であるといえます。

そして実際の係争場面までを考慮すると、「通知書」という企業側からのみの通知でなく、労使双方の印を必要とする「契約書」で結ぶことが、後々「聞いていない、知らない」という対立軸がなくなるので大事なことだと思われます。

就業規則作成のポイント

不良社員・不良アルバイト

就業規則の各項目に関して少し触れておきます。盛り込む事項には、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」の3つがあり、「絶対的必要記載事項」や「相対的必要記載事項」は例文などもかなりオープンになっていますが、特に「任意記載事項」の中で、「懲戒規定」を盛り込むことが、会社を守る上で重要と言われています。

といいますのも、昨今は労働法等の法律を逆手にとった「不良社員・不良アルバイト」も増えてきています。一般的に刑法に触れるような事件を起こせば、懲戒解雇を始めとする解雇権も有効であるようなケースは多いですが、「よく店長の陰口を叩く」とか「遅刻が多い」、「配送中に車をぶつけて会社に大きな損失を与えた」などでは、法律上は即刻解雇が有効とはならないのが大半です。

お店や会社を守るために

「アルバイトだし、不良な人材はシフトを1日も入れなければ勝手に辞めていくだろう」と実施すれば、相手側から「シフト制とはいえ、面接時では週3位は入ってもらいたいと伝えられていた」として、逆に訴えられて負けるケースが最近は多いです。

「不良」対策は、事件ごとに「始末書や顛末書」といったルール化と、本人の反省を促す事実がないと有効とみなされないことが多いです。始末書も懲戒処分のひとつと見なし、「懲戒処分を再三にわたって受けたにもかかわらず、なお改善の見込みがないときに、懲戒解雇を行うものとする」などと記載しているところが多いかと思います。

不良スタッフに対しては、始末書を数回介しながら、「減給」や「出勤停止」などの段取りを踏んで、最後に解雇権を用いないと問題になることが多いと、人事労務の対策セミナーでもよく聞く話です。

アルバイトの有給休暇

よく話題なる「有給休暇」についても報告します。有給休暇は「絶対的必要記載事項」 であり、最近では2019年4月に「年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対して、年5日分を使用者が時季指定し、取得させる」ことが義務化、『年次有給休暇管理簿』として保管することも制定され、これにより就業規則の改定や変更届が数多く出されたので、有給休暇についてクローズアップされたことがありました。

有給休暇に関してはそれ以前の段階から、就業規則で週1勤務の従業員に対して、半年経てば1日間の有給休暇、1年半経てば2日間の有給休暇を付与しなければいけないと必ず明記されてありますが、それは皆さん知っていましたか?もちろん、週1日勤務がいつも2時間であれば、1日といっても2時間分の有給の付与で構いませんが。

こういったことも知っておかなければいけませんね。就業規則はまさに従業員と企業の双方が安心して仕事をする「礎」ともいえます。

さいごに

就業規則は「助成金」等を申請する際にも必要になります。助成金は1店舗企業でも200万円~300万円出るケースはザラですので、ぜひこういった機会に就業規則を作成したり、見直したりしてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

丸山 恭一

株式会社人創り・組織創り 代表取締役

1968年神奈川県横須賀市生まれ。1991年北海道大学原子工学科卒業後、株式会社リクルートコスモス入社。出向等含めリクルートグループに営業として約5年勤務した後、有限会社エービーシー・マートへ転職し、株式会社エービーシー・マートの一部上場までの約7年間、店舗開発から人事・総務・MD・バイヤー等の本部運営に従事。

その後、飲食業の人事系コンサルティング会社(株式会社リンク・ワン)で約7年間、プロ店長事業、FC事業、コンサルティング事業の営業を担当し、40歳で現会社を創業。

飲食に特化した店長、ホール、キッチン系人材の派遣から、教育研修・FC構築・中期経営計画・労務系のコンサルティング、一方で、コスト削減やコストパフォーマンスを追求した、家賃・光熱費削減、節税、助成金、満席FAX、タブレットPOS等の営業やセミナーを行う。


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