MW(マスター・オブ・ワイン)大橋健一氏&ソムリエ渋谷氏による「カクヤス厳選シャンパーニュ」試飲レポート|前編
日本在住で唯一のマスター・オブ・ワインとして国内外で活躍する大橋健一氏。
豊富な知識をベースに日本のワインシーンを牽引し続ける渋谷康弘氏。
ワイン業界の大御所であり、シャンパーニュへの深い知識と理解を持つ2名にとって、カクヤスが扱うシャンパーニュはどのような存在なのだろう?計9本を比較試飲した上での厳正なるコメントから、各ボトルの個性と価値を探っていこう。
大橋健一(Kenichi Ohashi)
「株式会社 山仁」代表取締役社長。世界でまだ340人ほどしか認定されていない最上級ワイン資格、MW(マスター・オブ・ワイン)に合格。コンサルタント、講師、ワイン・コンクールの審査員役なども務める。
渋谷康弘(Yasuhiro Shibuya)
「株式会社 グランクリュ・ワインカンパニー」代表取締役社長、会員制「ザ・コンコルド・ワインクラブ」を主宰する。ヨーロッパでワインを学んだ後、外資系ホテルでのチーフ・ソムリエを皮切りに数々の一流レストランで支配人として采配を振るう。
L.B.N. (エル・ビー・エヌ)
L.B.N.(エル・ビー・エヌ)は、創業1963年「フレッシュ&ドライ」な現代的スタイルのシャンパーニュです。セザンヌ地区の白亜土壌で栽培されたシャルドネがオリジナリティのある個性を引き出しています。2019年5月に初入荷し、ザ・コンコルド・ワインクラブと、なんでも酒やカクヤスでのみ限定流通しています。正式名称のLe Brun de Neuville(ル・ブルン・ド・ヌヴィル)は少々発音しにくいメゾン名ですので、ぜひ「L.B.N.(エル・ビー・エヌ)」の略称でご愛顧ください。
L.B.N. コート ブランシュ Côte Blanche NV
白ブドウ品種だけを使ったシャンパーニュのブラン・ド・ブラン。シャンパーニュ好きのなかでも「とくにブラン・ド・ブランが好き」という方は、常に一定数いらっしゃいます。
この「コート・ブランシュ」はブラン・ド・ブランですが、タイプは一般のものとやや異なるのではないでしょうか。アカシア、グリーンアップル、アニスのアロマがあり、空気に触れるとホイップクリームやレモンピールも香ります。立ち昇る泡は、レースの飾り襟のようにデリケートです。
日本には多くのブラン・ド・ブランが輸入されていまして、一般的に味わいが硬く、強烈にフレッシュな印象です。この「コート・ブランシュ」はやさしい泡立ちで、いわば「驚異的にやさしい」。品質も高いですね。
複数年のワインをブレンドするのがシャンパーニュの醍醐味ですが、とくにこのシャンパーニュは、年月の経ったリザーヴものを惜しげなくブレンドし、瓶詰してから60ヵ月もの熟成期間を設けているのが特徴的です。
60ヵ月はさすがに長い!
その時間の長さが味わいに貢献しています。通常、シャンパーニュは最低熟成期間15ヵ月と法律で決められています。しかし今は供給量不足で、アッサンブラージュ(ブレンド)用に長期熟成させたリザーヴ・ワインを確保し続ける余裕がなくなってきています。多くのメゾンが「できるだけ早く」とリリースしてしまうと、どれもなおさら硬い味わいになりがちです。
しかし、こちらは長期熟成のおかげで泡立ちはクリーミーになり、とろけるような口当たりを実現しています。
ペアリングとしては、生の魚介類との相性は申し分なし。和食ですと、松葉ガニやまつたけなどに合わせたくなります。
または、クセのない白身魚を使ったつみれ鍋、洋風では魚のクネル(フランス リヨンを代表する郷土料理です。白身魚のすり見にソースをかけて、オーブンで焼いたものです)。ソフトな味わいのブラン・ド・ブランだからこそ、お料理もソフトなタイプが合わせやすいと思いました。
テイスティングコメント動画
L.B.N. エクストラ・ブリュット Extra Blanc NV
同じ造り手の「コート・ブランシュ」に比べると、こちらは酸のストラクチャーがしっかりしていてシャープな味わい。一般的なブラン・ド・ブランのキャラクターが捉えやすいシャンパーニュです。
最初の口当たりはしなやかで爽やか。クリーミーでとろけるような泡立ちを見せながら、次第にレモンの酸味とミネラルが口中に広がっていきます。香りも「コート・ブランシュ」よりややフレッシュさがありますね。レモンなど柑橘に加え、ヘーゼルナッツ、アカシアの花、スズラン、ヨードなどの香りも感じ取れます。
シャープさと同時に、一定のソフトさもベースに保っています。やはり、長期熟成を経たリザーヴ・ワインのおかげでしょう。このシャンパーニュの生産を担っているのは協同組合。いわば全生産者がオーナーであり、皆がリザーヴ・ワインを持ち寄って造ることのできる強みがあるんです。
もしこの造り手が通常のレコルタン・マニピュラン(栽培から醸造まで一貫して行う小規模生産者)ですと、多種類かつ大量のリザーヴ・ワインを抱えておくのは困難ですからね。エクストラ・ブリュットとなれば、さらにタイトな味わいになりがちなのです。
いやあ、本当にいいですね、これ。
海の幸全般と相性はいいですが、とくに生牡蠣と合わせたくなるでしょう。
生牡蠣とこのシャンパーニュのペアリング、ぜひハイエンドな店でどんどんいただきたい。やや還元的なニュアンスもあるシャンパーニュだからこそ、甲殻類を使った料理とは香りでつながりやすく、ペアリングがしやすいはずです。
L.B.N. エクストラ・ブリュット
- 品種:シャルドネ100%
- 熟成:3~4年
- ドサージュ:約4g/L
- リザーヴワイン:15~20%
- 度数:12%
容量:750ml
参考価格:6,470 円(税抜)
テイスティングコメント動画
L.B.N. コート・ロゼ Côte Rosée NV
ロゼのシャンパーニュは視覚的な魅力がとても重要です。ロゼの色は様々で、ほとんど色の付いてない白ワインのような色のロゼや、逆に濃厚でインパクトのある赤ワインのような色のロゼもあります。
「コート・ロゼ」の場合、じつにロゼ・シャンパーニュらしいおしゃれなサーモンピンク色でしょう?
私は個人的に、ロゼはこのレベルの色調がちょうどいいと感じています。白でも赤でもないロゼのシャンパーニュであることをきちんと外観で主張してもらえると、消費者もすんなりとワインのタイプを認識できます。
気泡は繊細かつ細やかで、グラスに鼻を近づけますと、ラズベリーやストロベリーなど果実のアロマが華やかに広がりますね。ベリーのような甘酸っぱい個性が感じられ、余韻まで豪華な印象です。シャルドネとピノノワールを使いつつ、さらにピノノワールの赤ワインを15~20%ブレンドするロゼ・シャンパーニュなのです。
シャンパーニュはほかのワインと異なり、特別にワインのブレンドが認められているのですが、それにしても赤ワインのブレンド比率がずいぶん高いですね。おかげで赤い果物の香りがすぐに嗅ぎ取れ「ピノ系のブドウをたくさん使っているな」と、香りだけですぐ想像できます。
また、通常のロゼはもっと軽快ですが、こちらは赤ワイン由来のタンニンが口のなかに残るので、しっかりとした味の料理と合わせたくなりました。トマトソースを添えた鶏肉などいかがでしょう。
ブラン・ド・ブランとロゼは、同じ生産者でもだいぶタイプが異なりますよね。両者の間には、年を重ねて似合うものが変わっていくような駆け引きがあります。最初は白いドレスを着ていた人が、次第に桜色の着物も似合うようになる・・・そんな成長を重ね合わせ、楽しんで飲んでいけます。
テイスティングコメント動画
L.B.N. ドゥース コート ドゥミセック DOUCE Côte Demi-Sec
こちらはドゥミ・セック(甘口)のシャンパーニュ。熟成は72ヵ月。同じ生産者のほかのシャンパーニュと同様、非常に長い熟成期間を設けています。深みのあるイエローの色調が特徴的で、白いバラ、白桃、リンゴの蜜、マーマレード、焼きたてビスケットに似た甘い香りが広がります。口当たりはクリーミーで甘酸っぱいスタイルです。
甘いもの好きの多いアメリカの市場では、同じドゥミ・セックのシャンパーニュでも、もっと甘さの強いタイプが出回っていますよ。
日本では甘口より辛口のほうが支持されていますから、ドゥミ・セック自体珍しい部類に入るかもしれません。歴史を紐解いてみれば、もともとシャンパーニュは19世紀半ばまで甘口が主流だったのですが。
とはいえ、あまり糖分が多すぎると、口中は余韻まで糖分に支配されてしまいます。
こちらはドサージュ(シャンパーニュの糖分と容量の調整のため甘いリキュールを加える作業)が35g/Lでして、ドゥミ・セックだけに糖度は高い。
いや、35g/Lという数字は、甘口シャンパーニュにしてはまだ控えめなほうです。「ちょっと甘めのブリュットかな?」と思わせるくらいの軽やかさを見せてくれるバランス感覚が素晴らしい。冷やし気味でサービスすれば、ブリュット愛好家の方々でも十分に楽しめるドゥミ・セックです。
気泡もまた、繊細で柔らかでクリーミー。チャーミングなスタイルだと思います。甘味の強いシャンパーニュはペアリングが難しくなりますが、これならお食事と合わせても問題ないですよね。
もちろん大丈夫です。
パテ・アン・クルート(肉のパテのパイ包み)などはいかがでしょう。シャンパーニュのやわらかい泡立ちと口当たりにはパテが寄り添い、シャンパーニュの香ばしさにはパイの香ばしさが寄り添います。
テイスティングコメント動画
OHASHI’S SUMMARIZE~大橋氏による概説~
4つのシャンパーニュをテイスティングし、共通するキャラクターが確実にある点を評価しました。どれも泡立ちがやさしく、たとえシャープになりがちなブラン・ド・ブランであってもL.B.N.(エル・ビー・エヌ)ならソフトなテクスチャー。それがブランドの一貫性となり、市場でも統一感のあるアピールが可能となります。
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