国際的にも評価急上昇!日本ワインの代表的産地の特徴とトレンドを徹底解説〔前編〕
「ワイン消費数量は平成の30年間で3倍以上に。令和の時代にはワインが日常に定着」
これは、日本ワインのリーディング・カンパニーのひとつであるメルシャン株式会社が、日本のワイン市場について2021年10月に発表したレポートの一文です。今や飲食店のドリンクメニューには、ビールやサワー系だけではなく、アイテム数は多くなくともお店の個性に合わせたワインが必要な時代となっています。
さらに同レポートでは、「日本産ぶどう100%で造る “日本ワイン” の出荷量は2014年からの5年間で約6%増」とのこと。確かに、私の周りにも日本ワインに興味を持たれる方がとても増えたように感じます。
近年、国際的にも高い評価を獲得しており人気も急上昇中の日本ワイン。日本ワインをドリンクメニューに取り入れたいがワインにそう詳しくなく、どこから手をつけていいのかわからない方々に、代表的な産地と産地ごとの特徴・トレンドをご紹介します。お店にふさわしい日本ワインをドリンクメニューに加え、売上アップをはかっていきましょう。
日本ワインとは?
まず初めに、日本で生産されるワインは「日本ワイン」と「国内産ワイン」に分かれています。2015年に国税庁が定めた「ワインのラベル表示ルール」によって、現在は「国産ワイン」という表示は存在しません。
日本ワインと国内製造ワインの違いを理解しておく
参照:「果実酒等の製法品質表示基準について」国税庁
編集・加工:カクヤス編集部
①「日本ワイン」は、国産ぶどうのみを原料とし、さらに日本国内で製造された果実酒を指します。
②「国内製造ワイン」は、日本ワインを含む、日本国内で製造されたすべての果実酒と甘味果実酒を指します。
③「輸入ワイン」は、海外から輸入された果実酒と甘味果実酒を指します。
日本ワインの産地ランキングは?
国税庁の調査では、2020年3月現在の国内のワイナリー数は369場で、前年より38場増加しました。佐賀県と奈良県、沖縄県を除く全ての都道府県にワイナリーが存在しています。都道府県別にみると、山梨県 (85場)、長野県(55場)、北海道(42場)の上位3道県が全体の49.3%を占めています。
生産量で比べると、国内製造ワインの 20.8%が日本ワインであり、山梨県(31%)、長野県(20.2%)、北海道(18.5%)の上位3道県で全体の69.7%にもなります。
出典:「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和3年調査分)」国税庁
日本ワインの産地ごとの特徴・トレンド
都道府県別日本ワイン生産量上位5県(山梨県、長野県、北海道、山形県、岩手県)と、日本を代表する黒ブドウ品種マスカット・ベーリーAの原産地である新潟県、そして新興勢力・九州も加え、各地区の特徴を解説していきます。
前編で山梨県、その他の県は後編でご紹介しますのでお楽しみにお待ちください。
- 生産量日本一!山梨のワイン
- 長野のワインはメルロー・シャルドネが高評価
- 北海道のワインはヨーロッパ品種のよう
- 果物生産レベルが高い山形のワイン
- 冷涼な気候から生まれる岩手のワイン
- 個性派ワイナリーが多い新潟のワイン
- 成長著しい新興勢力、九州のワイン
生産量日本一!山梨のワイン
生産量、ワイナリー数、ともに日本一の山梨県は、日本を代表するワイン産地として国内外に知られています。
山梨県のぶどう畑の大半は甲府盆地にあり、周りを山に囲まれているため、夏から冬の気温差が大きく降水量が少ない気候環境です。このような環境はまさに、ワイン用ブドウの栽培に最適といえます。
北はワイン特区にも指定されている北杜市から、甲府盆地の底にあたる甲府市、さらにワイナリーの数が多く山梨ワインの中心地とされている甲州市勝沼町や、注目度の上がっている甲州市塩山地区、そして笛吹市など広範囲でブドウが栽培されています。日本を代表するような有名ワイナリーも多く、国際コンクール受賞ワインが多数ある、まさに日本ワインを引っ張っているワイン県です。
山梨原産「甲州」は日本を代表する品種
日本で一番栽培されているワイン用品種は甲州種です。そしてこの品種の約93%が山梨県で生産されています。
この白ワインに使われる品種は、藤紫色の果皮をしています。このような果皮に色がついている白ブドウ品種を、グリ品種(グリとは灰色という意味のフランス語)とも言います。
食用として昔から栽培されていた品種でもあったので、一般的なワイン用ブドウの中では酸味レベルが低めで、果実味の優しいワインとなります。昨今、収穫時期の違いや醸造技術の違いにより様々なスタイルのワインが登場しています。
<スッキリ・爽やかタイプ>
ワインにすると香りの要素が比較的少ないと言われがちな甲州種ですが、甲州ブドウが潜在的にもっている香りを活かした人気のスタイルです。
カボスやすだちのような和柑橘の風味と爽やかな酸味のあるライトボディのワインとなり、食材の味わいを活かした繊細な料理とよく馴染みます。
<シュール・リー製法を使ったタイプ>
シュール・リー(Sur Lie)とは、フランス語で「オリの上」という意味です。日本では数年の試行錯誤を経て1983年にメルシャンが甲州種のワインづくりに取り入れました。
発酵終了後にオリ引きをせず春まで「オリの上」にワインを寝かせることで、よりフレッシュさを保持でき、さらにオリがワインに旨味成分を与えてまろやかな味わいとなります。この製法を使うと、甲州種の果皮からくる特有の苦味が少なくなり、飲みごたえのある辛口甲州になります。
元々甲州種は魚介と一緒に飲んでも臭みを強調させない特性を持っていますが、シュール・リーをすることでさらに魚臭さが出にくくなるというレポートも発表されています。まさにこのスタイルのワインは、お寿司に合わせても違和感なく楽しめます。
<樽を使った濃厚タイプ>
ブドウ自体に強い個性がないことは、逆に醸造によって加わる樽の個性を溶け込ませるのには最適といえます。
繊細さが持ち味といえる甲州種ですが、バニラやクローヴ、トーストのような樽香が加わり、よりリッチな味わいになります。揚げ物やローストしたお料理、西京焼のように香ばしい味噌の風味と相性が良く楽しめます。
<オレンジワインスタイル>
甲州種を使ったワインにも、今トレンドの、オレンジワインスタイルがいくつか登場しています。オレンジワインとは白ブドウの果皮を長く漬け込みながら発酵させたワインのことで、オレンジ(アンバー)色が付くのみならず、果皮にふんだんに隠されている香りの成分や渋味がワインに溶け込んでいます。
甲州種は果皮に藤紫色の色素をもっているので、一般的な白ブドウよりも渋味の成分(タンニン)を多く含みます。今まではこの苦味は余計なものという認識で、よりクリアな味わいが主流でしたが、甲州種特有の苦味を個性と捉えたオレンジワインは、ワイン愛好家の注目の的です。
果皮を漬け込んだ醸造のおかげで、フルーティーさの中にコクや旨味があります。立体感のある味わいは、幅広い料理と合わせることが可能です。例えば中華料理や揚げ物とならワインの渋味が料理の油脂分をスッキリさせてくれますし、山菜の天ぷらのように野菜の旨味、苦味、さらに衣の香ばしさがオレンジワインと調和するのでおすすめです。
山梨のワインは地域によっても特徴が分かれる
山梨県内でも微妙な気候の違いなどから地区ごとの特徴となる品種やワインのスタイルが異なってきます。日本一の生産地だからこそ、いくつか地域別に選ぶのもいいでしょう。
甲州ブドウ発祥の地・甲州市勝沼町
たくさんのワイナリーが存在し、山梨ワインの中心地と言っても過言ではない、旧・勝沼町。ワイナリーが12軒も集中している地区です。
ここは甲州盆地の東、山麓斜面や扇状地に棚仕立てのブドウ畑に甲州ブドウが集中して栽培されています。斜面は南から南東向で、また盆地なので夏は非常に暑く、ニュースでも「国内で一番暑い地域です」という中継を見たことがあるのではないでしょうか?ただ、夕方になると「笹子おろし」と呼ばれる風が吹き抜けてくれるので、これが昼夜の寒暖差をうみ、ブドウはよく熟すが酸味は比較的残りやすい、ワインづくりに適したブドウとなるのです。
おすすめ生産者
- 勝沼醸造
- マンズワイン勝沼ワイナリー
- フジッコワイナリー
- グレイスワイン
- まるき葡萄酒
- 丸藤葡萄酒工業
- 大和葡萄酒
- ロリアンワイン 白百合醸造
- グランポレール 勝沼ワイナリー
- 岩崎醸造(ホンジョーワイン)
- ダイヤモンド酒造
- イケダワイナリー
- 蒼龍葡萄酒
標高のある甲州市塩山地区にも注目
甲府盆地の北東、旧・塩山市のこの地区は、勝沼町よりも標高が高く、全体が南向きの扇状地となっています。高台に上がれば冬にはくっきりと富士山が見えるところもあり、昔から美味しい果物が栽培できると評判で、桃やブドウ(食用の巨峰)などの栽培が盛んです。
近年、平均気温が上がったことにより、標高の高さや山から吹きおろす冷たい風の影響で日較差の幅が広いこの塩山地区は、ワイン愛好家からも注目度の高い新しいワイナリーが増えています。
おすすめ生産者
- 機山洋酒工業
- 駒園ヴィンヤード
- 奥野田葡萄酒醸造
山梨の赤ワインといえば韮崎市穂坂町
甲府盆地の北西部にある韮崎市は、甲府盆地の他地区よりも標高が高く、気温や降水量が下がり、よりヨーロッパに近い気候環境となります。日照量にとても恵まれており、黒ブドウを十分に熟させることができる場所です。日本を代表する品種、マスカット・ベーリーAの評価が高く、勝沼のワイナリーでも韮崎の方から黒ブドウを供給している方が多いです。
おすすめ生産者
- マルス穂坂ワイナリー
新たな畑が次々ひらかれているワイン特区の北斗市
山梨県の北西の端にある北杜市は、標高が700mくらいある場所で、西の南アルプス、東の茅ヶ岳、北の八ヶ岳が雨雲を遮ってくれることから日本一日照時間があると言われています。特に、なだらかで広大なブドウ園をひらくことができる明野地区の、ヨーロッパ系品種でつくったワインの評価がどんどん上がっています。
おすすめ生産者
- グレイスワイン
- スズラン酒造工業
- フジッコワイナリー
まとめ
前編では山梨県で作られる日本ワインの特徴とトレンドをお話ししました。後編では長野県、北海道、山形県、岩手県、新潟県に新興勢力の九州も加え、各地区の特徴を解説していきます。どうぞお楽しみに!
ピンクの看板でおなじみの酒屋、なんでも酒やカクヤスでは今回ご紹介した山梨県の日本ワインの他にも様々な日本ワイン、輸入ワイン、その他様々なお酒を取り扱っています。カクヤスなら年中無休、365日自社配送でお届けいたします。
メニューのご相談や仕入れの見直しのご相談など、どうぞお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
松木 リエ
- WSET Level 4 Diploma(2021年合格)
- A.S.I. 世界ソムリエ協会認定 インターナショナル・ソムリエ・ディプロマ- ゴールド(2020年合格)
- J.S.A.認定 ソムリエ・エクセレンス(2014年合格)/ SAKE DIPLOMA(2017年合格)
- WSET Level 3 Certified(2016年合格)
- IWC インターナショナル・ワイン・チャレンジ審査員
- 2015-2016 WSET Level3 Decanter Asia Wine Scholarships
- 2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール 第4位
- 2006年 第4回 JALUX Wine Award 準優勝
- 2005年 第4回 Louise Pommery Sommelier Concours 第3位
- 2005年 第6回 ロワールワイン若手ソムリエコンクール優勝
- 2003年 第4回 Commis Sommelier Concours 最優秀賞
2000年より「オテル ド ミクニ」「タイユバン ロブション」などを経て、2006年渡仏。パリ、エクサンプロヴァンス、カシスの星付きレストランで計6年間ソムリエとして従事。2012年に帰国し、「マンダリン オリエンタル 東京」にてソムリエを3年間務め 2015年11月に独立。
その後アカデミー・デュ・ヴァン講師を経て、2019年より キャプラン ワインアカデミーにてWSET認定講師を務めている。
海外ワイン産地での研修により、南アフリカワイン協会(WOSA Japan)エデュケーション・パートナーとして日本各地でのセミナー活動や、「WANDS」などで記事執筆も行っている。
生産者名は株式会社醸造産業新聞社発行「日本ワイン生産者ガイドブック 2021年版」参照。
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