単価を上げる!リピーターを増やす!今日から使えるWin-Winのワインペアリング理論
先日お客様に「このお料理に合うワインペアリングを教えて欲しい」と言われました。うちのお店はカジュアルなダイニングバーで、コース料理の価格帯も高くないのに驚きました。
最近の飲食店のメニューに「ワインペアリング」と書かれていることが増えてきましたね。SNSでもよく見かけるキーワードなので、身近に感じる人が増えているのでは無いでしょうか。
そもそも「ワインペアリング」と「マリアージュ」は違うのでしょうか。お肉には赤ワイン、魚には白ワインというのはよく聞きますが、他に気を付ける事がありますか?
実際にお店で提供しようとすると、難しく考えてしまうのかもしれませんね。このページではお店のメニューで実践できるワインペアリング理論を説明していきましょう。大丈夫です!難しくありません!
「ワインペアリング」と「マリアージュ」の違い
「ワインペアリング」とは
「このお料理には、このワインを合わせるとより美味しく楽しめますよ!」
それがワインペアリングメニューです。
ワインペアリングが浸透した理由には「シェフお任せコース」に絞って料理を提供しているお店が増えてきたことも要因の一つです。少しずつの量で、たくさんの品数を出す「シェフお任せコース」は食材の無駄を省き、料理人の仕事を集約させることができます。
その一方で、一本のワインだけでそれぞれの料理との好相性を生み出すのは至難の業でした。そこで少しずつのグラスワインを「シェフお任せコース」のそれぞれの料理に合わせることにしました。ワインペアリングは料理にぴったりのワインを、良い状態で提供でき、さらにワインロスを削減できる事から、お店にとってもお客様にとってもWin-Winの関係になったのです。
「マリアージュ」とは
日本ではワインペアリングのことを「Mariage(マリアージュ)」と言う事があります。「Mariage(マリアージュ)」はフランス語で「結婚」を意味する名詞です。
ですがフランス語でワインペアリングは「Les accords mets et vins(レザコール ・メ・エ・ヴァン)」と言い「料理とワインの一致」と意味します。さらに英語の「Pairing(ペアリング)」でも十分通じます。
私の解釈では「ペアリング」は単に料理と飲み物のセットのことを指し、「マリアージュ」は料理と飲み物の相性を意味しています。『ペアリングをうまくさせた結果、良いマリアージュが完成した』というふうに使い分けています。
しかし、これらは相反する言葉ではなく「マリアージュ」は「ペアリング」ゆえの効果のことを指しているので、あまり使い分けを難しく考えなくてもいいかな。というのが私の本音です。美味しい組み合わせだったら「Bon・mariage!(ボン・マリアージュ!)」ってフランス人もよく言いますしね。
飲食店で使える「ワインペアリング」基本3ヵ条
レストランにおいても、おうちごはんにおいても、ワインと料理を合わせるには「法則」があります。この法則を使えば、簡単に、誰でも、納得する料理合わせをすることができます。
その1.ペアリングにおいて最も合わせやすい観点を見よう
ペアリングにおいて最も合わせやすい観点、それは「同調」です。さらに細かく「香り/風味の同調」「酸味の同調」「テクスチャーの同調」「重たさの同調」「温度の同調」に分けられます。
「香り/風味」と「酸味」の同調
「香り/風味」「酸味」の同調に関しては、ワインと料理のそれぞれの香りや味を分析して、共通する部分を合わせてみてください。
ただし、レモンのような柑橘の風味と酸味があるからとワインも同じ風味の酸の高いワインを合わせると、今度は同調しすぎて味気なく感じてしまうことがあります。方向性を同じにしつつ、少しズラすと感動的な組み合わせに出会えるでしょう。
「テクスチャー」の同調
テクスチャーの同調とは、例えばクリーミーな味わいの料理なら、クリーミーなテクスチャーを持つ白ワインやスパークリングワインがよく合います。揚げ物のようなクリスプな(サクサクした)食感のある料理には、シャキッとしたミネラル感のあるワインが合いますし、噛み応えのある肉料理なら酸味とタンニンが強く骨格のしっかりとした赤ワインは定番の組み合わせです。
「重たさ」の同調
重たさの同調はテクスチャーの同調とも関連します。ワインにはボディがあり、やはりライトボディのワインには軽めの料理、フルボディのワインには重ための料理が合います。さらに咀嚼の同調、つまり口中に残る時間も同じくらいにすることがポイントです。口中に残る料理とワインの時間や風味の強さが重なり、「合っている」という感覚をもたらします。
「温度」の同調
例えば温かいお料理に、うんと冷やした白ワインやスパークリングワインを合わせると、口の中で料理の温度が下がってしまい、せっかくのお料理の美味しさを半減させてしまいます。ワインには良さを活かす温度帯がそれぞれありますが、温かいお料理には日本酒のようにお燗をしないまでも、口中のギャップが少ない温度帯で提供するのが良いでしょう。
その2.ペアリングの対比で新たな相乗効果を生み出そう
対比はそれぞれ対象になるものをぶつけることで、新たな相乗効果を生み出す組み合わせです。第3の新たなハーモニーが生まれて、感動を生むことが多いのもこの対比ペアリングの特徴です。
成功しやすい対比の組み合わせは「酸味 vs 果実味」「塩味 vs 果実味」「油脂 vs 酸味」「油脂 vs タンニン」「塩味 vs 甘味」です。これは「料理の要素 vs ワインの要素」で表示しています。
酸味 vs 果実味/塩味 vs 果実味
料理にある酸味や塩味はワインの果実味を持ち上げるので、ワインがより美味しく感じる効果を生みます。
油脂 vs 酸味/油脂 vs タンニン
油脂分はワインには無い要素で、さらに水と油のように反発する要素です。ですがワインの酸味やタンニンは料理の油脂分を中和してくれて、口中で一体感が生まれる手助けをしてくれます。
塩味 vs 甘味
塩味と甘味のコントラストの相性の良さは、塩キャラメルのようにお菓子や料理の味付けにも利用される黄金の組み合わせです。
ワインには少し甘味を残したオフ・ドライから半辛口のスタイルもあるので、これらの味わいのワインはデザートではなく料理に合わせて楽しんでいただきたいです。
この対比の組み合わせは、意外なところで調和し、相乗効果がはっきりとあらわれるので驚かれることが多いでしょう。お客様からの反応もよく、信頼も得られて、スタッフのやりがいにつながります。
その3.ペアリングで足りないものを補って完成させよう
つまり「補完」のことです。「五味(甘・酸・塩・苦・旨)の補完」「風味の補完」があります。
五味(甘・酸・塩・苦・旨)の補完
五味(甘・酸・塩・苦・旨)の補完は、料理の味わいの足りない部分をワインで埋め合わせるペアリングです。
例えば、以前私が働いていたホテルの中華料理を提供するレストランでは、グラスワインとしてアルザスの白ワイン(ゲヴェルツトラミネールという品種)が非常に人気でした。このワインは、ほんのりと甘さの残る半辛口で、優しい酸味があり、オリエンタルスパイスやジンジャーの風味を感じるアロマティックな特徴があります。中華料理の場合、旨味や塩味、スパイシーな辛味や苦味はありますが、酸味や甘味がいくぶん低い料理が多いので、ワインを飲むことで五味が完成するという理論です。
風味の補完
風味の補完は、例えば黒コショウのようなスパイシーさを香りや風味に感じるワインを、スパイスを足したいようなお料理に合わせて、ワインが料理の一部になるような組み合わせにすることです。
例えば牛や羊などの赤身のグリルには、黒胡椒やドライハーブの風味が特徴の南仏のワイン(シャトー・ヌフ・デュ・パプやジゴンダスがおすすめ)を合わせるのは定番の組み合わせです。
気をつけたいのは、ペアリングをおすすめするときの説明で、「料理の邪魔をしません」とか「なんでも合います」といった理由に逃げないことです。この理由だと「水が一番料理に合いますよ」と勧めているようなものだからです。
飲食店で「ワインペアリング」を導入する為に ~「量」と「値段」の設定
ワインペアリングの提供量を想定する
ワインペアリングの提供量は、お店の業態や、コース仕立てなのか、グラスワインとしてなのか、ペアリングの提供方法によって変わります。
例えばアラカルト1品に合わせるなら、グラスワインの提供量と同じ80〜120mlを1杯として提供します。
「ペアリングコース」のように何種類も提供する場合は、全体でボトル半分〜3/2の量になるように設定されているお店が多いです。なぜならコースに合わせたペアリング以外に食前酒を頼む方も多く、またペアリングは酔っ払う事が目的ではなく、飲み放題とは違うからです。
ペアリングの良い点は、こまめにお客様を見ることができることです。お客様の飲む量やスピードに合わせて量を調整して、少し少なく注いだり、少し注ぎ足したりして、全体のコストを調整したら良いでしょう。
ワインペアリングの値段を設定する
ペアリングコースの値段設定を考えたとき、コース料理と同じ値段~半額の間が一般的です。
1アイテムずつの値段で考えるのではなく全体のコストをみて考えれば、普段グラスワインで提供できないような高価格帯のワインも組み込むことができます。
酸化防止用品として以前からある「バキュバン」の他にも、最近は「プルテックス」や「アルゴン ワインセーブ」でガスを置換して長くワインを保存できる方法もあります。ペアリングがよく出るお店は、飲み物のコストを抑えつつ、お客様の満足度が高くなります。
おすすめの酸化防止用アイテム
内側にある酸化防止カーボンフィルターでワインの酸化を抑え、シリコーンでボトルの口を密閉します。 ボトル内の酸素を抜いたりガスを注入したり・・・などの手間はいりません。ボトルにかぶせるだけですので簡単便利です。
「ワインペアリング」を飲食店に導入する意味
ドリンクオーダーで、最初にビールなどの食前酒を頼むとそのままグラスワインや酎ハイやビール…といった消極的なオーダーが続き、ワイン消費に繋がらないお客様が目立ちます。
フランスで働いていた頃、よくシェフやマネージャーから「ワインは自分から楽しく、美味しさを積極的に伝えにいかないと!」と怒られていました。旅行で来られた日本人のお客様を担当することが多かったのですが、積極的にオーダーを取りに行けず、いつも受け身のサービスになっていたからです。今思うと本当に自分勝手に、何もお客様のことを知らないのに「あんまり飲ませたらいけない、お金を使わせて嫌な思いをさせたくない」と思い込んでいたのです。
私自身、今は食べたり飲んだりする時間は(お値段が高すぎるのも困りますが)美味しいものを頼んで楽しもうと思っています。サービススタッフから色々提案されるのは大歓迎です。もちろんこれも私個人の考え方なので、十人十色の合わせ方ができるのが理想です。ですが、お店の色が見えてくると「類は友を呼ぶ」という通り、自分の料理やサービスに合った心地よいお客様が集まってくると思います。
ということで、早い段階で「お店に任せてくださると、ワインと料理との感動するペアリングを提供しますよ!」とアピールすることも必要です。
また、あらかじめペアリングワインをセットにした一品料理のメニューにするアイデアはいかがでしょうか?
飲食店で今すぐ使える「ワインペアリング」例
焼き鳥の鳥肉串×ワインペアリング例
タレ系なら、同じ甘やかな風味を持つワインで酸味やタンニンが強くない芳醇な味わいの赤ワインがおすすめです。例えば、温暖な地域でつくられたメルローやジンファンデルといった品種を使ったワインがそれに当たります。
麻婆豆腐×ワインペアリング例
麻婆豆腐は豆板醤の辛味、甜麺醤の甘味、そして花山椒の清涼感のある強い風味のお料理です。
ボリュームを合わせるなら赤ワインで。さらに山椒を思わせる清涼感ある風味を持つチリのカベルネ・ソーヴィニヨンやカルメネールという品種のワインがおすすめです。
辛味との対比で甘味が少し残るリースリングやゲヴルツトラミネールの白ワインでも良い相性が生まれます。お客様がその料理を食すタイミングや好みで使い分けましょう。
餃子×ワインペアリング例
一般的な餃子であれば、ニラやニンニクなど香味の強い具、クリスプな皮の部分、ラー油をつける場合は辛味が足された味の構成になります。あまり重たい料理ではないので、ワイン自体のボディも比較的軽めの辛口ロゼワインと合わせるのが私の鉄板となっています。ロゼワインは赤い果実や柑橘などの果実味をベースに、ピンクペッパーを思わせるスパイスやハーブのような清涼感があり、クリスプな食感と同調する軽快でミネラリーな味わいが特徴です。
紫蘇を入れた餃子なら、ピノ・ノワールのロゼにするとより香りの同調が楽しめるのでおすすめです。
「ワインペアリング」におすすめするワインに迷ったら
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この記事を書いた人
松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
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